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データを活用した顧客離脱の分析と対策

現在、人口が停滞・減少していく日本では新規顧客をどんどん取っていくのは難しくなっていき、既存のお客様とのリレーションシップを図り、顧客離脱を防ぐことが重要です。そのような施策がなぜ重要なのかを解説し、その分析方法や対策を具体的に説明します。顧客との長期的な関係を築くためのアプローチをHEARTCOUNT AnalyticsのオフィシャルパートナーであるCOKOOZ合同会社の東(あずま)がご説明します。


顧客離脱とは?

顧客離脱とは、定期的に商品やサービスを購入していた顧客が最終的に離れてしまうことを指します。これは、例えば携帯電話や保険などの契約型サービスで顕著ですが、小売業やECサイトでも、アカウントを削除せずとも購入頻度が大幅に減少する場合も顧客離脱と見なされます。

また、顧客の意思ではなく、企業側からの意思で離脱を起こす場合もあります。例えば、違法・脱法的な使い方をしている場合は強制解約、もしくはポイント還元などだけを獲得し、企業サイドの利益に貢献しない場合はポイントプログラムの条件変更などを行うということもありえます。

なぜ顧客離脱が重要なのか?

顧客離脱は、企業の成長にとって重要な指標です。顧客が離脱することなく、継続的に商品やサービスを利用し続けることで、企業の収益が安定し、顧客の生涯価値(LTV)も向上します。また、新規顧客の獲得にはコストがかかるため、既存顧客を維持する方が効率的です。これにより、企業は「ストックビジネス」つまり「顧客資産」を築くことができます。

これにより、サブスクリプションビジネスは、未来に向けて低い解約率を保持すれば新規の加入とともに、収益が増えていくことになります。よって新規と同様に未来に収益を生むという観点で言うと、既存顧客の維持が新規顧客と同様に非常に重要になっていきます。そして最も重要なのは、既存顧客の維持は、新規顧客の獲得よりはるかに低コストであると言う点です。

そのためにも信頼され、強固なエンゲージが大事になります。

離脱分析の実施方法

顧客離脱の測定

顧客離脱率は、一定期間内に離脱した顧客の数を全顧客数で割ることで計算されます。この指標は、どの顧客がいつ、なぜ離脱したのかを理解するために重要です。

顧客セグメンテーション

顧客をグループに分けるセグメンテーションを行うことで、どの顧客グループが離脱しやすいかを把握できます。
例えば、RFM分析(Recency, Frequency, Monetary Value)などを用いることで、顧客の行動や価値に基づいて分類できます。
もともと、RFM分析は通信販売で、ある一定条件に満たない顧客へのカタログ送付を停止するという「切り捨てる」ための道具でもありました。最近ではRFM分析を優良顧客分析に使う場合はありますが、結局は「たくさん買った顧客がいい顧客」と言うだけで、その本質的な顧客属性は分かりません。よってRFMを使った優良顧客の判別ではあまり有効ではないと筆者は考えています。

その他、RFMのように3つの属性ではなく、顧客属性、購買履歴、Web・アプリのデータから数百の属性・特徴量を生成し、機械学習を用いたセグメンテーションも有効です。これは非常に莫大なデータから顧客のパターンでセグメントを生成でき、細かいニーズに対応した自動化にも役立ちます。

コホート分析

コホート分析では、顧客を獲得した時期に基づいてグループ分けし、その後の離脱傾向を分析します。これにより、顧客がどのライフサイクル段階で離脱しやすいかを特定でき、新規顧客と長期顧客の行動を比較することで、改善策を講じることができます。
この分析はMAのシナリオに応用ができます。顧客セグメントごとにコホート分析を行い、「この時期に退会しやすい」ということがわかれば、顧客セグメントごとにその時期にMAを使いメールやアプリなどのチャネルからエンゲージを強化したり、退会防止策を打つなどの対策が考えられます。

指標の監視

離脱率以外にも、以下の指標を監視することが有効です。継続的にモニタリングし、離脱の可能性や、離脱によるインパクトを測定して打ち手を検討します。

  • 収益離脱率:月次の収益の変動を追跡し、離脱による収益減少を把握。

  • CAC(顧客獲得コスト)、LTV(顧客生涯価値)、ROI(投資収益率):これらの指標は、マーケティング活動の効率を測るために重要です。

  • 解約予測確率:毎月、顧客ごとに予測確率を算出し、それを追跡します。

このような情報を参考にして、顧客別に解約確率が急増した顧客、もしくは解約されると収益にインパクトの大きい顧客のみに対して、MAでトリガーキャンペーンを実施するシナリオが考えられます。

機械学習による離脱予測

機械学習を用いることで、顧客の属性や利用履歴から、誰がいつ離脱しそうかを予測できます。これにより、解約の確率が高い顧客を特定し、早期に対策を講じることが可能です。
機械学習ツールとデータを用いることで、以下のような解約モデルを開発することも可能です。

  • 任意解約予測モデル:顧客が任意に自らの意思で解約してしまう確率。

  • 強制解約予測モデル:企業にとってよくない行動をして解約する確率。

  • 解約復活予測モデル:一度予測したけど、再加入をする確率

  • 解約対策予測モデル:解約確率は高いが、「クーポン」「値引き」「放置」などの打ち手によって、解約確率がどれくらい下がるかの検証

基本的に「任意解約」「強制解約」はデータを分けた方が良いでしょう。
工夫をするといろいろな対策につながるモデルができます。

顧客退会調査

顧客がサービスを退会する際に、簡単な調査を実施し、離脱の理由を把握します。これにより、以下のような要因を特定することが可能です:

  • 価格: 競合製品と比較して価格が適切か?

  • 顧客サービス: サービスの質が退会に影響したか?

  • 機能不足: 製品の機能が期待に応えていたか?

  • 使用頻度: サービスの利用頻度が低かったか?

  • オンボーディング: 初期サポートが十分だったか?

このようなサービス自体の改善ができないと、いくら新規顧客を獲得したり、機械学習を予測モデルを構築しても意味がなくなってしまいます。

満足度調査、NPSのデータを収集して分析することが必要になります。このような分析は「予測」ではないため、「探索的データ解析」「EDA」「BA(Business Analytics)」といった手法で理解を深める必要があります。

顧客の維持のための実行案

顧客離脱を防ぐための具体的な戦略には、以下のようなものがあります:

  • 顧客オンボーディング改善: 初期段階でのエンゲージメントを強化。

  • パーソナライズされたコミュニケーション: 個々の顧客に合わせた対応で、より深い関係を築きます。

  • インセンティブの提供: 特典や報酬を通じて、顧客の忠誠心を高めます。

  • ソーシャルプルーフの利用: 他の顧客の成功事例を共有し、サービスの価値を再確認させます。

この実行案が最も重要だと言えるでしょう。予測モデルや高度なAIを活用しても、対策ができなければ収益に貢献できません。
「天気予報」という "予測” が重要なのは、雨の確率が高ければ「傘を持っていく」「外出をやめる」という対応策が明確にあるからです。

ビジネスでも「打ち手」につながる機械学習による予測やAIの活用をすることが非常に重要となります。

まとめ

顧客離脱の防止は、企業が安定した収益を維持し、長期的に成長するために不可欠です。特に、人口減少が進む日本市場においては、既存顧客との長期的な関係を築くことが一層重要になります。データを活用した分析と対策を通じて、顧客離脱を未然に防ぎ、ビジネスの成功を支えましょう。

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