社会から求められる人材になれる「ボンディングシップ」~CoIU(仮称)ボンディングシップ・アドバイザー 今永典秀
2026年4月に開学予定の新設大学Co-Innovation University(略称CoIU、コーアイユー、いずれも仮称)の特徴と言えるのが、独自のカリキュラムである「ボンディングシップ」です。聞き慣れない言葉なので、実際にどのような学びや経験を得られるものなのか、イメージが難しい方は多いかもしれません。
今回はボンディングシップとは何なのか、その意図や目的、学生に与えるものなどについて、CoIU(仮称)のボンディングシップ・アドバイザーである今永典秀のインタビューをお届けします。
全国10拠点で、学びながら地域課題の解決に取り組む
――これまでの活動やインターンシップとの関わりについて教えてください。
銀行員を経てUターンで名古屋に戻り、不動産業界で働きながら、2012年に社会人と学生が対等な場で関われる市民団体「NAGOYA FOREVER」を立ち上げました。それから大学院で経営学修士を取得し、岐阜大学の特任助教に就任。ここで、初めて本格的にインターンシップに出会いました。
大学で実施するインターンシップは、実務家であった私からみると、擬似体験すぎて、少しおままごとのようなものに感じました。確かに学生にとって学外で実践することで、学生にとっては一定の経験にはなるものの、もう少し、ちゃんと長期間・実践的な内容でインターンシップに参加しないと、学生にとっても良い経験にならず、受け入れる企業にとっても効果が得られず、結果、世の中の役には立たないと感じました。
そんな中、約3ヶ月間の長期間のインターンシップをカリキュラムの中で取り入れている名古屋産業大学からインターンシップの担い手として声が掛かり、大学を移籍することにしました。2021年4月からは、長期のインターンシップを必修科目とする経営専門職学科の専任教員を務め、さらに、大学での長期間の実践的なインターンシップに注力しています。
大学で行っているインターンシップ、あるいは企業の採用向けインターンシップには、以前から課題を感じていました。インターンシップにおいて、実践期間の長さは大きなパラメーターになると思います。しかし、大学では5日程度のプログラムが大半ですし、企業の採用目的のインターンシップは、近年5日以上などの条件が付与されるように変化しましたが、今でも1日・2日などの短期間が大半を占める状況にあります。
これに対し、名古屋産業大学のインターンシップでは、3ヶ月間の長期間で、18単位に及ぶ内容を実施しています。CoIUでは、このように長期インターンシップを単位化している大学での実践経験を活かし、ボンディングシップ・アドバイザーとして関わっています。
――ボンディングシップとは、どのようなものなのですか?
「絆」を意味するボンドと、インターンシップとを合わせた造語です。長期実践型インターンシップをモデルとしていて、学生だけでなく地域や企業も含め、ともに成果を出せるプログラムです。
日本のインターンシップには、いくつもの課題があります。本来であれば、インターンシップの目的は、学生にとってはキャリア教育の観点から、自分のやりたいことや職業適性などを見つける、あるいは、企業側としては、学生と企業のミスマッチを少なくし、入社後の離職率の低下などになるでしょう。
しかし、実際には、学生も企業も、インターンシップに対して、採用に関連するインセンティブが強すぎるように感じています。ですから、他にもっと合った企業があるのにもかかわらず、インターンシップの実施主体や学生が参加する企業が、どうしても知名度が高い大企業に集中してしまう状況にあります。
一方、参加学生の割合が少ない点も課題です。大学では、全体の8割以上でインターンシップが単位化されているのに、学生の参加率は1割にも満たない状況にあります。これは、大学のインターンシップと、学生のニーズとが合っていないからでしょう。学んだことがインターンシッププログラムと合致しておらず、学びを実践で活かし切れないし、企業にプログラムを任せっきりの場合は、個人に合ったプログラムやプロジェクトになっていないことも多くあります。また、1ヵ月以上のプログラムとなれば、全体の1%以下と稀少な状況にあります。
必修化して長期インターンシップへ100人以上が参加できるような大学は限りなく少ない状況にあります。2019年から新設された専門職大学では、長期間の実習・インターンシップが組み込まれていますが、その専門職大学も、現時点では20程度と多くありません。大学で長期のインターンシップを実施するためには地域と連携して、組織的に取り組む必要があると感じています。
CoIUのボンディングシップは、専属コーディネーターや教員も関わりながら、全国10拠点ほどで取り組みます。学生が、学びながら一緒に地域課題を解決していくわけです。地域の課題や社会課題に対して、外部の若者とコラボレーションしながら、共に未来を創っていきます。
変化する社会の中で「欲しい」と思われる人材を育てる
――CoIUでは、どのような流れで学びと実践に取り組むのですか?
