見出し画像

顆粒膜細胞腫 ⑤突き落とされてからの術前説明

入院、手術が決まってからは目まぐるしく日常が過ぎていった。
小学生、幼稚園児の息子ふたりをもつ母でもあり、
コンビニで楽しく働くパート職員でもあり、
夫がいる妻でもある。

まずは職場で入院日からしばらく休みをもらうことに。
17歳女子高生の頃から出たり入ったりの私を待って頂けることになった。
コロナ禍の最中、突然休んで風評被害に合わないよう、常連客には手術するからしばらく休むことを伝えた。
頑張ってね、待ってます、大丈夫だよ、
いろんな激励をたくさん頂いた。

幼稚園、学校にも伝えた。
環境の変化が苦手な息子たちをしっかりサポートしますから安心してください、と言って頂いた。
子どもたちの通院や作業療法、学童保育や行事の予定をすべて術後に備えてリスケした。

私が不在の間は夫と実母にお願いした。
とは言えどいわゆる「ワンオペ育児」だったため二人とも子どもの支度など分からない。
タイムスケジュールや持ち物、注意してほしいことを書き出してそれぞれに渡した。

しかし、コミュニケーションをとるのを苦手とする夫との間で衝突し、入院前に大モメすることになる。それはもう罵言罵倒だった。
手元にあったハサミを握りそうになり我慢したぐらいだった。
原因は実母が先に休暇をとり万全の体制を整えたことによる、夫の〈疎外感〉だった。
実にくだらない、ましてや入院前に不安だらけのワンオペ妻を罵倒するなど伴侶として最悪である。

私は深い深い闇の底に突き落とされた。


入院2週間前に術前説明を夫婦で受けた。
・腹腔鏡手術にて右卵巣を切除
・術中迅速診断にて診断を待つ
・良性なら左右卵管を予防切除
・境界悪性なら子宮、卵巣卵管を全摘出
・悪性なら全摘出に加えてリンパ節も切除
・所要時間は良性なら2~3時間、境界悪性・悪性なら開腹手術に切り替えて5~6時間
・妊孕希望の有無
など色々話を聞いた。
腹を括っていた私に比べ、想像以上の大事に夫は面食らっていた。

「ごめん」

病院の階段で聞いた夫の第一声。

「許さないよ」
「人間ってね、非常事態に本性あらわすの」
「こういう時ね、嘘でもいいから大丈夫だよ、って言ってあげるもんだよ」

一生懸命しぼりだして、中抜けした職場に私は戻った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?