戦友バナナクリップ
今日はバナナクリップで髪を留めている。細長いクリップに装飾がついているタイプのヘアアクセサリーで、手早く、きれいに髪をひとつに結い上げられるので重宝する。
このバナナクリップ、特に流行りものではない(と思う)。
今だったら「デフトバン」が、旬なヘアアクセサリーと言えるだろうか。
ワイヤーを内蔵したリボン状のデフトバンは、くるくると髪に巻きつけてねじるだけでお団子やギブソンタックがつくれるとか。私の好きなヘアアクセサリーブランド「コンプレックス・ビズ」からも出ているらしいと聞き、一度試してみたいと思っている。
話が逸れてしまった。バナナクリップの話。
バナナクリップを愛用しているのには、理由がある。私にとって「戦友」のような存在だからだ。
もともと私はヘアアレンジとヘアアクセサリーが大好きで、髪の手入れにもそれなりに気をつかっていた。
それでも、会社員時代は忙しくてヘアアレンジなどする余裕がないこともあった。そんなときはバナナクリップの出番だ。出勤前に鏡の前でガサッと髪を束ねるだけでいい。
娘たちを産んだ頃は、さらに余裕がなかった。そのへんにある黒いヘアゴムで髪を結っていた。いいかげんな結び方で、位置も変だっただろうと思う。けれど、そんなことにかまっていられなかった。
自分の髪なんて手抜きも手抜き。ホルモンバランスの乱れからくる抜け毛はもちろん、枝毛・切れ毛もひどくて、自分でも鏡を見るのが嫌になったくらいだ。
ある日、ふと思い立ってバナナクリップで髪をまとめてみた。妊娠前に買った、ベルベットリボンがあしらわれた上品なデザインのものだ。相変わらず傷んだ髪だったけれど、それをつけると少しは見ばえがして、なんとなく気分が良くなった。
そのまま双子ベビーカーを押して公園に出かけたら、近所の方に褒めていただけたことも覚えている。ほんのひと手間でこぎれいな印象ができあがるのだと実感した。
それ以来、育児が一段落するまではバナナクリップにお世話になった。疲れきった雰囲気をごまかしてくれる華やかさは、ほんとうに頼もしかった。やつれた姿で人にお会いすると、とても心配されてしまうのが心苦しかったから。
こんなふうに、産前も産後も、ヘトヘトな時期に寄り添ってくれていたのがバナナクリップなのだ。
今では、買い物に出かける機会も増えた。新しい洋服やヘアアクセサリー、読みたい本などを、自分の望むときに手に入れられるようになった。
でも、なかなか自分の買い物に行けなかったあの頃は違った。手持ちのアイテムで気分を上げて、なんとか毎日を乗り切っていた。
バナナクリップを手にすると「ああ、助けてもらったよねぇ、あの頃は」と、感慨がこみあげる。年を重ねるごとに、戦友と呼びたくなる品が増えていく。心強いことだ。これからもお世話になります。