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年賀状でママ業を確認される
元旦、我が家の郵便受けに年賀状がぱらぱらと届いた。年賀状じまいをした友人知人も多いが、郵便配達を通じた交流はいちおうまだ健在だ。
それら年賀状の差出人を確かめずに、裏の文面だけをざっと流し読みしていたら、シンプルなデザインに殴りがきのような字のものが目にとまった。一筆書きの蛇の隣には、あっさりとメッセージが書かれていた。
「しっかりママしていますか?」
文面のみでは「上から目線」の印象を与えかねない年賀状だ。わたし自身、「しっかり〇〇していますか?」と人に語りかけたことはない。
それは、ミッションスクール時代に担任だった先生からきた年賀状だ。
先生はわたしの母と同い年で、まるで父のような雰囲気を感じさせる方だった。数学Bに四苦八苦していたわたしを、数学教師としてビシバシ鍛えてくれた恩師である。おかげでわたしはなんとか国立大学に進めた。ド理系で数学と化学が大の得意だったわたしの妹もお世話になった。
「きみら姉妹を足したらパーフェクトやねんけどな。2で割ったらあかんで」とよく言われたものだ。
卒業後は何度も母校に遊びに行き、先生に近況報告をした。わたしの結婚式にも招待し、出席してもらった。
ミッションスクール卒業から20数年。わたしも40代になった。この年になると誰かに上から目線で話しかけられることが少なくなる。みんなほどよい分別があって、ほどよくフランク。距離感を心得た人ばかりだ。
だから、しっかりやっていますかなんて言われて少し嬉しくなった。わたしはいつまでも生徒で、先生はいつまでも先生なのだ。その関係性はもう遠い。でも、変わらず大切にしたい。
「年明け早々、ママ業しっかりやってるかって心配されちゃった」
夫にそう言ってみるわたしの声は、自分でも弾んでいたと思う。たまには上から目線で語りかけられたいときもある。