巨匠と。 #00 はじめに
2002年3月末。Mさんと共に古都ローマから北に延びる鉄道に20分ほど揺られて郊外の小さな駅で降りると、遠くから「シューラトー!!」と呼ぶ声。それが自分を呼ぶ声と気付くのに少し時間がかかった。「シュウタロウ」はイタリア人には少し覚えにくい名前ではある。
何度目かの「シューラトー!!」の後、そちらに目をやると、水色のシャツに紺のニットのベスト、グレーのスラックス姿にサングラスといういで立ちのイタリア人がこちらに手を振るのが見えた。恰幅がよく、背は170センチの僕より少し低い。サ