友人と野草
あいつはもういない。
死ぬ事と二度と会わない事にそれほどの違いはない。
「おう、また近い内に飲もうや!」
とか言って絶対にそれが実現しない相手がある時急に死んだとして、それを知らなければこのセリフの時の気持ちのままだ。
そいつが死んだと聞いたとして、結局さほどの違いはない。
とっちが死んだのを知ったのは死んで何年も経ってからだし、偶然その時その話を聞かなければおれの中のとっちは生きているまま。
野山を駆け巡るのが好きだったあいつももういない。
名前はなんだったっけ?
まあほんとは忘れるはずもないけど。
なかなかないよな、食中毒死。
そんでそれがあいつの死因だった。
あいつがいつもいつも手放さず持ってた本をおれは知ってる。
「食べられそうな野草」