一棟投資と区分マンション複数戸への投資、おすすめはどっち?
一棟に投資をするか、区分マンションを複数所有したほうがいいのか、どちらへ投資をすればよいかが決められず悩む方も多いのではないでしょうか。1億円の不動産一棟と2,000万円の区分マンション5戸を比較すると投資額は同じですが、どのようなメリット、デメリットの違いがあるのでしょうか。同じ金額ならどちらが得なのでしょう。
今回は一棟投資と区分マンションを複数所有した場合のメリット、デメリットについて「流動性の良さ」「融資の引きやすさ」「キャッシュフローの良さ」「大規模修繕の裁量やコスト」などの観点から比較してみたいと思います。
1.一棟投資のメリット、デメリット
一棟投資というと大きな金額になりますので、一戸の区分所有とは違った運用の仕方になります。高額な融資を受けるためリスクは大きくなりますが、区分所有にはないメリットもあります。一棟投資のメリットとデメリットについて検証してみましょう。
1.1.一棟物件はスケールメリットが得られる
一棟投資は満室になれば数十万円の家賃収入になります。その場合、ローンの返済を引いても10万円以上の手残りとなるケースが多く、手残り額の多さは区分所有にはない魅力です。逆に空室が多くなった時の返済額の大きさがリスクになるので入居率やキャッシュフロー管理が運用する上での重要なポイントになります。
区分所有と比べて所有できる土地が広いということもメリットです。土地が広いということは担保としての恩恵も大きくなりますので、融資を受ける際や、売却をする際の価格に有利に影響してきます。また、もし建物を解体したとしても土地が残りますので、区分所有のマンションと比較して資産としての価値は大きいでしょう。
1.2.一棟物件は融資において有利に働く可能性が高い
一棟投資は融資の審査が1回で済むため、その審査に通れば融資が実行されます。仮に融資されなくても次の一棟を探そう、ということになり投資機会を逃すリスクが減ります。
一棟投資に対し、区分マンションを複数所有する場合、一度に複数購入する場合は同じように1回の審査で住みますが、分けて購入する場合はその都度借り入れ状況などを審査されます。すでに大きな金額借り入れをしている場合、それがネックで融資が難しくなる可能性があります。さらに買い増しをして本当に返済ができるのか、あらためて金融機関が融資に対してリスクヘッジをし始めるタイミングになります。
また、一棟投資の場合、年収の数十倍の借り入れができることも大きなメリットになります。それに対し区分所有の場合は、一棟投資に比べると手残りが少なく、給与などの収入から返済比率を算出して審査されることも多いため、1件、1件購入する場合は借入額に限界があります。
1-3.一棟物件は大規模修繕の判断でも有利
大規模修繕のタイミングは、国土交通省では大規模修繕は建築後12年を目安に行うことを推奨していますので、おおよそ12年くらいで大規模修繕を行うのが一般的です。この目安のタイミングで大規模修繕ができるかできないかで、建物の状態に影響を及ぼすこともあります。できるだけ期間をずらさずに修繕を行うことは、建物を良好に保つ重要な要素になります。
区分所有の場合は大規模修繕をする場合、管理組合員の4分の3以上の賛同が必要になります。4分の3に満たない場合は修繕が行われません。建物の劣化は人の目で見てもわかりにくい場合がありますし、人によって修繕に対する認識や知識が違います。
それに対し、一棟投資の場合は自分でタイミングを判断できます。小さな劣化が後になって取り返しのつかない亀裂になることもあるため、修繕のタイミングを自分の判断でできるということは大きなメリットです。
2.一棟投資のデメリット
一棟投資は建物も金額も大きくなりますが、大きいなりのメリットがあることがわかりました。では、一棟所有する上でのデメリットを見てみましょう。
2-1.一棟物件は流動性が低い
一棟投資は流動性の低さがデメリットになります。一般のサラリーマンが手を出しにくい金額のため、購入者の数が少なくなります。また大規模修繕の金額が高くつく、という点も購入者にとってはデメリットに感じるため、売却の際に時間がかかる可能性があります。
一棟投資をする場合は、インカムゲインをベースとした長期投資を視野に入れておくと良いでしょう。
2-2.一棟物件は大規模修繕の費用が高い
一棟投資の場合、大規模修繕のタイミングを自分で決められる点がメリットではありますが、建物全体の修繕となるため、費用が高くなります。修繕積立金で足りない場合多くの手出しが必要になることもあります。12年~15年ごとには修繕のタイミングが来るため、計画的な資金計画は必須です。
