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コーチングで相手に「寄り添う」とは?

こんにちは。ネパールで子育てをしながらコーチングを提供している森田愛です。
2021年4月にネパールに移るまで、国連・NGOの仕事で途上国を転々としながら、国際開発援助に従事していました。(詳しいプロフィールはこちら

私が学んだCo-Activeコーチングメソッドに、
コーチに必要なスキルの一つとして「Be with(相手に寄り添う)」というものがあります。

なぜ、コーチングにおいて「相手に寄り添う」ことが求められるのか?
そもそも「寄り添う」とはどんな状態を指すのか?
寄り添った先に、何があるのか?

この「寄り添う」という概念、如何せん感覚値によるところが大きく、
説明するのも、コーチとして実践するのも難しいのですが、
今日はそれについて書いてみたいと思います。


そもそも「寄り添う」って、どんな状態を言うのでしょうか?

私がコーチとして、「今回はしっかり相手に寄り添えたな」と感じるとき、セッションが終わった後、なんとも言えない幸福感を感じます。

それは相手と深い部分で「繋がれた」ことに対する純粋な喜び、或いは“快感“と言う表現の方が近いかもしれません。

相手から放たれるエネルギーを、コーチである私が全身全霊で感じ取り、魂レベルで繋がっている、そんな感覚でしょうか。

それは、必ずしもカメラをONにしていなくても、音声のみの時にも起きる感覚で、ひょっとしたら音声のみの時の方が起きやすいかもしれません。
例えカメラを付けていても、目を閉じてビジュアライゼーション・ワークをしている時の方が、「相手と深く繋がっている」状態に入りやすいと感じます。

音声からの情報だけが頼りになるとき、相手の言葉だけじゃなく、言葉と言葉の間に置かれる間(ま)や、声の調子、トーン、話すスピードなどから感じられる息遣いやエネルギーに、私は自ずとものすごい集中しています。話している内容だけからでは読み取れない「この人は今どんな状態にあるのか」という情報を、必死に探り取ろうとしているのでしょう。

相手から得られる情報量が少ない分、逆に今ある少ない情報から全てを感じ取ろうとし、その高まった集中力によって、私と相手のエネルギーが深く結びつく道が作られるのだと思います。

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では、クライアントにしっかりと「寄り添う」時、セッション中にどんな変化が起きるのでしょうか。

まず、コーチである私自身に起きる変化としては、
相手の感情を“自分のもの”として感じる感覚が強くなったり、
相手が言葉にしてない感情や心情の変化も、敏感に察知することができるようになります。

私は元々直感の強い方ですが、
相手に真に寄り添っている時は、その直感力が更に高まっている感覚があります。
「この人は(話してないけど)本当はこんな事を思っている」という声がどこからともなく聞こえてきたり、
相手が話している内容が、私の頭の中にイメージ画像として現れたり。

そしてそれをそのまま相手に伝えると、
相手に「そうそう!」という共感があったり
「そうじゃなくて、どちらかと言えば、こういうイメージ?」という意見が出たり、
そこから更に話が膨らんでいき、相手の感性や感情、クリエイティブな一面を司る右脳が開かれていく感覚があります。

相手に寄り添うことで、ロジカル脳だけじゃなく、クリエイティブ脳にも沢山アクセスし、その人の頭や体、心で起きてることを一緒に探索しながら楽しめるのは、Co-Activeコーチングならではかもしれません。


一方で、真に相手に寄り添うということは、必ずしも楽しいことばかりではありません。

時にはセッション中、クライアントと共に長い間出口の見えない迷路を彷徨うこともあります。

なかなか出口が見えないと、「このままどこにも辿り着かないかもしれない」というコーチとしての不安や怖さに駆られることもあります。
そして「何か答えを導かなきゃ」という責任感・正義感が、私の中にムクムクと現れてくるのです。

でも、コーチングは問題解決を行うコンサルタントではありません。
答えを急がない。焦らない。
例え時間がかかっても、なかなか出口が見えなくても、
相手はきっと自分の中にある答えを見つけ出してくれる、そう信じて寄り添い続けます。
クライアントが織りなす心の旅に一緒に乗り出し、ストーリーがどう展開していくのか分からなくても、その一瞬一瞬の過程を純粋に楽しむ。
それもまた、勇気を持って相手に真に寄り添っているからこそ、出来ることだと思います。


