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CoIU(仮称)オープンキャンパスレポート①|何を学び、どう成長できるのか。

2024年7月28日(日)、東京ミッドタウン八重洲にあるPOTLUCK YAESUでCo-Innovation University(仮称、通称 CoIU)のオープンキャンパスを開催しました。当日は高校生や保護者の方々にご参加いただき、大学説明や模擬授業、そして学長候補の宮田 裕章と副学長候補の髙木朗義による対談も実施。その様子を、2回に分けてレポートとしてお届けします。まずは、大学説明と模擬授業についてご覧ください。

学校説明

まずは副学長候補の髙木から、大学説明を行いました。髙木は政策評価や総合防災、都市地域計画等のまちづくりを専門としており、最近ではeXplanable AI(説明可能なAI;XAI)を活用した避難行動分析の研究などに取り組んでいます。

目指すのは多様な地域課題を解決できる人材の育成

「超高齢化社会」「AIに仕事を奪われる」「失われた30年」など、世間ではネガティブなワードをよく耳にします。しかし、そうではなく、大切なのは自分たちがそれぞれの幸せを実現すること。経済合理性を突き詰めていくのではなく「次なる豊かさ」を模索する時代であり、これからの社会では新しい未来を共に作る“共創”(Co-Innovation)がとても重要であり、CoIUが共創学部の設置を目指している背景を説明しました。

地域から、世界に繋がる未来を共創する。例えば東京都も一つの地域であり、地域という単位でとらえれば、独自課題はあるものの解決方法には共通部分があるはずです。そういった部分をCoIUで磨き、どの地域に行っても課題解決できるような人材へ育って欲しい。そうした思いの上で、髙木はCoIUと他大学との違いについて次のように話しました。

「もちろん、ある程度の専門知識・技術は必要です。しかし、主な大学で学ぶのは1~2分野でしょう。これからは、特定分野に特化した専門性を磨くより、既存分野の専門性を上手くコーディネーションして、地域に合った課題解決を行うことが求められます。近年であれば、防災、医療福祉、交通モビリティ、教育、文化・アート、自然などの必要性が高まっています。
それらの専門領域について理解しつつ、各地域課題に対して必要な専門領域の知識や技術を上手く組み合わせて解決できる人材を育成していきたいと考えています。」

具体例として、飛騨における樹と水で作る脱炭素社会への取り組み、そして、体験価値を共鳴させるまちづくりについても紹介。まちづくりにおいては、飛騨古川駅付近に複合施設を開発中であり、その中にCoIUのキャンパスも入る予定です。

キャンパスについては、他にも古民家をリノベーションした場所を活用し、街中キャンパスでの取り組みを想定していることを説明。既存の大学とは異なる点を知り、参加者の方々もイメージを膨らませながら話をお聞きくださっていたようです。

CoIUの学びの特徴

CoIUでは対話、経済・経営・法律、IT・DX、アート・デザイン、防災・社会基盤、地域産業、サステナビリティ、行政・政治、社会学、医療・健康など、さまざまな専門領域を持つ基幹教員の配置を予定しています。
これらすべてが共創学の領域であり、その定義は必要な学問分野を横断・融合し、地域の未来を共創するために必要な地域課題や社会課題の解決を目指す学問です。これを踏まえ、髙木はCoIUにおける学びの特徴を2つ取り上げ、次のように説明しています。

「まず、CoIUでは理論と実践に対話を加えています。理論は実践しないと習得できないし、使えるようにしていかないと意味がないでしょう。例えば、いくら自転車のマニュアルを見たところで、実際に乗れるようにはなりません。
対話は単純なコミュニケーションではなく、地域課題を解決するためにはプロジェクトマネジメントしなくてはいけないし、色んな人と取り組むためにコーディネーションやファシリテーションも必要になります。スタンフォード大学のデザイン思考が注目されていますが、CoIUでもそういうプロセスを学びます。聞いて分かるものではないので、それを体得するために、理論だけでなく実践していくわけです。」