理論だけでない実践的な学びを提供する大学は増えていて、大学での学びが変わってきていると感じています。CoIUでは、「共創」を実現するために必要な、「理論」と「対話」と「実践」の往還をコンセプトとします。
主に1年生の間には、「実践」の効果を高めるために有益な、基礎的な知識や技能を習得します。経済や経営、情報といった分野を中心に、地域課題の中で重要なテーマとして、例えばダイバーシティ、サステナビリティ、福祉・介護・医療、防災などを学びます。
座学で「理論」を学び、ボンディングシップで「実践」をすることに加えて、実際に改革を進めたり事業を創造したりするために欠かせないのが、「対話」のスキルです。「対話」には、コミュニケーションに加えて、ファシリテーションやコーディネーション、プロジェクトマネジメント等も含まれます。
このような領域をカバーする多様な教員がいるほか、講義形態もさまざまです。ゲスト講師を招くことや、地域・企業と連携した授業も予定されています。実践経験者からの話を聞くことで、少しずつ地域のイメージがわいてきます。
1年目は、まずは飛騨に集まって、現場体験も行いながら教員と一緒に学んでいただきます。飛騨は人口減少のスピードが速いなど、これから日本の各地で起こりうる課題が顕在化している地域です。だからこそ、1年目はまずは飛騨に集まってもらい、教員や同級生たちと顔を突き合わせつつ、ボンディングシップに向けた基礎的な学びを進めます。
そして、2年生はボンディングシップで地域に赴き、週3日間は地域のプロジェクトを通じて学び、2日間はオンライン授業でプロジェクトに関連した知識やスキルを身につけます。関われるプロジェクトはエネルギーや農業、林業、あるいはスポーツなど多様。3ヵ月ほどは知る・経験することから始まって、少しずつ実践に近づいていきます。座学と実践とが紐づく学びの形は、他にないCoIUの特徴です。
その後、3年生は最初の3ヵ月で、改めてこれまでの学びや経験をおさらい。残り9か月は自分の何やりたいこと、方向性に応じて進んでいきます。地域での理論と実践による、いわゆるサンドイッチ教育ですね。そこに価値があると考えています。
この教育を通じて、学生の方々は「自分が何を学ばなければいけないか」を理解できることでしょう。自分でチャレンジして起業することもできますが、ボンディングシップは安心安全なチャレンジの場です。さまざまな教員や外部の人々と関わることで、未来の可能性を高められます。
そして卒業後は、たくさんの人々との関係性を持った状態から、実践経験で学んだことを融合して勝負できるわけです。濃厚な時間と有益な経験から、いわゆる通常のインターンシップを経験した学生とは大きな差がつくでしょう。
――ボンディングシップは、学生に何をもたらしてくれるのでしょうか?
