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中川商店に夏が戻ってきた話

八桜会のお囃子


4年ぶりの暑い夏が始まる

今年人気だった金魚の鯉口シャツ

令和5年8月4日〜6日、実に4年ぶりの八王子まつりが開催された。
3日間の動員数は2017年に並ぶ85万人。気持ち的には超えていたんじゃないかなと思っています。
昨年は祭の10日前に中止となり、各町内の小さな祭がそれぞれ執り行われる形だったけれど、今年は待ちに待ったフル開催。
実家にとっては諸々初めての環境下でのフル開催とあって、今年の春の時点で飛騨からもガッチリと実家の祭用品店「中川商店」のヘルプに行くスケジュールに。
祭りのヘルプで長い期間実家に帰るのは実に20年ぶり…。
自身の仕事を前倒しでこなして、実家でも対応できる体制にして7月30日に八王子入り。
そんなわけで4年ぶりの中川商店の暑い夏が始まりました…

助走期間に4年ぶりの祭りが引き起こすイレギュラー

3年間の経年劣化でソールが剥がれた足袋

7月31日〜8月3日までは本番までの助走期間。20年間のブランクをここで少しずつ埋めていく。この期間に「お店とお客さん」がどれだけ本番に向けて準備できるか?というのがキモなのだけれど「お店とお客さん」の準備というのは実は一体で、助走期間にお客さんが準備をしてくれるからお店も本番に向けての仕入れが本格的にできる…という仕組み。中川商店はずっとこんなバランスでやってきたはずなのに、今年はお客さんの準備が少し遅い印象…。SNSや事前に購入していただいたお客さんに「仲間にも広めておいて」と一日も早いそれぞれの祭用品のチェックと対応をを呼びかけたものの、直前の8月3日になって一気に忙しくなり始めてしまったので本番に間に合わせるための商品仕入れのリミットギリギリに…。それに加えて今年は全国的にも4年ぶりの祭開催ということもあり、衣装や足袋が体にフィットしなかったり経年劣化により壊れたり…という現象が多い…という情報が三社祭など先に実施された祭からも流れていて、もともと足袋を持っていた人も経年劣化により新たに買い揃えるから問屋やメーカーにも品薄な状況…
などなど4年ぶりで色々と以前とは違った状況。
そして極めつけが今年は中川商店にとって初めての環境で迎える八王子まつり…という、イレギュラー溢れる助走期間でした。

未体験ゾーン、父がいない八王子まつり

中川商店のお膝元、横山町三丁目のお囃子

2021年4月6日コロナ禍真っ只中に父が他界してから初めての八王子まつり。
祭用品店である中川商店の勝負どころは祭りが集中する7月〜9月。
僕らにとっての「夏」とは祭りのこと。そんな中川商店から夏がいなくなった3年間に父までいなくなりました…と、こんなふうに書けるのは僕らが一歩ずつでも前に進んでいこうとしているからだ。
そしていよいよコロナ禍を紆余曲折しながら乗り越えた中川商店に「夏」が戻ってくる!
20年ぶりの実家ヘルプである不安よりも、この祭の期間中に僕らが今まで失ってきたいろいろなものを取り戻せたり、思いだしたりすることが出来るんじゃないか?そこに父を見つけることが出来るんじゃないか?

そんな期待を胸にいよいよ八王子まつりをむかえます。

徐々に研ぎ澄まされてくる感覚

祭シフトで早朝からオープンする中川商店

助走期間の間に少しずつ祭用品販売の感覚を取り戻してくるとだいぶ視野が広がり、さらに本番が迫ってお店が活気付いてくると感覚も研ぎ澄まされてくる。
視界の外にあるものに気付けたり、お客さんの次の行動や求めていることがわかったり…こういうのって繁忙になるほどにキレを増してきます。少なくとも僕の場合は…ということだけれど…(ちゃんと真面目にやっている人は普段からキレッキレなんでしょう…)
そんな感覚がいよいよ父にリーチし始める。
今年の中川商店に肉体はないはずの父がいることは感覚としてわかってたけれど、その存在に背中を押してもらったり、お客さんを連れてきてくれたりする感じが、感覚が研ぎ澄まされて行くにつれ「わかって」きた。

Don’t think you are.Know you are.

