マンションオーナーに学ぶ、失敗しないマンション投資法とは?
低金利時代の資産形成や老後生活の備えとしてマンション投資は有効です。しかし、不動産投資の基本をよく知らないまま経営を続けると、大きな失敗につながることもあります。
そこで今回は現役のマンションオーナーが指摘する、「失敗しないためのマンション投資法」をご紹介します。初心者オーナーが失敗しやすいポイント、マンション経営に潜むさまざまなリスクなどを分かりやすく解説していいきます。
1 マンション投資は勉強しないと失敗する
マンション投資を始めるにあたって、物件の選び方やエリアの選定、物件管理などについてある程度の知識が必要です。不動産会社の上手い話に乗るだけでは、収支計画は近い将来崩れてしまうでしょう。まずはマンション投資で必要な知識から見ていきます。
1-1 マンション投資の収支を計算する
マンション投資の失敗で最も多い理由の一つとして、不動産会社の営業マンの言う通りに物件を選んでしまうことが挙げられます。不動産会社が本当に儲かる物件を紹介してくれれば良いですが、そうでないケースも少なからずあるため、投資家にはそれを見極める力が求められます。
なお、収益物件を見極めるためには、まず収支計算ができるようになる必要があります。
収支計算の方法
マンション投資の収支は、年間の収入(家賃収入)から維持費や各種税金などを差し引いたお金が投資額を上回っているか否かで判断します。計算式で表すと次のようになります。
{(①年間家賃収入-②年間経費・税金等の支出+③減価償却費×税率)×保有年数}+④資産の売却額>投資額
マンション投資で得られる年間の収入は家賃、支出は維持管理費、修繕積立金や固定資産税・所得税等の税金です。この年間収支は保有年数だけ蓄積され、その合計と投資資産の売却金の合計が投資額を上回れば投資は成功できたことになります。
それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。
①年間家賃収入
毎月の賃料×12月(空室率、滞納率、賃料下落率なども考慮する必要がある)
②年間経費、税金等の支出
毎月の維持管理費
修繕積立金
固定資産税・都市計画税
返済額(利息含む)
所得税 など
③減価償却費×税率
減価償却可能期間の減価償却費×所得税率等(減価償却期間が経過すれば加算の必要なし)
④資産の売却額
適当な時期に資産を売却した金額
年間の収支は「①-②+③」で計算され、プラス(黒字)であることが望まれます。マイナス(赤字)になるような物件は、将来的な価格高騰が期待できない限り、避けたほうが良いでしょう。
④の売却については、物件を選ぶ時点で、「いつ売却するか」も検討しておいたほうが良いでしょう。資産価格が高騰したり、急激に低下したりする場合は臨機応変に売却することが重要です。
1-2 マンション投資は表面利回りだけで判断しない
物件の収益性を判断する指標として「表面利回り」(年間家賃収入÷投資額×100%)がありますが、この数字だけで判断するのは危険といえます。
たとえば、次のような2つの物件があるとします。
A物件(築25年)
物件価格:2,000万円
年間家賃収入:120万円
表面利回り:6%
B物件(築5年)
物件価格:3,000万円
年間家賃収入:150万円
表面利回り:5%
A物件の表面利回りは6%、B物件は5%なので、単純に比較すればA物件のほうが儲かると考えられます。しかし、A物件は築25年と古いため、近いうちに大規模修繕を必要とする可能性が高く、その場合、数十万円といった費用がかかることも考えられます。もちろん毎年の維持管理費などが上昇する可能性もあります。
また、表面利回りでの家賃は満室状態を想定した数字です。実際は常に満室というわけではなく、空室になることも十分考えられます。空室期間が長期化すれば減収も避けられません。加えて入居ニーズが低い地域の物件だと家賃が下がる可能性もあります。
一般的に利回りが高い物件は築古の中古マンションなど、さまざまなリスクが高いケースが多くなります。逆に、新築・築浅マンションなどは需要が高いため、利回りは低くなる傾向です。
大規模修繕や空室がA物件のほうで多く発生した場合、B物件の利回りを下回ることも十分考えられます。
これらの理由から収益物件を選ぶ際は表面利回りだけでなく、さまざまな減収リスクを考慮したうえで収支計算を行い、判断する必要があるわけです。
2 マンション投資のリスクを知る
不動産投資に限らず株式投資やFXなど他の金融商品でもリスクは付き物です。しかし、そのリスクを軽減・回避する対策を立てることで、投資を成功に近づけることが可能です。
2-1 さまざまなリスクを確認する
マンション投資の収支に関するリスクには、次のようなものあります。
家賃の下落
空室・滞納
自然災害等
