なぜデータの洪水でも機械学習を活用できないのか?予測分析とマーケティングでの活用ポイント
企業が膨大なデータを持ちながらも、なぜ機械学習を活用して意思決定を最適化できないのか。その原因と予測分析の重要性を解説し、マーケティングでの活用方法を、HEARTCOUNT AnalyticsのオフィシャルパートナーであるCOKOOZ合同会社の東(あずま)がご説明します。
データの洪水、でも機械学習の活用はまだ?
近年、企業界ではデータを扱う能力が飛躍的に向上してきました。かつては考えられなかったほどの膨大なデータを処理・分析することが現実のものとなっています。しかし、驚くべきは、多くの企業が機械学習を活用しての意思決定の自動化や最適化に踏み出していないという現状です。
では、一体どうしてこのような状況が生まれているのでしょうか?「データサイエンティストが不足」「データがない」「適切な専門知識がない」などと
言われますが、これはほとんど関係ないと思います。
一般企業で機械学習ツールの導入でうまくいかない理由は、
・機械学習で解決できないことを解こうとしている
・機械学習で解決しようとしていることを決めていない
という2点がほとんどです。
これを別の言葉で表現したのが「データサイエンティストがいない」「データがない」という別の言葉で転換されている場合も多いでしょう。
予測分析の有用性
過去のデータが未来の出来事の先触れであると仮定するならば、機械学習で未来の出来事の動向を掴む手がかりを得ることが可能です。
過去のキャンペーンの反応者のデータから、次回の反応者を予測
過去の解約者の情報を基に、サブスクサービスの解約を予測
貸倒れデータを元に、クレジットカードのリスク顧客を特定
これらの例は、過去データを駆使して、未来の行動や反応を予測する力を示しています。天気予報も過去の気象データを元に、明日の天気を予測し、それに基づいて「傘を持参する」という決断を下すのです。
結論として、予測分析は、過去の情報を利用して未来の確率を導き出し、それをもとに実際の行動を決定する強力なツールであると言えます。
なぜうまくいかないのか?
「問い」がないままでのツール活用
有効活用できるのは「顧客の反応」「解約予兆」「貸し倒れ予測」といった結果に対して、機械学習の結果による有効な対策や打ち手がある場合です。
ベンダーの責任もありますが、「データをツールに入れれば何か出てきます」といったトークにより過大な期待を抱く企業も多いです。「正しい問い(=目的)」がなく、プロジェクトに突入してしまうことも出てきます。
目的を明確にすることの意味
機械学習ツールの活用で重要なポイントは「アルゴリズムの数」「ハンドリングできるデータ量」「処理速度」ではありません。「この数値の予測の誤差さえ最小化できれば、KPI・業務に大きなインパクトが出る or 出るはずである」という、明確な問いが定義されているか否かでしょう。
これがないと「過去に来店した顧客は、売上が上がる」となり、「じゃぁ、モデルに従って、来店が多い人にDMを出そう」となり、「そんなの分析しないでもわかるじゃん。全員にメール打てば?無料みたいなものだし」ということが多くなります。(このようにして顧客の望まないメールが増え、解約が増えますが)
結局のところ必要なのは「顧客の来店を促す、要因を見つけ、それを促進するための顧客の変化とその洞察を発見してシナリオをセグメントに応じて3パターンでの対策を打つ」ということもセットで重要です。「誰が来店するか」の予測だけしても、「誰が来るか」がわかるだけです。来るのがわかっている人にクーポンを打つのは無駄かもしれません。
予測は因果関係で考えると「果(結果)」を見通せますが、「因(原因)」はわかりません。天気予報のように「結果」さえわかれば、「傘を持って行く」という行動で目的が達成できます。では「なぜ雨が降るか?」という要因を厳密に知りたい人はいないでしょう。
ただビジネスでは「予測」だけでなく、ビジネスの開演のために「要因を知る」ことも長期の戦略・戦術を立案するために非常に重要です。
ビジネスでの予測分析の活用の鍵
では予測分析は、具体的にどのような場面で活躍するのでしょうか?予測分析や推定はさまざまな場面で活用されています。
Eメールでの特別クーポンの提供
ウェブサイトにおける商品やサービスの推薦
パーソナライズされたメールでの反応率の向上
購買意欲が高まっている顧客へのタイムリーな営業提案
アンケートの回答を基にした好みの商品推定
携帯電話契約の解約リスクやオファー提示の最適なタイミング
これらの情報が手元にあれば、特定の地域への在庫補充、営業チームの人員配置、顧客の興味を引く商品のピックアップや、解約阻止のためのプロセスの自動化など、具体的な対応策を立てることができます。
要するに、「もし来月のXXXの確率を知ることができれば、XXXという戦略を実施し、結果として収益やコストの最適化が期待できる」というシナリオを”先に”多く立てられるかが鍵です。
ここまで決めてからオーダーをすることが、「データサイエンティスト」のリソースと実力を発揮をさせることができるようになります。(分析する担当者も何に使われるかわからず、訳のわからない依頼を受けるのはストレスにもなります)
予測分析の”前に”問いを見つける
探索的データ解析と機械学習活用の成功の鍵
予測分析を活用するためにも「ビジネス課題のXXXについては、このような原因がありそうだ。その原因を定量的に改善するには、〇〇予測ができれば、対策のXXXを実行できる。」といったことが必要です。
このような「問い」の発見には「ビジネスアナリティクス」「探索的データ解析」「拡張分析」とドメイン知識・業務知見があることが必要です。これによって「予測」と「実行」のバランスが取れるようになります。
これも踏まえて機械学習をビジネスに使うためのポイントは以下です。
実務での活用:機械学習を本当の意味での強力な武器にするためには、具体的なマーケティングや営業施策での実践が不可欠。
目的の明確化:「AIや機械学習技術を導入したい」という動機だけではなく、目的や目標を明確に設定し、手段として技術を活用する。
不明瞭なポイントへの取り組み:機械学習で解明できない問題には、リソースを過度に投入せず、他の解決策を模索する柔軟性が求められます。
上記の3つ目の観点は非常に重要になります。「これ以上は難しい、次に行こう」と決断できるのは分析をリードする管理者や責任者です。その判断は現場のデータサイエンティストではありません。よって管理・責任者は経験とデータによる評価方法への理解が大事です。
まとめ
Netflix、Uber、Airbnbといった企業が機械学習エンジニアやデータサイエンティストを多く採用しているのは「高度なパーソナライズ・レコメンド・セグメンテーション・予測がビジネスに直結する」という思想・戦略・具体案・実績が明確にあるからです。
機械学習技術をビジネスの現場で実際に活かすためには、その背後にある目的や戦略、そしてリソース管理のバランスを考えていきましょう。
データ活用でお困りの方、ツール導入やデータ活用で相談してみたいという方は、以下のサイトをご参考にしてください。
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