阿武町の空に – 4630万円誤送金事件 –
ある日突然、目が覚めたら隣に裸の女が寝ている。
しかも、かなりの美人だ。
一生に一度出会えるかどうかの絶世の美人といっても良い。
もしかすると有名な女優かもしれない。
知らない女だ。
酒は飲んでいない。
したがって、いわゆる間違い、ではない。
なんの前触れもなく、
ただ、そこにいた。
そして、あなたはまだ若い男だ。
部屋の中には二人きり。
ドアには鍵がかかっている。
もしあなたが、こんな状況に出くわしたらどうするだろうか?
2つの選択肢が、すぐに思い浮かぶ。
・欲に任せて、女を襲う。
・理性とうまく折り合いをつけて、その部屋から出ていく。
どちらを選ぶにしても厄介な未来が待っている。
つまり、代償を負わされるか
可能性を捨てたことを後悔しつづけるかだ。
人間は欲には勝てない。
勝ったように見えるときも、
頭の中が、天使と悪魔の戦場と化す。
毎日、食パンしか食べられない人の前に
突然、炭火で焼肉を焼き始めたら、
我慢できるだろうか?
憧れの車に試乗したら、
どうしても欲しくなってしまった。
妻に反対されたからといって、
かんたんに諦められるだろうか?
預金残高が600円強しかない男のところに、
或る日突然、4630万円が振り込まれた。
男は「この金を自分のものにできないか?」と考える。
これってとても自然なことじゃないだろうか?
山口県阿武町で4630万円の誤送金があった事件だ。
この4630万円を振り込んだのは、新入職員だという。
つまり、4/1に入職して、たった7日後(4/8)に、
4630万円の振込をやらされた、ということになる。
しかも、ろくなチェック体制もなかったという。
こんな桁外れのハイプレッシャーを、
まだ右も左も分からない新人に抱えさせるなんて、
企業で言えばブラック確定だ。
体制の不備、管理の不足、監督責任を放棄している。
今回の事件の登場人物は、3人だ。
つまり、
・誤送金されて人生を狂わされた24歳の男性
・間違って大金を送金してしまった新人職員
・町長
このなかに、理性でこの不運な事故を未然に防げる可能性のあった人が一人だけ、いる。
24歳の男性は逮捕され、名前も写真もさらされ、
各所でバッシングされている。
本当の黒幕は誰なんだろうか。
おりしも、
今日の金曜ロードショーでは「ショーシャンクの空に」が放映された。
映画の最後に、黒幕は捕まった。
無実の罪で投獄されても、
希望を失わず、腐らず、懸命に生きた主人公は、
自由と金を手に入れる。
(もちろん人の金だと知りつつ、ネットカジノに使ってしまうのは良いことではない。)