MATRIX
映画「マトリックス」のワンシーン

僕は「死」に関しては「肉体がなくなったらそこで終わりじゃない」という考え方なのですが、多くの方と同様に「そう信じたい…」と思っているフシがありました。とりわけ自分の都合の良いように…
でもこの時は違いました。「そう思っている」とか「そうだと信じている」のではなくて「それをわかっている」「知っている」という状態。

映画「MATRIX」で仮想空間でのカンフーのトレーニング中モーフィアスがネオに「速く動こうと思うな。速いと知れ」と言うシーン。これ結構キモのセリフですよね。
Don’t think you are.Know you are.

モーフィアスの言葉を借りると「父がそこにいると思うな。いると知れ」
まさにそんな感じ。

でも冷静に考えたら、別に研ぎ澄まされなくたって、やはり父は中川商店にそこいら中にいました。父が長年問屋さんやお客さんと築き上げた信頼関係だったり、それを間近で見て継承してきた兄の姿だったり、飛騨に残した僕の奥さんを含む家族の絆だったり。そんなのが店舗から溢れているのが中川商店。

半纏用の帯

そういう今まで中川商店が築き上げてきたことが土台となって、問屋の在庫が薄い中でもなんとか融通してもらえたり、兄が新しく取り引きし始めた問屋さんが在庫確保に走り回ってくれたりと、実際に父が遺してくれた土台にに加えてスピリチュアリズム的な存在の(肉体がないけれどそこにいる)父が作用して、さまざまなイレギュラーをギリギリのところでかわしてクリアできたという、理解できない人には理解できない…でもそれでいいじゃない…ということが八王子まつりを目前にたくさんあった。
生前の父ならこんなエピソードがあったら自慢げに「いやぁ、こんな大変な時に奇跡的なコトが起きてな、ギリギリでかわしたんだよ〜」と周囲にこれでもかと話し続けてたけれど、そのあたりは息子兄弟がしっかり受け継いでます〜。

肉体がなくなって身軽になった父は親戚中にも作用しているようで、父方の親戚がたくさんこの期間中に訪ねて来てくれました。中には父の生前中あまり来たことのない方も。いやいや〜人を呼んでくれるよね〜

8月4日 八王子まつり初日

横山町三丁目の居囃子
横山町三丁目の提灯

さて、いよいよ八王子まつり本番。8月4日の早朝に各町内に山車が運び込まれると、準備ができたところから居囃子が始まる。それまではYouTubeで過去の八王子まつり動画を見てテンションを上げてるのだけれど…この居囃子が生音で聴こえて来ると「いよいよだわ〜」ってなるもんです。
応援も兄の粋な仲間たちが手伝いに来てくれて心強い!
日が暮れて少し涼しくなってくる頃には街に人が溢れ、中川商店前の通りは今まで見たこともないような人通りに。
おかげさまでお客さんもたくさん来てくれて、おそらく最長で37年ぶり位の小学校の同級生も来てくれて、明るく賑やかな中にしっかりと商売繁盛もありつつ、在庫もギリギリなところで初日を終えることが出来ました。
在庫ギリギリのイレギュラーを除けば、これが中川商店の祭スタイル。
明日からの在庫の心配をしながら初日の祝杯ビールを美味しくいただきました。

8月5日 八王子まつり2日目 

一番囃子のチカラ

中町の居囃子

8月5日八王子まつり2日目、朝5時に目が覚めてそのまま朝風呂へ。5時半位に我が家から50mくらいの広場に止めてある中町の山車から聴こえる一番囃子。
疲れも溜まっていてこの日がいちばんの繁忙になる中日であるのに、この一番囃子のお陰でなぜかぐっとモチベーションが上がる…僕が実家を手伝い始めた中学生の頃から一番囃子にはこういうチカラがある。
そんな一番囃子が、この日はいろんな懐かしさも合わさって、朝から大きなチカラをくれました。