社会はとても速いスピードで変化していきます。今現在の安定やブランドは、10~20年後に必ず実現できるとは言えません。例えば公務員も勤務地は安定していますが、今後は、今では想定できないようなさまざまな役割を担わなければならなくなるでしょう。あるいは資格を持っていても、それが今後価値を持ち続けるのか分からないし、AIの進化等で仕事が奪われる可能性も考えられます。
CoIUには、「ともに文明を問い、未来を共創する」という建学の精神があります。特定の企業や地域、就職先に限定するのではなく、これからの未来を創る担い手として、部署や立場にとらわれず未来を共創していく人材になること。これが、結果的にどんな場所でも重宝される人材になると言えるのではないでしょうか。
これまでの組織では、そういう“共創人材”が生まれてきませんでした。だからこそ、チャンスがあるし、組織や立場を越境する共創人材が、これからの世の中では大切なのだと思います。社会変化の中で、これまでの旧態依然としたものではなく、本当に世の中で求められる人材になることが求められます。
偏差値偏重の国・数・英・理・社などの5教科の学びだけでなく、非認知能力の向上を目指した取り組み、探求学習、インターンシップ、アントレプレナーシップを取り入れる高校も増えてきました。これは、これからの未来の社会で活躍する人材の養成に対応したものだと思います。50~100年後の未来を想像しながら、すでに顕在化している課題について学生を含めて考え、改善し続けつつ、大学も変化・進化し、共に学び、成長し合っていく。
CoIUでは、プロセスすべてに意味があります。充実した大学の4年間を過ごすことで、実践経験が地域に貢献する共創を目指します。従来からある就活のためのインターンシップは、目的が手段化してしまっていますが、CoIUではボンディングシップを通して、結果として、学生個人のキャリアを切り開くことが期待されます。
もちろん、自己分析や企業分析は大切ですが、どこからでも欲しがられるような人材になることが重要です。CoIUでは地域を越えた発表会なども10拠点で行い、学生の活動を見える化します。また、自主的にも発信して欲しいし、その努力とプロセスによる経験値が企業から「欲しい」と思われ、自分に合った企業が寄ってくることを目指します。
本気で経験したことが自信となり、プロセス自体が他の大学生との差別化になる。自分にとって本当に大切なものが何なのか分かり、関わってくれる人への感謝の気持ちを持てることも、一緒に働きたいと思える要素になるはずです。
個人がやりたいことを見つけ、共に未来を創り上げていく
――最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします。
CoIUでは、やる気や意欲、とにかく自ら飛び込んで吸収しながら学んでいけることが前提だと考えます。それが成長に繋がるし、成長が楽しみになります。逆に、偏差値やテストの点数だけで勝負したい学生には、ちょっと辛い環境かもしれません。
とはいえ、偏差値が高い人を拒否するわけでも、行動的や意欲的な人にしか来て欲しくないわけではありません。CoIUに興味を持った、いろんな人に集まってもらえる場であって欲しいです。CoIUでは全国さまざまな地域を舞台として学び成長していきますが、現時点で特定の地域やテーマに興味のない人も歓迎です。たまに「自分にはやりたいことがない」と卑下する人がいますが、だからこそ大学でボンディングシップに取り組む意味があります。
CoIUでの学びは全体で画一的なものではなく、一人一人に寄り添って個別プログラムを作っていきます。色んな観点から刺激やエッセンスが得られるので、たくさんのテーマの中から、自分の好きなことを見つけてもらえたら。
もちろん、教員もフォローしていきますので安心してください。教員と地域の方々、企業、そして同級生たちと対話しながら、ストレッチしていくようなスタイルです。学生だけでなく教員も含め、みんなで未来を創り上げていきましょう。
お知らせ:CoIU(仮称)夏のイベント情報
Open Campus 2024
対象者:高校2年生、高校1年生
日時・場所:
①【東京】2024年7月28日(日)12:30~16:30 @POTLUCK YAESU(東京ミッドタウン八重洲5F)
②【岐阜】2024年8月4日(日)12:30~16:30 @じゅうろくプラザ
③【オンライン】8月17日(土)12:30~16:30 @Zoom
④【飛騨】8月24日(日)12:30~16:30 @飛騨古川の町全体
詳細・お申し込みはこちら
探究サマーキャンプ『共創サマチャレ』
対象者:高校2年生、高校1年生
日時:(いずれかの日程を選択)
①2024年7月31日(水)~8月2日(金)
②2024年8月9日(金)~8月11日(日)
場所:岐阜県飛騨市(飛騨古川駅周辺集合予定)
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