支出に関するリスクは次のようになります。
維持管理費・修繕積立金の値上がり
大規模修繕費用の特別徴収
原状回復費
リフォーム費用
固定資産税等
また、資産価格に関するリスクは、次のものがあります。
経年劣化
周辺相場の下落
立地環境の変化
2-2 家賃の下落、空室が起きやすいマンションは避ける
家賃の下落や空室が発生する理由はさまざまですが、共通するのは「入居需要が低い」ということです。入居ニーズが低い原因は次のようなものが考えられます。
入居のターゲットとなる借手がその物件の地域に少ない
人口が少なく流出超過が続いている
交通の便が悪い(駅から遠い)
近くに工場があるなど住居環境が良くない
このほか、「マンションにオートロックなどの人気設備がない」「見た目が地味で古い感じがする」なども建物自体の魅力に起因することがあります。
入居希望者が減少すれば家賃は下落し、空室も多くなります。そのため以下のような点を考慮して物件を検討しましょう。
立地、周辺環境
最寄駅が徒歩10分以内
ターミナル駅と直通となる駅近
高速道路・幹線道路へのアクセスが良い
コンビニ・ショッピングモール・学校・病院などが近い
騒音・悪臭などで問題になりやすい工場から離れている
建物
オートロック、宅配BOX、浴室乾燥機などの人気設備を完備
ターゲットのニーズに合ったデザイン・外観
管理が行き届いている
大規模修繕を定期的に行っている
2-3 維持管理費が高いマンションは注意する
耐久性のある鉄筋コンクリートのマンションでも年数が経過していくほど劣化するため、毎月の維持管理や定期的な大規模修繕は必要です。しかし、これらの費用が相場以上の物件は注意する必要があります。
費用が相場以上であることは単に年間収支の悪化の要因になるだけでなく、さまざまな問題を抱えている可能性があります。たとえば、住民のマナーが悪く、清掃や小規模な修繕が多いケースなどです。実際に物件を見学して建物の外観や部屋の中だけでなく階段などの共用部分もチェックしておく必要があります。
また、マンション全体の修繕積立金が十分に貯まっていない場合、大規模修繕工事時に1区分所有当たり数十万円の特別徴収(特別負担金)を求められることがあります。中古物件を購入する場合は、積立金が不足している物件や大規模修繕が近い物件には注意しなければなりません。
このほか、「管理会社が不適切な管理をしている」「マンション管理組合が機能していない」「住民によるトラブルが少なくない」などの問題がないかもチェックすると良いでしょう。
なお、維持管理費等・固定資産税等はマンションの戸数が多いほど割安になり、少ないほど割高になることも知っておきましょう。
2-4 信頼できない不動産会社・管理会社と契約しない
マンション投資では、一般的に不動産会社を通して投資物件を購入し、さらに入居の募集・集金・管理などは不動産管理会社(あるいは同じ不動産会社)に依頼するケースが多くなるため、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
リスクを十分に説明しない不動産会社は避ける
不動産会社の中には自社の利益を優先するあまり、将来のリスクなどを十分に説明しないまま儲からない物件を薦める業者がいます。
特に、顧客に不動産投資の知識がない場合、営業マンの話を鵜呑みにしやすいので要注意です。メリットばかりを強調して契約を急がせるような不動産会社は避けたほうが無難でしょう。
入居者募集、物件管理の実績が豊富でない場合は避ける
入居者の募集や物件の管理業務を管理会社に依頼する場合は、実績の豊富な事業者から選ぶようにしましょう。
マンションのタイプにもよりますが、単身者向けのワンルームマンションは入居者の入れ替わりが激しいのが特徴です。退去してから次の入居者が決まるまでの空室期間が長くなれば、減収リスクは増大するため、入居者獲得に優れた管理会社を選定する必要があります。
3 まとめ
マンション投資で失敗しないためには、これまで確認してきた投資のリスクを認識した上で、適切な投資物件を選定する必要があります。
不動産投資では物件の立地条件や建物の魅力などを確認することも重要ですが、少子高齢化が進むなか、人口の転入・転出状況のチェックも欠かせません。さらに、空室率の状況なども確認し、入居率の高い地域の物件を候補とすると良いでしょう。
また、経費が高いと収支が圧迫され赤字になる年度も増えます。相場より経費が高い場合、管理会社や建物自体に問題があるケースも考えられるため、その理由を確認するようにしましょう。
加えて建物のメンテナンスが悪く、トラブルが多いと退去率(退去数÷管理戸数)が高くなり、入居者が退去するたびに原状回復費用が増大します。管理会社の管理状況によって退去率は左右されるため、管理業務が優れた業者を選ぶことがポイントです。