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CoIU(仮称)オープンキャンパスレポート②|学長候補・宮田裕章×副学長候補・髙木朗義対談

2024年7月28日(日)に実施したCo-Innovation University(仮称、通称 CoIU)では、学長候補の宮田裕章と副学長候補の髙木朗義による対談が実施されました。CoIUの設立に向けた思いや背景、そして目指すものなど。逆に参加していた高校生に宮田が質問を投げかけるシーンもありました。

地域拠点と連携しながら実践の中で学ぶ

髙木朗義「そもそも、なぜCoIUを創ろうと思ったのか教えてもらえますか?」

宮田裕章「教育の在り方が根本的に変わってきました。生成AIが出てきて、知識習得のウェイトが低くなってきています。ですから、日本も教育自体が変わらなければいけなくなっていると思うんです。海外にある一流のボーディングスクールは、相当お金のある人しか入学できません。私は富裕層の選ばれた人たちだけの経済を作るのではなく、多くの人たちの未来、そして幸せを作りたいと考えています。
大学の4年間は、少し前までモラトリアムとして位置づけられてきました。もちろん、その意味合いも大切なのですが。それでも、生涯楽しみながら学ぶうえで、実践経験にもっと早い段階で取り組まなければいけない状況に変わってきたのではないでしょうか。」

髙木朗義「卒業後も大学に関わりを持ってもらいながら、社会を変えていく取り組みをしていきたいですね。」

宮田裕章「日本において大学に関わるのは、これまで18~22歳くらいまでというのが大半でした。これは、人生における数年に過ぎません。しかし、これから社会全体が大きく変わっていく中では、個を起点にしながら、兼業・副業などもありつつ学び続けることが必要ではないでしょうか。何らかの形で、大学との関わりを保ちながら学びを続けていく。これが、全世界的に標準になってきていると思います。ですから、社会との接点の中でコミュニティを作っていくわけです。」

髙木朗義「高校でも探究学習などが広がっていますが、それを継続するための大学は、あまりありませんね。」

宮田裕章「CoIUが新しい取り組みを行い、それが良いものであれば、他大学もその要素を取り入れていくことはできるでしょう。しかし、いろんな地域の拠点と連携しながら実践するのはCoIUのユニークな部分です。ですから、他の大学やコミュニティとも協力して、未来に繋げていくことは、CoIUのミッションだと考えています。」

他地域と連携しながら多様な実践を実現できる場

髙木朗義「メインキャンパスを飛騨に置くことには、どのような意義があると考えていますか?」

宮田裕章「最初は地方だけという視点もありました。それでも意味はあるのですが、地方ではなく地域という言葉を使っています。都市にも地方にも良さはあるものの、それを対立軸でとらえて地域を作りがちです。しかし、同じ軸で戦ったところで、地方に勝ち目はありません。超巨大な都市化がある一方、地方がそれにあらがえる巨大な魅力を作れるかと言えば答えはNoです。今までできなかったこと、使えなかった要素を使うことが、未来を作る要因になります。

飛騨は過疎化が進んだ地域でありながらも、いろんな地域とネットワークを張って未来を作っていこうと取り組んでいます。しかし、そこで作ったものを飛騨だけに閉じたら意味がありません。ですから、他地域と連携した中で実践していくことが大切です。」

髙木朗義「昨今は地方で、インバウンド観光などで盛り上がっているケースもありますね。」

宮田裕章「インバウンド観光については、海外の人たちが日本にどんな魅力を感じているのかも手掛かりの一つです。例えば飛騨を訪れていたとして、飛騨だけが好きという人はなかなかいません。例えば直島が好きという場合でも、そもそもアートが好きだからいろんな場所を巡り、その中に直島があるわけです。例えば家具が欲しいとして、興味のある人は買うだけでなく、職人さんを訪ねて一緒に家具を作ってもいいじゃないですか。さらに興味があれば、森に入って自ら木材を自ら見つけても構わない。飛騨では、そういう取り組みが可能だと思っています。」

フラットな関係で繋がりながら共に未来を創っていきたい

髙木朗義「どんな生徒に入学して欲しいですか?」

宮田裕章「CoIUの理念に共感し、一緒に未来を創りたいという思いさえあれば一緒に取り組んでいけるでしょう。もちろん、中学・高校で関連した学びを得てきた経験があれば、高く評価したいとは思っています。身の回りとの繋がりの中で、どのような問いを立ててきたのかという体験を大事にしてもらいたいです。
ですから、CoIUでは生徒との対話の中で、新たなプロジェクトや拠点、繋がりを作っていきたいと考えています。共創においては、学生と教員の関係性もフラットです。学生の感性から学ぶことも非常に多いし、私たちにとって気付きもある。それが、共に学ぶということです。」