目的が分からないまま知識を習得させて社会に出ていけば、後になってから『このことか』と分かるものです。しかし、これはスポーツで言えば、目的も分からず筋トレしているようなものでしょう。例えば野球なら、バッターとピッチャーとで必要な筋トレは違います。ですから、一人一人と対話しながら、それぞれに必要なものを明確にして学んでいく。この点が、学びの中に対話を加えている理由です。

「CoIUでは日本全国が学びの場です。現在は全国13か所に地域拠点を設置予定ですが、今後さらに増やすことを考えています。自分が興味を持った地域や、あるいはプロジェクトに携わって実践していく。1年生は全員が飛騨に集まって、対話の基礎技術を飛騨にある課題解決に携わりながら体得します。これは基礎的な技術のほか、仲間づくりや周囲に支える人がいるという安心感を得るための機会でもあります。

2年生は半年ごとに全国の地域拠点の30~40プロジェクトの中から、学生たちが興味関心のある地域とプロジェクトを選択して、ボンディングシップとして取り組みます。2年生までは、教職員側がプロジェクト設計した中で学びの機会を提供しますが、3年生は学生自身にマイプロジェクトを立ててもらうつもりです。教員が立てたマイプロジェクトに参画することも可能ですので、自分のマイプロジェクトを立てられなくても安心してください。教員自身も実践者であり、イノベーションを起こせる人材でありたいと思っています。」

ボンディングシップは『bond(絆)』と『internship』を組み合わせた造語。インターンシップと聞くと就活のイメージが強いですが、CoIUでは実践型長期インターンシップとして取り組む学びの場です。

地域に出て取り組むと聞くと、周囲に誰もいないのではないかと不安に感じる方がいるかもしれません。しかし、担当教員の多くは日本全国に散らばっていますし、各地域では地域コーディネーターも配置されています。また、地元の企業や自治体、地域の方々、キャリアコンサルタント、そして同期とはオンラインで繋がることができるため、安心して学べる環境が整っています。

どこでも活躍できる人材になる

最後に髙木から、入試や入学後の学生生活、卒業後のキャリアについても説明しました。

「入試については現時点ではまだ確定したことが伝えられませんが、定員の9割を総合型選抜入試とする予定です。高校までの経験に基づいた事柄や興味・関心のある事柄、それらに取り組む主体性・協調性・多様性などを、書類審査や面接、グループワーク等から見ます。
また、飛騨ではアパートを新築しますし、全国地域でも必要な家具・家電等を揃えた住居を提供する予定です」。

入学するうえでは、やはり卒業後のキャリアが気になるところでしょう。大学で学んだことを、どのように活かすことができるのか。これについて、髙木は次のように話しました。

「私はCoIUで学ぶ学生の皆さんは、何者にでもなれると思っています。なぜなら、地域課題を解決できる力があれば、どこでも活躍できるはずだからです。具体的に言えば企業への就職はもちろん、起業や事業継承という選択肢もあるでしょう。あるいは、地域課題解決の担い手として、行政やNPO法人などへの就職も考えられます。この点は教職員のほか、キャリアコンサルタントもサポートします。」

CoIUでは教員を“先生”と呼ばず、「〇〇さん」と呼ぶことになります。教員も学生もフラットな関係であり、その中でお互いに成長していきたいと考えているからです。場所を問わず必要とされる、そして活躍できる人材への成長を得るために、CoIUは学びの環境づくりに取り組んでいます。

ボンディングシップの説明

続いて、大学説明でも話に挙がった『ボンディングシップ』について、キャリアコンサルタントの棚瀬規子から説明致しました。CoIUでは大学で学ぶ理論と実践とが結びついています。