相手に寄り添う時の特徴として、もう一つ、
コーチである私自身も弱さを見せられる勇気を持つ
というものが挙げられると思います。

例えば、私のクライアントの一人がある悩みで行き詰っていた時、
色んな質問を投げかけて心の声を紐解いていった結果
彼女は大きな闇にぶつかってしまいました。
そしてセッション中、長い間その闇から抜け出せなくなってしまったのです。
多くの場合、クライアントはしばらく闇を彷徨うと、自力で這い上がってくるのですが、その時はそう言った兆候も見えないぐらい、彼女にとって深い闇でした。

それは、彼女がこれまで心の支えとしてきた「内なるリーダー」さえ効力の及ばない深い闇で、私は次にどんな質問を投げかけたらいいのか、分からなくなってしまいました。

私は言いました。「次にどんな質問をしたらいいか、私も正直、分かりません」

コーチである自分が行き詰ってしまったと認め、そして伝えることは、弱みを見せることでもあり、ある種勇気のいる行為でした。
それでも私は、 “分かったふり”をするのではなく、
自分の弱さに対してもオープンになる勇気を持つ方が、本当の意味で相手に寄り添う行為だと思ったのです。
彼女は私がコーチとして失格だと思ったでしょうか?
恐らく答えはNoだと思います。
(彼女はそれから契約更新を続け、今でも私の最も長いクライアントの一人になっています。)

逆に、私が弱さを見せることで、より”対等な関係”を築くことが出来たのではないかと思っています。
コーチングは、コーチとクライアントの対等なパートナーシップと信頼関係が築かれていてこそ、クライアントは自分の心の声に対してよりオープンに、正直になれます。
そしてそれが、自分自身を深く掘り下げ、見つめることを可能にします。

もしコーチとクライアントとの関係性が対等でなければ、そこに深い信頼関係がなければ、相手はどこかで自分の気持ちを正直にさらけ出すことにブレーキがかかってしまうのではないでしょうか。

私が自分の弱さに正直になることで、相手も弱さをさらけ出しても大丈夫だと言う安心感を与え、その安心感が、より深い信頼関係を築く。
その関係こそが、相手の深い部分と寄り添う為に必要不可欠であり、
また、深い信頼関係で繋がっているからこそ、時にはコーチとして相手に対して厳しい挑戦を突き付けることも出来ると、私は思います。

そのセッションの最後に、彼女は、最初は嫌だと言っていた結論を自分で選びました。
これは私にとって、興味深い結果でした。意外だったからです。
もし私が弱さを見せていなかったら、
もし私が、分からないのに無理やり分かったふりをして答えを導こうとしていたら、
彼女はきっと「良いと“思える”決断」を選んだような気がします。
でも大事なのは、本人が納得して選ぶこと。
相手に寄り添って、ただただ好奇心を持って彼女の心の声をひらすら聞いていったからこそ、最初は嫌だと言っていたその結論が今の彼女自身に必要なものだと気付き、勇気を持ってそれを選ぶ決意をしたのだと思います。

彼女に限らず多くのクライアントにとって、問題を解決することではなく、ただ相手に寄り添うことがどれほど必要なことであるかを、数々のセッションを通して私は痛感してきました。


私が相手に真に寄り添えたかどうかのバロメーターは、
もっぱらセッション後のクライアントの感謝の声です。
“I felt you were right there throughout my journey.(僕の旅にずっと一緒に寄り添ってもらった感覚があった)”
私のクライアントの一人が、満面の笑みで、セッション終了後に言ってくれた言葉です。
カメラ越しでも、彼が満足してくれていたことが良く分かりました。

コーチングは問題解決とは異なります。
クライアントが話す“言葉”だけに集中していると、
自然と意識は、よりロジカルに、問題解決の方向へと向かいます。
もちろんそれが必要な時もありますが、
相手に真に寄り添うことで、放たれるエネルギー全てを受け止め紐解くことで、クライアントが恐らく今まで意識を向けられなかった心の奥底にある自身の声に、近づいていく。
その過程で、コーチは、答えを与えないし、導かない。
相手が自分で導き出すのを、ただただ好奇心を持って、しっかりと寄り添うだけ。
それこそが、コーチングの醍醐味かなと思います。

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