「シンクロナイズドえかきうた」ディベロッパーズノートの話。
COLON ARCで新作が出たら、中の人(私)は何をする?
ディベロッパーズノートを書いて、その軌跡を残すんだ。
ってことで、ディベロッパーズノートです。今回はルールをほぼいじっていないので、デザイナーズノートにはなりません。というか、私はこのゲームのゲームデザイナーではありませんし。
また、記載内容に「ルールを知っていることが前提」の個所が多くあります。そのため、以下に公開しているルールや概要を事前に見て頂けるとありがたいです。(PDFではなく、ページを斜め読みするだけで大体行けると思います。)
1.シンクロナイズドえかきうたを出したいと思った話
全体的に時系列的に書くんですが、まず、何をもってこのゲームを自分で出したいと思ったか、からです。
事前に調べてた際に、「面白そう」と思ってゲムマで購入して遊んだんですが、いいなと思った点がいくつもありました。
まず1つ目。
絵描き歌を作らなくてよい、です。
いきなり何を言ってるんだ、それがメインじゃないのか、ということを思うかもしれませんが、実はそうではない、という話をしておきます。
最初っから創作論みたいな話を全開でしていきます。
ゲーム中に何かを創作するゲームは、数多くあります。一番一般的なもので言うと、やはり「大喜利ゲーム」に大別される物かと思います。
お題カードがあって、それに対して何かを言う、というやつですね。もちろん、それには意図があって、それに合わせたものをいうことになるのですが、これは「創作」です。
「創作」に慣れている人ほどこの「創作」を苦ではなく、あっさり遊べたりもするのですが、これが普段「創作」していない人が遊んだ時に、ものすごく躓きます。
もうちょっと書くと、普通に暮らしている限り「創作」を行うことはありません。思い付きで冗談を言うこともあると思いますが(これも創作ですけど)、それは自由なタイミングで、誰かに望まれた状態ではありません。
これに対して、ゲーム内で行う場合は、「制限された時間内で」「全員に」「指定された意図をもって」「創作」せねばなりません。
これは、割と難しく、ゲームを遊んで「ほかの人は」楽しいとは思いますが、創作している側としてはかなり難しいものがあります。
せめて何らかのガイドがあれば可能ではあるかもしれませんが、期待される意図がそのガイドに含まれていない場合、かなり難易度の高い要求をされています。
さて、話を「シンクロナイズドえかきうた」に戻します。
こちらではカードで絵描き歌のフレーズが提供され、プレイヤーはそれを組み合わせるだけです。
さらに言うと、このゲームのシステムでは、『フレーズ自体が、「形」の組み合わせを作る』ことを要求しているので、歌の良し悪しは関係なく、ただ形を選べばいいようにできています。その結果、絵描き歌が自動でできているのです。
遊びやすくてよいと創作システムだと思いました。
2つ目が、「絵描き歌」です。
海外の方にも何人か聞いてみたんですが、絵描き歌自体あんまり一般的ではなかったようです。特に自国の言葉でも全く知らない、という声すらありました。
それに反して、日本ではほとんどの日本人が知っており、描いたことが内にせよ、見たことはある、という人が多くいます。
変な話、日本の文化の1つだと思っています。
そういうものを使ったゲームというところに魅力を感じました。
特に、絵描き歌に持つ「幼稚さ」や「創作のつらさ」みたいなのがなく、ボードゲームとしてすっと遊べるのがよかったです。
最後に、「得点システム」です。
絵描き歌、と呼ばれるゲームを想像するに、「絵描き歌をうまく創作するゲーム」と感じてしまうのですが、結果「うまく合わせるだけ」というとっつきやすいルールがよかったです。
この部分は、同時にゲームデザイナーとしては、感動すら覚えました。
いや、この「一致した分だけ得点」は昔のゲーマーなら大体知ってる「フラッシュ」そして逆になる「テレパシー」あたりから数多あるのですが、それをこのゲームに組み込んだアイデアがいいなと。
※「フラッシュ」も「テレパシー」も調べたらルールがわかると思うので、ゲーム会で遊んでみてください。多人数で遊ぶとめっちゃ面白いです。
そんな訳で、これが発売されたゲームマーケットで見た新作の中で、最も自分が好みだったこともあって、作者の加藤嶺雄(れお)様に連絡を取って、快諾頂けたので、出版に動くことにしました。
2.イラストレーター選択の話
私は、月に1回はギャラリーに行って、個展を見るのが趣味です。
ギャラリーは入場料もなく、購入も必須ではありません。「見て行ってください」という感じです。
大都市部に行くとよくありますが、地方でもちょいちょいあったりします。調べないと分からないのですが、大阪だと、「イロリムラ」や「アートハウス」あたりから見て行くといいんじゃないかな。私が一番よく行くところを書いただけですが。ギャラリーごとにイラストにある程度傾向があるので、自分の好きなギャラリーを見つけましょう。
さて、話を戻して、どなたをイラストをお願いするかです。
COLON ARCの場合は、これまでお願いしていた人だったり、完全に初めましてでお願いすることもあります。