中川商店の前を通る神輿

八王子まつり2日目は山車の巡行や神輿の渡御がプログラムされていて最終日の甲州街道での辻合わせや連合渡御に向けていよいよ祭感が高まってくる。僕がヘルプをしていた頃からはだいぶ変わって、八王子まつり自体のプログラムが3日間に均等にならされて、20年前は最終日に山車辻合わせ・神輿連合渡御・上下神社の神輿渡御に加えて関東太鼓合戦や民謡流しまで入っていたのが、最近では太鼓合戦や民謡流しは2日目に移されたとのこと。確かに最終日はそれぞれのプログラムがタイト過ぎたので、これは見る側にもやる側に良い形。
気温35℃を超える中なのでヒトにもスケジュールにもある程度の余裕がないと難しいし、国道を通行止めにするからにはスケジュール管理も徹底する必要がある。
その現れは山車の巡行や神輿渡御にも出ていて、山車が通るコースや山車同士が互いのお囃子を競い合う「ぶっつけ」にも事前に台本が用意されているとか…

祭とはどういうものか?を考える

背中で語る

20年の間にお祭りもエンターテインメント色が強くなってきているなぁと感じる。僕の住む飛騨古川の祭りは小さな集落の祭りでも大きな古川祭でもメインはエンターテインメントではなく「神事」。田舎だし自然も多いし、農業が生活の中にあるから、生活と「神事」が密着している。おそらくだけれど僕の住む集落の人たちには「神社=宗教」という概念がなく、生活や細胞の中に標準装備で織り込まれているものという感覚。
もちろん八王子まつりも多賀神社と八幡・八雲神社の例大祭であるので「神事」ではあるのだけれど、都会の暮らしと神事の距離感や、祭のエリアが広すぎて祝詞をあげたりと「神事」であることを参加者や見物客に見せる(伝える)場がない…という物理的な距離感の違いもあるのかと思う。
こういう田舎の祭との違いがわかると、改めて「祭とはどういうものなのか?」「どうあるべきなのか?」なんてことも考えることができるのでとても勉強になります…
祭ではっちゃけているけれど、祭が始まる前後の神社の中ではどんな神事が行われているのか?とか、こういうのを知った上で祭に参加するともっと面白く、心も豊かになるかもしれない…と思います…

どっこい節

辻合わせでの「どっこい節」

そんな山車巡行の台本のせいなのか、それとも父が呼んだのか、今年はずいぶん多くの山車が中川商店の前を通ってくれた。
ウチの前の道は一方通行で広くはなく電線も多いので山車の巡行には細心の注意を払う道というか、あまり向いてない道。そんな道だから山車がウチの前に通りかかるとその距離はお店のオーニングから1mほど。スピードも電線を避けながらだからゆっくりと進む。つまりは店の中で接客しながらとんでもないライブが味わえる。
僕が高校生くらいのときだったか、その頃から元横山町の山車を引く若社連中が「どっこい節」というのを山車のお囃子に合わせて始めた…というあやふやな記憶。
お囃子や舞が最高潮になるのに合わせて「どっこい!どっこい!どっこい、どっこい、どっこい、どっこい〜」と節を取りながらあおり、それに対して若社全員が追随する。わかりやすく言うと、江戸っ子ホストのシャンパンコールみたいな感じ…。頭を家紋に刈り込んだり、入れ墨が入ったり、体を鍛えた勢いのある若社たちが粋に祭を盛り上げる。
実家が祭用品店でなければ僕ら兄弟もその輪の中に入りたい!
そんなあこがれをいだきながら毎年聴いていて、他の町の山車も中川商店の前を通ると「どっこい節」で盛り上げてくれたものだった。

感動の「なかがわ節」

中川商店の前を通る南町の山車

そして今年。
八幡・八雲神社へ奉納に行った帰りに南町の山車が中川商店の前を通った時「どっこい節」の節に合わせて「なかがわ、なかがわ、なかがわ、なかがわ!」と女性の粋な声が盛り上げる「なかがわ節」が聞こえた時、ぐっと溢れてくるものがありました。接客中だったのでこらえたけれど、なんだかとても嬉しかった。彼らにも父が見えていたんだろうな…