ボンディングシップの3つの特徴

ボンディングシップの特徴は、「カリキュラムとの連動」「段階的なプログラム設計」「品質を担保する基準の共通化」という3点です。

「CoIUでは、22単位がボンディングシップに当てられる予定です。週の一定時間を受け入れ機関と連携したプログラムに当て、週3日はボンディングシップに取り組みます。
もちろん、いきなり長期で地域に飛び込むのはハードルが高い、あるいは何を学べばよいか分からないという方もいるでしょう。ですから、知る→興味を持つ→自覚を持つ→課題解決→達成という段階的なプログラムを用意します。まずはライトな研究分野から、基礎的な技術を身に付けていってください。

私たちは、全員が同じように質の高いボンディングシップを経験できるよう、環境を整えることが大切だと考えています。そのために、地域の連携機関と一緒に、品質を保証するための基盤や基準を作っています。
地域の企業・団体・自治体とCoIU、双方の資源を繋ぐ人材も配置するほか、各地域で統一した学びのツール(日報、プロジェクト設計シート、評価シート、実習管理スケジュール)を用意する予定です。」

具体的な実践カリキュラム例として、岐阜県大垣市にある伝統的な枡を製造する企業、北海道北広島市の北海道日本ハムファイターズ、そして岐阜県飛騨市で関係人口を増やすための取り組みである飛騨市ファンクラブが紹介されました。いずれも学生が自らの興味や学んだ専門分野を活かして取り組んだ事例であり、CoIUでの学びがイメージできたのではないでしょうか。
また、岐阜県各務原市での事例も取り上げましたが、こちらは芸術系の大学生が自ら自分の研究テーマを持って活動した内容であり、CoIUで3年生から取り組むマイプロジェクトに近いものでした。

模擬授業でのワークショップ

オープンキャンパスの最後に行われたのが、基幹教員候補の国保祥子による模擬授業です。学生や保護者のほか、髙木や棚瀬をはじめとした大学側も参加して、ワークショップを行いました。

ワークショップのテーマは『「日本まるごとキャンパス」でできること』。まずは関係性を深めるため、一人ずつ自分が呼ばれたい名前と好きなことを自己紹介。その後、2つの班に分かれて、「日本まるごとキャンパス」で何ができると思うか、それぞれが考えた内容を3分間でポストイットに書き出していきました。

続いて、書き出したポストイットを各自が発表しながら紙に貼っていきます。実に多様なアイデアが出され、どんどんテンションが高まっていくのを感じました。自分とは異なる考えを持つ人たちの意見は、さまざまな気付きや刺激を与えてくれるようです。
学生や保護者の方々も、初対面とは思えないほどお互いの距離感が近づき、本当に大学のゼミで意見を交わし合っているかのような雰囲気でした。短い時間ではありましたが、CoIUにどのような学びの形が待っているのか、感じ取って頂けたのではないでしょうか。

なお、オープンキャンパス@東京ではこの他に、学長候補 宮田裕章と副学長候補 髙木朗義による対談も実施されました。対談については別記事で詳しくご紹介しますので、そちらをご覧ください。

編集後記
学校説明等を終えてからのワークショップには、皆さん初めて顔を合わせたとは思えないほど近い距離間で取り組まれていました。学びというと難しくとらえられがちですが、CoIUにおける学びの楽しさを実感されたのではないでしょうか。参加者からは「これまでイメージしていた大学での勉強と違っていた」という声もあり、CoIUについて理解の深まる場になったようです。

執筆/三河賢文
2005年8月(大学在学中)より、フリーライターとして活動を開始。大学卒業後は会社員として営業や企画職を経験し、2010年6月に個人事業主として独立。2013年4月に法人化してナレッジ・リンクス株式会社を設立し、代表取締役に就任。現在はライターや編集者として、スポーツ、ビジネス、IT、教育、ライフスタイル関連を中心に活動中。また、陸上競技経験を活かし、地元でランニングクラブを運営している。4人の子を持つ“大家族”フリーランス。