一番最初のとっかかりとして、まず自分のイラストレーターブックから候補を探します。これは、気に入った、ゲームのイラストを描いてくれそうな方々を名刺や作品集、ポストカードなどと共に自分でまとめたものです。
どちらかというと仕事用というよりは、個人の趣味ブックなんですがw
好きな方のイラストのゲームを作れるのがパブリッシャーのよいところで、そこから探すようにしています。
で、結果、関西コミティアでお会いしたイラストレーター様にお願いすることにしました。
個展はされておらず、コミティアでグッズを買ったことがあった方ですが、直前のコミティアでお話することができて、イラスト依頼もOKだという話があったのが大きかったです。
後、ゲームのデザイナー様もそうですが、今回初めての方だったので、イラストもそれなら新規の方で、って探しました。
3.第三の〇〇デザイナー
そんな訳で、作り始めるかー、とならないのがこのゲームです。
そう、この「シンクロナイズドえかきうた」は創作に難易度が高い点があります。
それは、「絵描き歌を作る」ことです。
カードで示される、という話は前述しましたが、そのカードを作るのはほかでもない創作側の人です。
自分の中で、これを作りたいなー、って思ってる時点で、この「絵描き歌の創作」がネックでした。
知っている人の範囲内で歌を作っている友達はいないし、歌を生業にしている人もいないし。
そんな中、ボードゲームフリーマーケット14 in 三宮に参加しているときに、自由時間を作ってゲームを買いあさってた時に、視界内に収まった人がいます。それが、「なべとびすこ」様です。
「57577(幻冬舎様)」や「ヒトミソサジ」で短歌のゲームを出していたなと。そして、短歌界ではめっちゃ有名な人だったなと思い出して、もしかしたら、ということで相談させて頂きました。
持つべきものは友人であり、ちゃんと話を覚えていることだなぁと。w
そんな訳で、「ちょっと相談なんですがー」とお話させていただいて、今回の参加が決まりました。
というか、デザイナーに名前を乗せられないのがどうにかならないかなと色んなサイトに登録してて思うぐらい、絵描き歌部分では新規追加や監修で大変助けて頂きました。※後で作業内訳も書きます。
そんな訳で、最後のピース、絵描き歌デザイナーも決まったので、本格的な開発がスタートしました。
4.お題カードとフレーズカード
今回、ルールを読めばわかってもらえると思うのですが、お題は何でもよい、とは全く行きません。
加藤様からもお話しいただきましたが、適当なお題にすると全くゲームにならず、描くこと自体に抵抗が生じ、ゲームが変にダウンする(停滞する)ことになります。
そんな訳で、「形」を理解してお題を作る必要があります。
これが割と難しいのですが、理論で作れるところであり、メインを私が担当させていただきました。もちろん、オリジナルのゲームにあるお題をベースに作らせていただいているので、加藤様にも参加いただいていますし、もちろん相互にチェックしてます。
※後にも続きますが、誰も触っていない箇所はありません。全体的にみんなで作ってます。メインが誰かって話です。
お題はオリジナルの倍以上あります。もちろん、採用数以上のお題を作り、その中から選抜したものが採用されています。
次にフレーズカードです。
前述もしましたが、絵描き歌を作らなければなりません。
大まかなわかる範囲のガイドや方向性を共有して、なべとびすこ様、そして加藤様にお願いしました。
こちらも、オリジナルをベースにしています。
こちらも先ほどと同じ感じで作っていきます。
特段難しかったのが、フレーズから来るイメージの共有です。
作っている方は意図をもって作りますし、読み手(この時は主に私)がそれを理解し、ゲームとして楽しめるか、というチェックを行います。
さらに難しいのが数が必要、ということです。
どういった形を示唆するフレーズがほしいのか、それはどれくらいの種類数で、どれくらいの割合(均等なのか、寄せるのか)なのか、というのをお題を傾向や形を考えつつ、「どれが面白いのか」というのを判断する部分です。
この辺のバランスについては、うちで出すということもあって、私が担当させていただきました。ディレクションですね。
そんな感じで各カードの製作をしてました。
4.イラストのディレクション
先ほどとは話が変わって、イラストです。
弊社の場合、そのイラストレーターさんがすでに出されているグッズや原画から、そのテイストをそのまま持ってきてもらえるとゲームと合いそう、というところから始めるので、概ね「いつもの絵柄でお願いできると嬉しいです」からスタートします。
これまでイラストをいろんな人に依頼し始めて、同人含めて15年以上経つんですが、描く方にハンドルを持ってもらえるように可能な限り助力する、みたいな立ち位置が一番いいかなと個人的には思っています。特に自分のとこだと、ですが(これも目的によって変わると思います。うちの場合は、そもそもイラストレーター様のファンなので、指示出しが難しいってのもありますw 欲望がw)
さて、今回もそんな感じでお願いしました。
ラフの提出を頂き(人によってはラフすらないんですが)、相互に意見を出し合い、一旦やり直しになったりしましたが、最終的に今回の感じになりました。