髙木朗義「それでは卒業後、どんな人に成長して欲しいと考えていますか?」

宮田裕章「いろんな人たちと関わりながら、共に未来を創れる人になって欲しいですね。そういう人材が、今まさに社会では求められていると思っています。自分の好きなことに夢中になることができ、かつ、他者にとって大切なことを理解できることが大切ではないでしょうか。
これからは、まずます肩書で判断される社会ではなくなっていきます。だからこそ、大学の中で何に関わり、夢中になれたか。そして、どういう繋がりを作れたのかが問われると考えているわけです。個性を活かしながら一緒に伴走するスタンスが、卒業後もさまざまな形で通じていくと、双方にとって良いのではないかと考えています。」

髙木朗義「何に興味関心を持つかも変わっていきますから、そういうタイミングも含めて繋がっていければ、次のステップに進むときも関わりを持つことができますよね。」

宮田裕章「自分の大事なものを見つめていくことも、意欲や好奇心を育むうえでは大切です。しかし、今は心地よいものだけを見るようになっている気がしています。自分が合わないと思ったもの、違和感のあるものと向き合うことも、実はとても大切なのではないでしょうか。その中に、もしかしたら可能性や気付きがあるかもしれません。
問いの質が高ければ、例えその瞬間に交わらなくても、将来的に重要な繋がりとなります。企業や行政に入ると役割が強くなり、利益相反が強くなってフラットな交流が難しくなるものです。だからこそ、アカデミアで守秘義務を一定まで下げて対話することは、それ自体が継続的な学びに繋がるでしょう。在学中だけでなく、生涯にわたる学びを支えていきたいですね。」

参加者からの質疑応答

対談の場では質疑応答の場が設けられ、参加者からもさまざまな問いが投げかけられました。その一部についても、回答と共にご紹介します。

――社会の中で実践しながら経験を積む際、どこまで学生が主体的に関われるのかハードルが高い気がします。サポート体制など、もう少し詳しく聞かせてください。

宮田裕章「単にプロジェクトに引き合わせるだけでは、関わりづらいと思います。そうならないような関係づくりも含めて企業側の状況設定をしつつ、学生それぞれが何に関心を持っているのか、あるいはそれが明確になっていない場合も含め、どういうプロジェクトにどんな立ち位置で入るのか、一人一人に合わせたサポートをできる限り行っていきます。学生数も多くありませんし、これはCoIUならではの特徴だと考えています。」

髙木朗義「教員あるいは地域のコーディネーターがメンターとなってサポートしたり、将来を考えるうえでキャリアコンサルタントが一緒に考えたり。伴走支援しながら、安心して挑戦してもらえる体制は構築していきます。」

――地域や文化、自然、コミュニティと共感した人材育成が不可欠だと思います。大学名に込められた “Innovation”について、もう少し深堀したお話を聞かせてください。

宮田裕章「情報革命以降、新しい価値をデジタル共有して社会を回せるようになりました。このとき何が変わるかというと、繋がりながら人々を幸せにできるかどうか、新しい豊かさを価値として定義し、そこにビジネスを仕組みとして回せるかどうか、それができる人たちがリーダーとなって世界を変えていく世の中になったわけです。
新しい価値を作る、新しい価値を共に作ることが、これからの社会における学びであり、働くことや生きることでも大切になります。この点を本質として掲げたい、実現したいという思いから、Co-Innovationという大学名にしました。

コミュニティの中の価値観を繋げて、それが新しい価値を生み出す要素は大きいと思います。例えば直島は、アートという観点を通じて世界中に繋がる成功例でしょう。日本に閉じるのではなく、グローバルの中で常に自分たちのネットワークを作り続けることも重視していきたいと考えています。」

髙木朗義「共創は通常ならCo-Creationと訳されることが多く見られます。しかし、私たちは生徒たちと一緒に世界の仕組みを変えていきたいので、それならCreationではなくInnovationだと考えて大学名にしました。また、特にCo、つまり共にという部分を大切にしたいという思いがあります。」

編集後記
質疑応答の場では、逆に髙木さんから参加されていた高校生に質問が投げかけられるシーンもありました。2026年の新設に向けて、今もなお学生側からの意見も取り入れつつ、最適な形を創りあげようとされているのが分かります。さまざまな地域というフィールドの中、実践を通じて得られる学び。どのような学生が集まり、そして4年後にどのような成長を遂げるのかが非常に楽しみです。

執筆/三河賢文
2005年8月(大学在学中)より、フリーライターとして活動を開始。大学卒業後は会社員として営業や企画職を経験し、2010年6月に個人事業主として独立。2013年4月に法人化してナレッジ・リンクス株式会社を設立し、代表取締役に就任。現在はライターや編集者として、スポーツ、ビジネス、IT、教育、ライフスタイル関連を中心に活動中。また、陸上競技経験を活かし、地元でランニングクラブを運営している。4人の子を持つ“大家族”フリーランス。