お気に入りのアイスを聞かれたときに「ハーゲンダッツ」と答えるには勇気がいる
ハーゲンダッツ。それは皆さんがよく知っている贅沢アイスの一つ。
これを1個買うだけで「チョコモナカジャンボ」や「爽」が2個買える価格だ。
子供のころは、このアイスが高級品だなんて思いもしなかった。
なぜならば、祖母の家に行くと必ず冷凍庫に入っているからだ。
入っているフレーバーは基本3種類でグリーンティ、ストロベリー、バニラだ。
当たり前のようにハーゲンダッツが食べられる環境がきっかけで、小学6年生のころに袋叩きに遭うとは思ってもいなかった。
小学校の給食でハーゲンダッツが出た。
クラスのみんなは滅多に食べられることのないハーゲンダッツを食べて喜んでいた。
中でも人気なのはクッキーアンドクリームだった気がする。
私はストロベリーを選んで食べていた。
クラスの中で余ったハーゲンダッツを「じゃんけんで勝ち抜いた子が食べられること」になった時、教室が白熱した空気になっていた。
しかし、いつでも食べられる環境にいた私は冷めた目で見ていた。
スーパーで当たり前のように売られているアイスを取り合うなんて。欲しければ買ってもらえばいいじゃない。
そう思っていた。そして、それを口に出してしまったのだ。
格差に忖度しない発言のせいで、クラス中の視線が私に集まった。
ものすごく気まずい思いをした記憶があるのだが、どのようなことを言われたのかは覚えていない。
そして、帰宅後にその件を母に報告したら、「あんた、そんな余計なこと言ったの?」と呆れられていた。
このアイスがどれだけ高級か教わっていなかったので、私にとっては青天の霹靂だったにもかかわらずだ。
もちろん、あの発言を耳にしたクラスメイトは「パンがないならケーキを食べればいいじゃない。」と言われたような気分になったと思う。
滅多に食べられないアイスを1日に2個も食べられる、贅沢な時間に水を差されてしまったのだから、不愉快だったはずだ。
それから1か月後くらいに小学校を卒業し、私立の中高一貫校に進んだ。
私立だけあって、小学校の時よりも格差に忖度する必要がない環境だった。
しかし、高校卒業後は公立の専門学校に進んだので、再び格差に忖度しなくてはいけない日々が訪れるようになった。
そう、私は格差社会に縁のない6年間を過ごしたので専門学校でもやらかしてしまった。
きっかけは高校時代、夏休みになるとドレスコードのあるレストランへ連れて行ってもらったり、卒業式の翌日は母親にハワイ旅行へ連れて行ってもらっていたことだ。
そういった話を仲良くなり始めた子たちに頻繁に話したせいで、5月中旬には仲間外れに遭ってしまった。
しかし、私はそのことについて反省し振る舞いを改めたので、卒業して7年経っても連絡すれば返事をくれる子がいる。
大変な思いをしたが、社会に出る前に気づいてよかったと安心している。
新卒で入った会社の上司の前でこのような発言をしていたら、実際よりも人間関係がさらにハードモードだったと思うから。
大人になった現在では相手との格差に用心しながらコミュニケーションを図っている。
アイスクリームはハーゲンダッツを食べる回数が他のアイスよりも多いのだが、好きなアイスを聞かれたら、サーティーワンのロッキーロードと答えるつもりでいる。
サーティーワンなら、似たような価格帯なのにハーゲンダッツのような高級感がないから言いやすいと思うからである。
ハーゲンダッツもサーティーワンもお気に入りのアイスであることは今後も変わらないけれど。