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ドットを繋げる生き方

ヴェルディカレッジ第6講では、2期生にとって初の外部講師となる帝京大学准教授の大山高氏をお迎えしました。大山氏からは、ドットを繋ぐ生き方とJクラブと欧州クラブの比較論の2点についてお話がありました。

本講義は前編と後編2つに分けて講義レポートを執筆しました。前編ではドットを繋ぐ生き方、後編ではJクラブと欧州クラブの比較論に触れていきます。

執筆

メディアプロモーショングループ: 川島壮志・山野竜晟(2期生)

講師紹介

大山さん写真

大山高
ヴィッセル神戸在職中に「大学がスポンサーになる」という新しい営業を開発し、Jクラブ最多の大学スポンサー数(7校)を記録した。2006年にはヴィッセルカレッジを設立。2010年より博報堂のスポーツ局に転職。ヴィッセル時代に得た知見を活かして自らが大学教員へ転身。2018年、日本の大学で初となる欧州のビッグクラブ「ボルシア・ドルトムント」とスポンサー契約を結び、世界一観客が入る、ドルトムントのクラブマネジメントについて研究している。著書に「海外サッカーはなぜ巨大化したのか(青娥書房)」他

ドットを繋ぐ生き方


大山氏の言う『ドットを繋ぐ生き方』とは、これまでの人生の経験を整理し、結びつけ、次の行動を決める生き方で、かの有名なスティーブ・ジョブズもスタンフォード大学の卒業式でのスピーチで、この生き方を紹介しています。


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大山氏のドット

大山氏の持つドットは下記のようなものがあります。

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大山氏は、少年時代を家庭の事情で海外で過ごした経験を持ち、日本に帰国後はその経験を活かしたいと思い、立命館アジア太平洋大学に一期生として進学します。
さらに大山氏は、2002年のサッカー日韓W杯をきっかけに、スポーツの仕事に興味を持ち出したため、日本スポーツ産業学会に参加しました。そこで、現在東京ヴェルディのeスポーツチームのGMであり、当時はダイエーホークスで法人営業をしていた片桐正大氏に出会ったことで、スポンサーからお金を集めるためのセールスシートの書き方等を学んだと言います。
その後、大山氏は、母校である立命館アジア太平洋大学とダイエーホークスと当時のプロ野球のトップスポンサーであった三洋電機を結びつけたイベントを開催し、スポンサーから250万円もの協賛金を調達することに成功しました。

『オグシオ』との出会い

その経験もあり、三洋電機に入社した大山氏は、バドミントンチームのマネジメントに携わることになりました。バドミントンをプレーしたことも見たこともなかった大山氏ですが、小椋久美子氏と潮田玲子氏の人気ペアと出会い、結果的に二人が『オグシオ』とニックネーム化され、彼女たちをマネジメント会社と契約することなく、国民的な知名度を誇るトップアスリートへと成長させることに成功したのです。

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会社の完全子会社化

そんな大山氏に転機が訪れます。新潟県中越沖地震によって三洋電機の業績が悪化し、会社がパナソニックに買収され完全子会社化されたのです。この時に、大山氏は、企業スポーツのチームに危機感を感じたと言います。なぜなら、『オグシオ』の練習拠点の地元住民にオグシオの存在が知られていなかったからです。
それまでの日本におけるスポーツチームは、親会社の広告塔の役割だったため、過度な競技志向によってファンを作る感覚が欠落していました。会社がなくなってしまえば選手は職を失い、競技の普及にも繋がりません。
そこで、大山氏は、ファンのいるプロスポーツというドットと、かつて自分がプレーしていたサッカーというドットを繋ぎ合わせ、ヴィッセル神戸へと転職しました。

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ヴィッセル神戸時代

大山さん4

ヴィッセルに来て最初に考えたことは、企業スポーツに関わっているときには考えなかったステークホルダーとの関わりだと言います。特にJリーグが目指す『地域密着、Jクラブが社会と一体になる姿を見せるというフィロソフィーへの共感が大きかったそうです。そもそもJリーグの掲げる『地域密着』という理念はどこから来たのでしょうか。

大山さんドイツ

Jリーグはもともと企業スポーツです。1993年に『地域に根ざしたスポーツクラブを核としたスポーツ文化の振興』という理念を掲げ、開幕しました。Jリーグがこのとき最も影響を受けた国は、当時から地域密着型のスポーツ文化があったドイツであり、地域密着の原点はここにあります。(ドイツのサッカークラブについての詳細は後編で述べます。)
ここで大山氏は、ドイツとはどういう国なのだろうという興味を持ち、新たなドットが形成されました。

その後、大山氏の頭の中に1つのシナリオが出来ます。それは、スポンサーもチケットも売れなかった大学生というステークホルダーを巻き込むことです。見るスポーツでも、するスポーツでもなく、支えるスポーツからアプローチ。ここからヴィッセルカレッジが生まれたのです。

ヴィッセルカレッジ

大山さん3

ヴィッセルカレッジとは、現在のヴェルディカレッジの前身ともなった、スポーツを通じて新しい仕事や生き方を創造するためのカレッジ事業です。講義をするだけでなく、将来メディア業界に関わりたい人は『ヴィッセルカレッジ新聞』という独自の媒体を作るなど、幅広い活動を行いました。その中でも特に大きな活動は、カレッジ生が主体となって企画運営を行ったチャリティーイベントでした。なぜ、チャリティーなのか。それには、クラブの歴史が関係しています。

ヴィッセル神戸は、阪神淡路大震災の起きた1995年に誕生したクラブです。震災の起こった1月17日にクラブの始動を予定していましたが、震災の影響で活動は休止。約1ヶ月遅れでチームが始動することになりました。そこからヴィッセル神戸には、震災が起こると、いち早く募金を行うなど、クラブとしての理念が形成されます。その理念に基づき、大学生にただ手伝ってもらうだけではなく、何か違う経験をしてもらいたいというクラブの思いからチャリティーイベントへ繋がったのです。

学生たちに違う景色を見せるために、カンボジアやインドネシアでの活動も行いました。大山氏は、自分がこれまで海外での活動を通じて形成してきたドットと同じように、学生たちにもドット形成の場を提供したかったと言います。

このように、クラブを通じて様々なステークホルダーと繋がった大山氏は、このように感じたそうです。

大山さん2

以上に挙げたように、企業スポーツでは経験出来なかった、あらゆることに取り組み、プロサッカークラブを通じて多くのドットを形成しました。

まとめ

冒頭にも述べたように、大山氏はドットを繋ぐ生き方を大切にしてきました。かつて海外で生活していたことから大学を選んだことや、自身が取り組んでいたスポーツの分野で働いたこと、そして教師である母親の影響を受け、現在は大学教授をしていること、全てがドットを繋いだ生き方なのです。

これを踏まえて大山氏は、「ドットを繋げて、あらゆることに挑戦し、自分にしかないキーワードを見つけて欲しい。すると10年後に、ドットが繋がり、になっている。」とラストメッセージをくださいました。

大山氏講義後編では、「Jクラブと欧州クラブの比較論」について触れていきます。

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