【読書日記3】『ハコの牧場』/北村恵理
北海道岩見沢市に北村というところがある。石狩平野の大自然に囲まれた、農家さんが多い地域。数年前、ひょんなことから、明治時代にこの北村を開拓した兄弟について調べ、冊子にしたことがある。
その冊子について講演をお願いしていただけることがあり、講演を聞きに来てくれた地元の小4の児童が、北村をさらによく知ることができる本ということで貸してくれたのが『ハコの牧場』。
主人公は北村の牧場の子、春子。通称ハコ。家族や友達や近隣の人や動物たちと繰り広げられる日常が四季折々に表現されている。時には優しく、時にはすご〜く厳しい自然の中でたくましく育っていくハコたちが、とても丁寧に描かれていた。本の帯にも引用されているが、後書きで「自然はよく見れば同じものが一つとない物事の繰り返し」「見えない風や動かぬ沼にさまざまな色や音があるように、人間と動物たちと石狩平野の大きな自然が織りなす牧場の生活は、毎日が小さなドラマの連続」だそう。大人になって便利な生活を送っていると見過ごしてしまう日々の小さな出来事には、今だって本当はもっともっとドラマが潜んでいるんだろうな。
子どもの頃、冬になると、雪の結晶を見たり、凍っている川の上に雪玉を転がしたり、つららを舐めたり、特別な道具がなくても一日中外で遊んでいられた。この本を貸してくれた子のキラキラした表情がとても眩しかった。そういう時を忘れずいたいものです。はい。