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思い出のスイッチ

皆さんにもあるだろうか。

これをすれば、あの時の事を思い出すだとか

あれを食べれば、あの時の事を思い出すだとか

それを作れば、あの時の情景を思い出すだとか、


そんな思い出のスイッチが。



私は過去に縛られて、縋って生きてきたのでそんなスイッチが人よりもたくさんある気がする。


ほんの些細な事でも、昔の恋を思い出したり

ほんのちょっとの事でも、子供時代の事を思い出したり。


そんな私が一番押してしまうスイッチが


キーマカレー

だ。

え?カレー?え?なんで?なんて私が一番よく思う。

もっとこう、なんか他にあるでしょ、なんて私が一番思っているのだからどうしようもない。



キーマカレーを作る度、昔恋焦がれたあの人の事を思い出す。

その人は私が今まで出会った人の中で一番無口な人だった。何を考えているのかも分からないそんな人。

けれど仲良くなって打ち解けていくうちに少しずつ心を開いてくれて、無口だったのが嘘のようによく話してくれるようになった人だった。


その人と何気ない会話をしている時に話題に上がったのが件のキーマカレーなのだ。


カレーを作った翌日はカレーうどんにするよね!なんて話だとか、その人の家では更に翌日まで残っていたらドライカレーにまでするんだよ!なんて話を聞いていたりした時にふと私が「キーマカレーとかもよく作りますよ」なんて話をした時にその人が

「キーマカレーってなんでしたっけ?」


と問うて来たのである。

まさかの質問に私はアタフタした。Wikipediaによるとキーマカレーとは 日本だとひき肉を用いたカレーの事を指すのだがその時の私は何を思ったのか

「あの、あれですよ!野菜とか細かく切ったやつが入ったカレーですよ!」


と、まあなんとバカ丸出しの回答をしてしまったのである。

自分の中ではひき肉を用いる事は当たり前で、他の特徴が細かく切った野菜を投入する!という特徴しか浮かばなかったのだ。


それでもなんとなく分かってくれたのか、「あ、ああ!」って言ってくれたのだが、多分今思えばあれは伝わっていない。


今だったらもう少し上手く説明も出来ただろうに、その当時の私はそんな風に説明をするのが精一杯だったのだ。

そんなむず痒いもどかしい思い出が、キーマカレーを作る度に思い出すスイッチとしていつまでもしつこく私の中に残っている。



さあ、今日の夕食はキーマカレーだ。





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