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【ゆく年くる年】マジでどうしようコメディアス2024
こんにちは、コメディアスの池田輝樹です。
毎年恒例、一年の活動総振り返りです。
いつもただ単に振り返るだけではなく、その一年をくくるようなテーマをつけているわけですが、思いつかない。
2024年をくくる言葉が思い当たらない。
そんななか誰かが会議でふとつぶやいた「マジでどうしよう……」
そうだ!これだ!これが今年をくくるテーマだ!2024年はマジでどうしようの年だ!
ということでこんなタイトルになりました。
コメディアスが抱えている「マジでどうしよう」を、忘年会での劇団員のコメントとともに、見ていきたいと思います。
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ちなみに本記事は、忘年会でみんなが話した話を、都合により忘年会不参加だったわたしが再編集しています。
超ウケてたのに優勝しなくてどうしよう
鈴木:2024年はロケットスタートやったやんね、年明けたら直ぐ稽古もタタキも始まって……。
環:装置作業は年末からしてましたねえ。
2024年の幕開けは若手演出家コンクールから始まりました。
一次審査と二次審査を見事通過し、2015年の第0回全国学生演劇祭以来9年ぶりの晴れ舞台。
このチャンスは何とかモノにして弾みをつけたいところ。
上演作品は『キャッチミー開封ユーキャンRTA』。
2022年に上演したコメディアスの新たな代表作ともいえる作品に、2014年の『ファイナルカウントダウン』の「残り上演時間を壁に投影する」という要素を追加。制限時間のあるイベントにおけるわれわれの常套手段です。
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年明け早々からロケットスタート始まった稽古もタタキも順調に進みいよいよ本番。
わたしは客席側に仕込まれた箱の中に入っていて、お客さんの空気をビンビンに感じながらやっていたのですが、まぁウケましたね。
全員が一体となって前のめりになり、息を呑み、成功すれば拍手喝采。
こんなに盛り上がったのはうちだけだ!これは貰った!
そう思っていました。
が、2位。
方々から面白かった面白かったと言われての、2位。
持てる力をすべて出し切っての、2位。
これで勝てないなら何で勝てるんだと、劇団員一同、特に鈴木が「この先どうしよう」となってしまったのでした。
村上:出れなかったからねえ、やっぱり。
鈴木:2個あって。出れなかったってのと、出れなかったこと自体は評価に影響してなさそうだったってのと。
白石:(審査員)「僕は一番面白いと思ったけどね」みたいなこと言われたけどね。
航:やっぱり面白さとかじゃないんだよ。
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<池田の感想>
ぐや”じい”い”いい~~~~~!!!!
売れるためにはどうしよう
鈴木:(最優秀を)獲れてたらなんか違うかったんかなあ。
白石:お金が。
(一同、笑い)
村上:それは大事だ!
航:赤字が。
白石:まあただ、あれが獲れてたらからといってめちゃくちゃ変わってたかというあんまそんなことはないと思う……。
そんな結果に終わった若手演出家コンクール。
ああ最優秀賞がとれていれば今頃もっと売れていたのに……みたいな気持ちは実はあんまりなく、劇団員一同「最優秀賞とっててもまあ別に売れてなかっただろう」みたいな、ぼんやりそういう気持ち。
そう、コメディアスは「これをこうやったら売れる!」みたいな方法論がよくわからないままここまで来てしまった劇団なのです。
そんな議論にたびたび出てくるのは「プロデューサー的な人」に来てほしいという話。どこからともなくそんな人がさっそうと現れてコメディアスをズバッと売り込んでくれやしないだろうかという、文章にすると何とも情けなく見える期待をここ数年コメディアスは淡く抱いているのです。
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果たしてそもそもそんな人がいるのか、いたとしてコメディアスにかかわってくれるのかはさておき、良いものを作ってもそれを広める方法をセットで考えないと売れていかないというのは事実。
「モノづくりにかなり偏っているコメディアスが今後売れていくにはどうしよう」という大きな課題は、2024年も解決しないままなのでした。
航:同じ話(プロデューサー的な人が必要だという話)はどこの現場でも聞くんだけど、演劇がそもそも売れないから売りたい人は演劇にかかわらないっていう。
川浦:経済合理性が……演劇はどうしても量産ができないから。
航:経済合理性とは真逆を行ってると。
<池田の感想>
そもそも演劇が好きな人が好きな演劇ではないのではという仮説がありまして、演劇としてどう売るかで悩んでいる時点で負け筋なんじゃないか、ともちょっと思っていますね……。
劇団名どうしよう
鈴木:ダウは売れたけどなあ。
川浦:あれはM-1で売れたんで。お笑いの文脈。
売れるためにはどうしようという文脈でたびたび出てくる、売れてる劇団「ダウ90000」。同世代で最も売れている劇団と言っても過言ではないのでしょうか。
彼らが売れたきっかけは色んな要素があると思いますが、その一つにはお笑いライブで名前を売りお笑いファンの地盤を固めたうえで、M-1グランプリに5人で出場したことが大きな話題になったことが挙げられます。お笑いの文脈がしっかりあることで、演劇以外のフィールドからしっかりファンを獲得したことにあると考えています。
そう、大事なのは演劇以外の文脈を持つこと。ダウ90000がお笑いの文脈を、チェルフィッチュがアートの文脈をもっているように、売れている劇団は何かしらの「文脈」を持つことでファンの幅を広げ、心を掴んでいるのではないでしょうか。
さて、ではコメディアスが持てそうな文脈は……「サイエンス」?
確かにこの前のレーザーについてのアフタートークも好評だったし、Eテレだとか大人の科学だとか、そういうサイエンス的な面白がり方をしてくれる人が一定数いる!