それ皮切りに、中町、横山町三丁目、南新町、本町、八日町一・二丁目、上八日町、元横山町、三崎町、と僕らの住むエリアにある八幡・八雲神社の氏子の山車が全て聞き慣れたお囃子と共に中川商店の前を通っていった。

僕は過去20年間の変遷を知らないから、もしかしたら毎年普通に全ての山車が中川商店の前を通るコース取りになっていたのかもしれないけれど、まるで「中川さん、来たよ!」と父に挨拶に来ているような、そんなふうに感じていた。
レクイエム…って感じではなくて、きっと父も一緒にはっちゃけているんだろうから、前述の通りホント「あいさつ」みたいな、気持ちよくて粋なはからい。まさに江戸の祭の真髄が中川商店の前で見られたわけであります。

孫と一緒に山車の上

横山町三丁目の山車
兄の娘姉妹

更にこの八王子まつりは中川家的にもう一つ大きなイベントがありました。
それは兄の娘姉妹が「二人揃って初めて山車の屋根に乗る」ということ。
本来なら3年前に実現していたことだけれどコロナ禍の失われた3年間により延期。今年やっと、姉は社会人、妹は高校1年生になっての実現。
これはきっと父も喜んでいる。たぶん一緒に山車の屋根に乗っていんじゃないかな。高所恐怖症だったけれど肉体がないから落ちる心配もないし…

8月6日 八王子まつり最終日

父の写真登場

お店の一角に飾られた父の写真「中川さん、会いに来たよ!」

8月6日最終日。朝6時半OPEN。体の疲れは朝風呂のまどろみの中で聴いた一番囃子が本物なのか夢なのかわからないような状態…だけれど、気持ちは充実している。
風呂から出て準備をして1階の店舗に降りると、母がお店に父の写真を飾っていた。きっと僕らにも父にも(その辺にいることはわかっているから)その写真を置く必要はないのだけれど、長年通ってくれるお客さんに「あ、中川さんだ!」と思ってもらえるよい機会。父の遺影にもなっているこの写真は作り笑顔じゃなくて本当に自然の笑顔で「あの中川さんの笑顔」って写真だから気づいてくれるお客さんがいたら嬉しい…

中川商店から見える祭の景色

決まってる後ろ姿
最高の笑顔

開店から足袋や小物を買いに来るお客さんや、祭衣装に身を包んだ粋なお客さんたちが次々と来店。昔から最終日になると接客を続けながらも祭を楽しめるようになる。
今もなお同級生が盛り上げるお囃子や屋台組での参加はないけれど、祭用品を販売することで参加しているというプライドがある。
山車の上からしか…神輿の担ぎ棒の中からしか見えない景色があるように、中川商店の中からしか見えない景色、感じることの出来ない八王子まつりがある。

トカゲの刈り込みを入れた太鼓の少年
ミニタタミをぶら下げた祭男


そんな景色を一瞬でも写真に残せると良いな…そんな思いでお店のカウンターの下には常に僕の愛機Fujifilm XH-1を置いておいた。
昔父が祭り衣装に身を包んだお客さんや子供の写真を仕事の合間に撮っていたように、「お父さん、そこらへんにいるのなら、僕の指を使って好きなようにシャッターを押してくれ!」と写真を撮りまくっていたらドライブモードが入っていて1200枚くらいの撮れ高になっていました…
一枚くらい、何処かに父が写っているんじゃないかな…

あれもこれも、全部中川商店で買ったんだよ…

小学校の同級生

11時頃になって、前日にウチで買ってくれた衣装を着たお客さんがご来店。カバンの中には沢山の祭り用の巾着やハチマキが。
「これも、それも、あれも全部中川商店で買ったんだよ」
「ウチの子供も中川商店の祭り用品で育ったんだ…」
「八王子まつりで神輿担ぎたいってやつにはとりあえず中川商店に行けって言ってあるから…」

いやはや…シビレますね…
景徳鎮の麻婆豆腐の数十倍シビレました。
八王子まつり=中川商店というブランディング。
父はブランディングなんて言葉で考えたこともないだろうけれど、父と母で試行錯誤しながら、少しでもお客さんが喜んでくれるように、少しでも八王子まつりが粋に盛り上がるようにやり続けてきて、今そのバトンが兄に渡って、今年の八王子まつりで初めて父のいないお店を回している。
そしてこの店に来るお客さんはみんな笑顔で祭りを楽しんでいる…

メインエンジンの兄に喝采を!

