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恥ずかしいってまだ言わないで
長女が「恥ずかしい」と言ったことにショックを受けるアラフォーの話。
先日、双子の娘たちと手をつなぎ、ピアノ教室に向かって歩いていた。彼女たちももうすぐ6歳。「大きくなったなぁ」なんて親っぽい感慨にひたりながら、おしゃべりする。
「長女ちゃんも次女ちゃんも、大好きだよー。かわいいよー」
歩いているとき、ちょこちょことこんなふうに声をかける。だって、かわいいから。
すると、長女が言った。
「あのね、恥ずかしいから、ピアノの先生の前で『かわいい』とか『好き』とか言わないでね?」
がーん。絶句する私。
言い訳すると、私は人前で「長女ちゃんかわいい、次女ちゃんかわいい」を連発してはいない(したっていいと思うけれど)。あくまでも人通りの少ない道で3人でおしゃべりしているときや、家で過ごすひとときに、この手のフレーズをはさむ。だって、かわいいから。
それのなにが恥ずかしいのよおぉー、と長女に言いたい気持ちになったが、ぐっとこらえた。彼女が恥ずかしいと言うなら、恥ずかしいのだろう。
自我の芽吹きはとっくに通り過ぎ、最近ではめきめきと主張を強くしている娘たち。成長のステップをまたひとつ上がったのだろうと思われる。
今までなら「かわいい」「大好き」と伝えると、ほんのり誇らしげな表情さえ浮かべていた彼女たちが、同じ言葉を「恥ずかしい」ととらえるようになっている。「友達や先生の前で言われたらいやだなぁ」という発想が先に立つらしい。
もうすぐ小学校に行くお姉さんだもんね。愛でられるだけじゃいやだよね。ベタベタされるのもいやよね。わかるよ。
ああ、成長だなぁ、と思うよりもまず、さびしさを覚える私がいる。恥ずかしいんだって。恥ずかしいってよ。頭の中で繰り返す、面倒くさいアラフォー。
あなたたち、赤ちゃんの頃はママがおんぶと抱っこを同時にしていたんだからね?とか、恩着せがましいことのひとつも言いたくなる。
子育てでは、だんだんと子どもの手を離していくプロセスが大切なのはわかっている。娘たちには自立した素敵な女性に育ってほしい。私からがんがん離れていってくれるのはきっと喜ばしいことだ。心の準備だってしているつもりでいる。
でも、「恥ずかしい」はもっと先のことだと思っていた。このダメージから回復するのには少し時間がかかりそうだ。