19_色彩構成という学生課題について

画像1 デザイン専門学校で色彩の授業を担当し始めて19年目。デッサンや色彩構成に明け暮れた美大受験生時代も含め、色との付き合いは随分長いけど、とにかくトラウマ級に苦手な分野でして。でも苦手だから苦手な人の弱点がわかるのではないかと勝手に思い込んでいます。写真は10年ぐらい前の1年生最初の色彩構成の課題作品。白と黒と好きな色の3本だけの絵具で混色で色を作りながら共通の画面を色彩構成するという課題でした。
画像2 ところが何年か前に色彩構成の教材から「絵具」が消え、教材の一部変更を余儀なくされ、トーナルカラーという色紙を絵具の代わりに使うことにしました。トーナルカラーは最初からずっと使っていた教材で、こういう色紙を使って作品を作るのは絵具よりも時間の短縮が可能であり、効率よく色彩構成に取り組めるというメリットがあります。これはバウハウスで色彩を教えていたジョセフ・アルバースの指導方法を参考にしました。
画像3 まず、学生たちにこういう共通フォーマットを配ります。なぜこの形なのかは秘密です(笑)。
画像4 最初の課題は無彩色+同系色(色相に共通性がある)による組み合わせで画面を構成していきます。この学生は無彩色による配色も丁寧に組み立てているし、有彩色の部分のトーン(色調)もうまくまとまっています。
画像5 私が勝手にリメイクしてみたものです。(これは色紙ではなく「イラレ」を使っています)。学生の感覚や表現を大事にしたいので変更は最小限に考えます。この場合は一コマも色を変えず増やさず、色の配置のみを変えて印象を変えています。無彩色は繋がる感じでスッキリ整え、左下に斜めの線(茶色の部分)が目立つように入ることで画面に動きが出て印象が強くなります。
画像6 モノクロにすると彩りを排除した後の「形」が残ります。無彩色・有彩色全ての色に共通する属性は「明度」であって、絵画上の価値観の一つである「明暗のバランスがいい画面は美しい」とされる「キアロスクーロ(イタリア語の「明暗」)」の考え方に共感しています。つまり色彩感覚はデッサン力と少なからずリンクしているのだと思います。
画像7 専門学校は美大や芸大に比べて時間が短く、入学前にデッサンや色彩構成などの「基礎造形」をやっていない学生が多いです。デジタル表現が進んでも、ずっと何かを作る仕事をしていくには「基礎造形」というプライマリーなアナログ感覚は非常に大切であり、限られた時間の中で無駄なく可能な限り最短で学生たちに伝えていければなと思います。

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