向かって右が兄です

今年いちばんしんどいのは兄なんですが、小さい時からそうだけど、なんだかんだと涼しい顔して乗り切るタイプ。そして自然と人の助けが来るタイプ…タイプっていうかそうやって人とのつながりをずっと大切にしてきた結果で、これはきっと父がやってきたことと同じなんだろうな。
今回は色々な局面で問屋さんや仲間、家族に助けられ、本人も「お父さんがだいぶ見えないところで活躍してくれていたと思うよ」と言っている…
「そりゃそうなんだろう」と思うけれど、やっぱりコロナ禍で祭りが中止になり赤字続きのときに父を失い、ドタバタの事業継承の中で踏ん張ってここまでやってきたいちばんのエンジンは兄なんですよ。
その兄にとっても「全部中川商店で買ったんだよ…」という言葉とお客さんの表情はきっと最高のギフトなんだろうな…
これは喝采を受けて然り。あ、なるほど南町の「なかがわ節」は兄への喝采だったのかも…

中川商店の祭の時間

三崎町・中町の山車
横山町三丁目の山車

そんな八王子まつり最終日も18時に夜の山車が辻合わせに出て、神輿の渡御も始まるといよいよ終りが見えてくる。中川商店は、この時間になると特に今年はメーカーの在庫が薄いこともあって、売るものも少ないしお客さんも少ない。
毎年最終日は19時くらいに店を閉めてその後は、やっと山車をや神輿を追いかけてお客さんの勇姿や山車の屋根の上に乗る家族を見に行くのが恒例。
今年は母も連れて家族みんなで夜の祭りを見に行った。
母と一緒に夜の八王子まつりを歩くなんで子供の時以来だ。今じゃ背の高さも足取りも逆転したけれど、なんだかいろいろ感慨深い。

横山町三丁目の山車と浅間神社の神輿

手を振ってくれるお客さん、「これ良かったですよ!」とウチで購入してくれた衣装を指さして声をかけてくれるお客さん、そして人の熱気と祭囃子。神輿を担ぐ人、山車を引く人、お囃子の演者、それぞれの目を覗くとその中にたくさんのドラマがあるように思う。
あともう少しで4年ぶりの八王子まつりが終わる…

みなさん、おかげさまで中川商店に夏が帰ってきてくれました。ありがとうございました。

祭りのあと

祭のあとの中川商店

8月7日の朝5時に目が覚めた。耳をすますと昨晩までの残響か、聴こうと思えば一番囃子が聴こえる。でももう山車は昨晩のうちに屋台蔵に帰っていて、お囃子なんで聞こえるはずもない。
玄関を開けて外に出てみれば、あれだけ人が歩いて汚れていた街は元通りな日常に戻り、斜め向かいにあった神輿の御仮屋は元のコインパーキングに戻っている。
そして時折フラッシュバックするように聴こえる祭囃子の残響。きっとこれが「祭りのあと」の正体なんだろう…

祭のあとは次の祭の始まり

前職で会社の展示会を終えた時の社長の言葉を思いだす。「もう次回の展示会は始まっています。今回の展示会での満足度が次回の展示会来場者数に直結しているから」
この言葉を借りるなら、もう来年の八王子まつりは始まっている…。
ヘルプで入っている僕や兄の仲間はそれぞれの日常に戻って行くけれど、中川商店はまた次の祭に向けて動きだす。

とても素敵な時間でした。
また来年の八王子まつりに中川商店で会いましょう。

…というのが「中川商店に夏が戻ってきた話」でした。






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