シンクロナイズドスイミングと掛けてます。(ここだけこちらからの指定)
これから泳ぐぜー、って感じですね。でも割と自由ですねw
ロゴも描いて頂きました。
イラストと合ってて、楽しげです。
そして、これも面白くて、フレーズカードにキャラがたくさん描かれています。w
こんな感じで、割と種類も多く、キャラクターの組み合わせだけで言えば、ユニークにしてます。
ゲームを遊びながら、そういった細かいイラストにも注目頂ければと思います。
5.デザイン回り
今回のデザイン回りは、概ね私がやってます。
とはいえ、オリジナルをベースにさせて頂いた部分もあり、全部が全部、という感じではありませんが。
気にしたところや工夫したところもありますが、お題カードの使い方ぐらいかな。しいて言えば。2枚で1枚になるようにしました。本当にビジュアル的に誰もが使いやすくなっているかどうか、については、サンプル数が20や30ある訳ではないので、分かりませんが、今回の反響を見つつ、判断していきたいところです。UI、いつも思いますが、簡単ではないですね。
6.ルール回り
今回、ほぼルールはいじっていません。
ただ、加藤様とも話して、追加した点がいくつかあります。
1)ランダム生成
絵描き歌の組み合わせは楽しいのですが、本当に難しく感じる方もいらっしゃいます。特に、このゲームの推奨年齢が10歳以上となっている一番の原因で、未就学児では絵描き歌を作れないのでは? という結論になりました。
※友人の小学生の親とかに聞きまくりました。
それもあって、「ランダム生成」のルールは今回特に組み込みたい、という加藤様の要望もありました。
テストプレイを行って、あーだこーだテストプレイヤーと話をして、今回の形に落ち着きました。
お題も含めて完全ランダムにすると、難易度が上がります。作る楽しみは減りますが、遊んで「簡単すぎ」「Easy GG」と感じるときは、ランダムで遊んでみてください。
2)2人用ルール
近年のゲームプレイ環境として、2人でも遊べる環境を欲しい人が増えています。
それもあって、元々3人以上だったのを2人で遊べないかな、ということでいくつか試してみました。
結局、ランダムを使うのが、説明も少なく、遊びやすそうとなり、今回の形を採用しています。
テストプレイもそれなりに行いましたが、半分ぐらい合えばいい方です。
結果「こうだった」とするよりは、遊ぶ前に難易度を決めて、それを目指す方が遊んでて緊張感が出るので、ルール通り遊んでもらえればと思っています。
7.おまけ
今回、プレイ人数が15人とさせていただいていますが、実際何人でも遊べますし、ペンを融通するだけで、何も増やすことなく30人でも50人でも遊べます。
オンラインでも遊べます。
そんな中、15人にしたのは、18色のペンが手に入ったからです。
3つ少ないじゃん、っていうのは、2色ほど薄すぎて使いにくいから、そして、ペンを交換して描くときに、中央に残ったペンが無いとやりにくいから、です。
ま、実際3人以上でもいいんですが、見た目で15人とか書かれた方がイメージしやすいかな、という狙いもあります。
一斉に行うので、多人数でぜひ遊んでほしいなと思っています。
8.まとめ
そんな訳で、「シンクロナイズドえかきうた」のディベロッパーズノートとなります。
弊社で出すに際し、こんなことをしているよ、という一部でも伝われば幸いです。(もちろんですが、全部は書ききってません)
ルールの変更は必ず検討しますが、必須とは考えていませんし、そのアイデアの中から、最も面白いものを選ぶ、という感じです。
また、商売である限り、売値を考えたり、それに伴う中身の変更を考えたり、追加を考えたり、ということはあるのですが、基本的に「一番面白いと思えたセット」を出すようにしています。
形態ががっちりしたカードゲームはともかく、パーティーゲームは割と広げやすくあれやこれやできちゃいますからね……
余談ですが、元々は花見小路やミャオ・オラクルDXといった縦長の薄めの箱で出す予定でした。
ただ、実際詰めてみると全然入らなくて、ヒトトイロ5周年記念版の箱サイズとなりました。
リアルな話、5周年記念箱、作っといてよかった。(テンプレートとかサイズ感とかすぐにできるから)
1から箱を作り直すと、リサイズだけでもデザインが大幅に変わって大変なんよね……
さらに余談ですが、弊社のゲームをこれまで買われてる方、気づきましたか?
2023年秋から各ゲームに固有の番号を振っています。このゲームは、P15です。また暇があったら見てやってください。パーティーゲームの15番目です。
そんな訳で、割と製作に創作要素が盛りだくさんな「シンクロナイズドえかきうた」を遊んでいただけると嬉しいです。
年齢も問わない、ルールもすぐに説明できる。
しかも、絵の上手い下手もない。ぴったり合うとすごく嬉しい。
そんなゲームです。よろしくお願いします。
最後に商業的にw 予約サイトです。
※今回初めて、Baseのシステムを無理やり使ってます。先払いですが、返金もできます。
いきなり全変更もあれかなと思ったので、これまで通り、Google Formsの予約も作りました。こちらだと、当日払いです。
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