コメディアスが売れていくには、サイエンスの文脈にうまいこと乗っかろう……!
そんな話の中、大橋君。
大橋:『コメディアス』っていう名前とあのロゴからサイエンスは連想されないっていう……。
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鈴木:逆に「サイエンス感」がある劇団名って何?そんなんあるか?
大橋:「物理集団」とか……わかんないですけど。
白石:物理集団「コメディアス」??
(一同、笑い)
鈴木:「物理」っていう言葉がまず広いのに、そのあとに続くのが「集団」ってまた広い(笑)
※ちなみにコメディアスが学生の時代、「演劇集団○○」みたいな、劇団という名称を冠さない劇団名が周りに散見された
10年やってきて、ようやく認知も広がりつつあるこのタイミングで、今から改名するのもどうなのか……とは思いつつ。
一方で、改名によってより親しみやすくなり売れた人もいるのも事実。
たとえば、
魔人無骨 → 令和ロマン
海砂利水魚 → くりぃむしちゅー
うーーーん、やっぱり改名後のほうがどっちもしっくり来る。
ということで、皆さん、コメディアスってしっくり来てますか?
もっとこうしたほうがいいという劇団名があればぜひお願いします。
<池田の感想>
「コメディアス」と命名された2014年当時の作風から少しづつテイストも変わってきているのもありますね。ほんとにくだらない事ばっかりしていた本公演1~3回目辺りまでは、そのドタバタ感やくだらなさで「コメディアス」という名前に可愛げがありましたが、最近は「コメディアス」というほど「コメディ」すぎていないというか、劇団名から期待されるものと提供するものに差が出てきてるというか。(funnyからinterestingにテイストが変わってきている)
もう全員に届ききってたらどうしよう
鈴木:(演劇という土俵で)真正面から戦ったら勝てないから、人がやらなさそうなことをやるっていうのがあって。
白石:逆張りだ。
鈴木:そうそう逆張り!それってある意味逃げてるよなあとはずっと思ってて。
そんななか、話は本公演『レットイットビーム』のほうへ。
われわれは理念に以下を掲げている通り、
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新奇性、すなわち「新しくて変なことをやる」というところにずっと熱を上げて劇を作っています。
新しくて変なことをやることで、他の劇団とは戦う土俵をずらそうという目論見です。
でも、最近思うんです。結局、どこかのタイミングで正面で戦ったやつしか売れないんじゃないか。
そもそもお客さんの中で「新奇性のあるものを見たい!」って思ってる人はそんなにいないのでは。
われわれの戦略は間違っているのでは。
川浦:音楽とか映画とかみたいに市場規模がデカければ、(王道から)少しズレてても回るというか。
航:1億の1%は100万だけど、100万の1%は1万だよと。
川浦:そうそうそう。ポップカルチャーが映画とか音楽だとしたら、演劇がすでにそうじゃないのに、そこからさらに端っこに行こうとするから!
(一同、笑い)
白石:外れの外れに。
川浦:5%の5%みたいなところを狙おうとしてるから。ちょっと怖い仮説が、コメディアスはもうコメディアスを好きになってくれる人をすでに取り切ったんじゃないかっていう。
これ以上コメディアスを好きになってくれる人がいないとしたら、どうしましょう……。
<池田の感想>
コメディアスのことを好きになってくれる人を取りきったとは思っていないのですが、現状の延長線上で手の届く範囲にはもう残ったパイは少ないのでは、ということは全然ありえますね……。演劇のメインストリームに挑んでも勝算はないので、別の文脈の界隈に出ていかないといけないんだろうなぁ。
10周年どうしよう
鈴木:で、そんなこんないろいろある中、来年はもうどうあがいても10年目というね。
コメディアスの旗揚げを2014年にするのか2015年にするのかは諸説ありますが、一応公式には『ファイナルカウントダウン』を上演して劇団としての独立を明言した2015年の11月に旗揚げ、ということにしています。
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つまり、2025年は10周年なのです。
あっという間の10周年、10年続ければなにか見えるかと思いきや、10周年ってこんな先が見えないものなのなんですね。
(われわれの尊敬するヨーロッパ企画は、10周年のときツアー先でケーキを食べていた気がする。ツアーやってたんだ……。)
色々ありますが、目下の問題は、10周年、何するか決まっていないこと。
村上:オーディションやろう、オーディション。
航:女優が京央子しかいないしね。
鈴木:女優どうのこうののまえにコンスタントにアクティブな俳優が今いないからね。俳優に限らず、若い人に来てもらって、新陳代謝もしていかないと……。
川浦:おじいちゃんをいっぱいこう、箱に詰め込んで開封コメディをやるってのは。
鈴木:いや死ぬって。
村上:問題なるって。
イベントやるとかよりも最初に候補に挙がるのはオーディション。
そう、コメディアス、以前に増して深刻な役者不足です!
普通に働きながら演劇を続けているメンバーが多い劇団なのですが、社会人としても6,7年目に突入し、会社の中堅枠となってきたメンバーが多く、なかなか両立が難しくなってきたところ。
役者だけでなくスタッフも人手が足りていないので、劇団員大募集中です!
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【おまけ】音質最悪でどうしよう
こんな感じで忘年会で2024年の「どうしよう」を出し切ったはずだったコメディアス。
しかし解散直後、以下のようなメッセージが……。
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忘年会の様子を収録していたiPhoneに鈴木のイヤホンが接続されっぱなしだったため、ガッサガサの音声しか拾えていないという最悪の結果に。
もともと会話形式で掲載するはずだった本記事は、聞き取れたところだけを抜粋するこんな形になってしまったのでした。