#358 臨床のスピカ
こんにちは フミオです。
本日、元書店員が読んだ気になる1冊は、こちら↓
前川ほまれ著 U-NEXT 臨床のスピカ
■内容
【目次】
第1章 2023年 5月 白い生き物
#1 2012年 春
第2章 2023年 8月 水のないプール
#2 2012年 夏
第3章 2023年12月 真冬の蝉
#3 2019年 冬
第4章 2024年 2月 線を跨ぐ
#4 2022年 夏
第5章 2024年 3月 正しい距離
エピローグ
2024年 春
この本の面白さは、この本の表紙を飾っている白い犬(ゴールデンレトリバー)のスピカの存在です。
スピカの役どころは、病院スタッフとして患者さんの治療を医師・看護師・セラピストが行う上での補完的治療を行う役どころです。
これを「動物介在療法」というらしいです。
私個人的には、対象者の社会性の向上という言葉が一番本を読んでいてしっくりきますね(これは、読む方の「その時」の現在や過去、価値観などで左右されると思います。)
この本では、対象者とは、スピカが治療目的で介在した患者になると思います。しかし、本の描き方は、スピカの治療対象は当然ですが、治療対象の家族・スピカのハンドラー遥・遥の同僚詩織の社会性も変えていきます。
また、この本の作り方は、ベースに遥のハンドラーとしての1年にむけて、遥と詩織の出会いから始まる10余年前から並行して内容が展開されて、時間交差していきます。
ここがポイントの1つと思います。
この1冊のどこの時間のスピカが介在する物語りが印象に残るでしょうか?不思議な楽しみ方ができる本ですよ。
■元書店員がおススメするポイント
敢えて、医療系の「いのち」と向き合う内容は、治療を受ける本人とその家族と治療経過、その経過に登場する人々の関係性から物語を作り上げてくく内容になります。(これは、私の読書歴による個人的な印象)
この話は、スピカという「異物」(スピカ、ごめんなさい。そして、この動物介在療法に関係する皆さん、表現が悪くて)というか、患者・その家族から見た違和感が、話の中でハンドラー遥と会話する、誰かと患者が会話する際に一緒にいるスピカを「自然と撫でる」(本の中では、『寄り添う』)ということに、変わる瞬間があり。
その場面の、スピカ以外のそれぞれの登場人物に「大切にしてくこと、もの」への気づきを促すくだりがあります。
これが、通常の医療系の人と人の「葛藤」などから生れる気づきより自然に発生する描き方が実に面白いので読んで欲しいです。
■相談援助職としてのおススメポイント
援助過程での要相談者への援助職としてのテクニックも当然あります。しかし、人と人がつくる緊張感(もしかしたら違和感)も、人とスピカのつくる緊張感や違和感もエンパワーメントするんだよな~と感じる場面随所にあります。
若い時には、相談援助技術と心理学や思想・哲学などを活用してスキルアップしていく!となるのでしょうが・・・この年齢と経験もあってか?要相談者への最善へ痛みや負担を軽減して、一緒に進んでいく。要相談者の時間を有意義にしていく。
そんなためには、スピカのような存在はもっとあってもいいと思う感じました。リラックスする瞬間、超える瞬間、超えられた瞬間の気持ちと体験・・。
この大切なのものに気づく瞬間は、人だけが作れるわけでもない。
■今日note
リアルな生活の中で、向き合い気づきながら私たちは成長していきます。しかし、その成長は、私と私たちつくる一方的で偏った、もしかしたら狭いものであるかもしれない。
でも、頑張ってきた時間と姿は嘘ではない。だから、つまずいてしまうとその問題に目を向けて、大切なモノや問題のかたちや見方が見えなくなってしまい苦しむことが現実です。
そんな現実に、寄り添い、見方を変えてくれる入り口を示してくれるのは人だけでじゃないかもしれない。