見出し画像

夜な夜なの愉悦

半年ほど前から続いている、夜のお楽しみがある。寝るときに香水をつけることだ。

妊娠を機に、香水をつけるのをやめた。つわりのせいで香水どころではなかったし、出産後はもっと余裕がなかった。「香水? そんなのあったっけ」状態だった。

19歳ではじめてまとった香りはグッチの「ENVYエンヴィ」。きりりとした香り立ちがすごく好きで、長いこと愛用していた。同年代の方なら懐かしく思ってくださるのではないだろうか。

その次は、シャネルの「ALLUREアリュール」だった。たしかオードパルファムのほう。センシュアルな甘さのなかにも凛々しさが漂う香りだ。これも長年使っていたと思う。

その後はいろいろな香りを試しては「あ、これはちょっと違うかも」「こっちはかなり好きかなあ」なんて迷う日々が続いた。香水ジプシーと言ってもいい。妊娠以降、ジプシーさえもしていなかったけれど。

でも、おととしの秋にデパートのコスメカウンターでふと思った。「やっぱり香水、いいな」。

そして、今。

コスメカウンターで化粧品を買ったついでにサンプルをいただいたり、小分けした香水のセットをネット通販で購入したりして、また香りを楽しむようになった。

自分に合う香りを、少しずつ試していきたいのだ。

ただし、あくまでもお試しだから、夜寝る前につけている。もし自分に合わない香りだった場合、昼間につけると外出できなくなってしまうからだ。

最近気に入っているのが、イブサンローランの『LIBREリブレ』。アイシャドウを買ったときにサンプルとしてついてきたものだ。セクシーなのにユニセックスな雰囲気も立ちこめる、なんだかかっこいい香りである。

深くリラックスできて、かつ微笑みたくなるほどの充足感に包まれる。ああ、やっぱり香水はいいものだと思わせてくれる。今度、現品を買いに行こう。

こんなふうに夜な夜な寝香水を楽しんでいる。どれをステディな香りにしようかと迷う期間がこんなにも楽しいなんて、知らなかった。

昔、ものすごくモテる友人が言っていた。「付き合うまで、または付き合ってすぐがいちばん楽しいのかもしれない」。恋愛に不器用なわたしはへえ、そんなものかと思って聞いていたけれど、まさかその境地を香水で味わうことになるとは思いもよらなかった。

香水は、長く使うと飽きてマンネリ感を覚えることがある。「この香水、ほんとうにわたしに合ってるのかな」と立ち止まるときがあるのだ。ならば、マンネリに至らずにいる期間がいちばん楽しいに決まっている。

わたしが恋愛でマンネリの瞬間を味わわなかった(味わえなかった)のは幸か不幸か判断しかねる。それでも、今「選ぶ楽しみ」に溺れられることはちょっと幸せだ。

せっかくだから、夜の愉悦タイムをもう少し続けてみようか。


いいなと思ったら応援しよう!