3.区分マンションを複数所有する際のメリット
一棟投資に対して区分マンションを複数所有するメリットはどのようなものなのでしょうか。複数所有することで同じような価格にはなりますが、価格以外にどのような違いがあるのでしょうか。
3-1.区分マンションは流動性が高い
一棟の場合は1億円なら1億円準備して、購入後もそのボリュームに合わせた運用をするしかありませんし、売却の場合もそれなりの資金を準備できる人しか購入できないため、買い手を見つけるのにも苦労する可能性があります。
それに対し区分マンションの場合は、中古で安いものであれば数百万円の物件もあります。その点で購入しやすい、あるいは売却しやすいということが言えます。また、運用中でも、1件から売却していくことができますので、自分の投資スタイルに合わせて、件数を調整していくことができます。そういった流動性の高さは一棟投資にはないメリットと言えるでしょう。
3-2.区分マンションは修繕費用を安く抑えることができる
一棟投資の場合、建物全部の修繕費用を準備しなければいけませんので、それなりに大きな金額がかかります。区分所有の場合は所有者で費用を分担するため、一棟投資と比較するとかなり安く抑えることができます。複数所有している場合でも、修繕の時期が違えば一度の出費は抑えられます。複数購入する際は修繕時期を把握することで、一度に大きな費用がかかるというリスクを軽減できます。
3-3.区分マンションは途中で資金調整ができる
区分マンションを複数所有している場合、途中で物件数を減らすことで、運用の見直しをすることができます。一棟投資だと売却してしまうと何も残りませんが、区分所有の場合は5件所有していても、2件を売却し3件だけ運用するといったグロス価格を減らした運用も可能になります。売却した際に利益が出るようであれば、その資金で次の展開をする楽しみもあります。
4.区分マンションを複数運用する際のデメリットとは
区分マンションの複数運用では一棟投資ではできない運用のメリットがあることがわかりました。逆に、一棟投資にはないデメリットもあります。区分マンションを複数運用するデメリットについて見てみましょう。
4-1.区分マンションは大規模修繕の裁量が無い
先にも触れましたが、区分マンションの場合は大規模修繕のタイミングを管理組合で決めるため、自分の都合で決められない点がデメリットです。最初は小さな劣化がゆくゆく大きな瑕疵につながることもありますので、12年ごとくらいに行うのが良いのですが、管理組合の4分の3以上の承認が得られなければ、そのタイミングを逃す可能性もあります。自分でタイミングを決められない点は見えないリスクと言っても良いでしょう。
4-2.区分マンションはキャッシュフローが赤字になることも
区分マンションは一棟物件と比較してキャッシュフローが良くないということが言えます。一棟物件であれば、1ヵ月に10万円くらいの手残りが発生することが運用事例として少なくありません。しかし、区分所有の場合1件で月の手残りが1万円を切っていたり、固定資産税などを差し引くと赤字だったり、という事例が非常に多いです。複数所有するということはそういった物件の集まりだという点で、購入の際にシミュレーションを厳しい目で作ることが求められます。
4-3.区分マンションは土地の価格恩恵が少ない
区分マンションの場合、土地の持ち分は建物の持ち分比率に合わせて割り当てられますので、土地の評価は非常に少ないと言えます。購入の際もそうですが、売却の際も土地の評価比率が少ないため、担保能力は一棟物件と比較してとても低くなりますので、土地の恩恵はほとんど受けないと言えます。
5.まとめ
一棟物件と区分マンションを複数所有する場合のメリット、デメリットを見てみました。一棟物件は価格が高いのですが、土地の広さがあるため評価が落ちにくい、そして何よりキャッシュフローが区分マンションよりかなり良いということがわかりました。それに対し区分マンションはキャッシュフローが良くないのですが、運用途中で数件売却することで資金的な調整ができる、というメリットがあります。また一度にかかる費用を少なく抑える工夫ができます。
そのような点から、まとまった資金が計画的に支払える環境にある人であれば、一棟物件がお勧めでしょう。アグレッシブに展開したい人に向いていると思えます。
いっぺんにまとまった資金は使えないが、コツコツと運用し貯めていける、あるいは途中で投資額を縮小して投資手法を見直したい、という人には区分マンションを複数運用することをお勧めします。途中で件数を減らせますので、他の投資もその時点で検討できるので、不動産投資以外の投資にも興味がある人向きだと言えるでしょう。