1か月後に会社を去る部下について思うこと
部下が2人、退職することになった。
考えてみると、チームを任されるようになってから、直属の部下が会社を去るのは初めてだ。何かの役に立つわけではないだろうけれど、今感じていることを率直に残しておきたいと思う。
人生を左右する決断をしたことへの敬意
感心している場合では全くないのだけれど、退職の意向を聞いたとき、自分より年下の彼女らが、「会社を辞める」という大きな決断をしたことが純粋にすごいと感じてしまった。
私自身は社会人になってから「退職」を経験したことがない。
辞めようかと思ったことは何度かあったけれど、結局のところ、勇気がないのだと思う。新しい環境に飛び込んで、一年生からやり直す勇気が。
だから、慣れた環境を手放すという、私が経験したことのない、とてつもなく大きな決断をやってのけた彼女らのことが、何だか人生の先輩のように見える。
「辞めたくない」と思える場所にしてあげられなかった
偶然にも彼女らは家庭の事情で退職することとなった。気を遣ってくれているのか、口をそろえて「会社や仕事に不満があったのではない」と話してくれた。「家庭の事情」という言葉は、慰留の余地を与えない、パワーワードだ。
仕事と家庭をそれぞれどの程度重視するかはもちろん人それぞれだし、彼女らの決断を責めることなんてできない。もしかしたら、私には言わないだけで、泣く泣く今の環境を手放す決断したのかもしれない。
だけど、2人にとって、今の会社は「絶対に続けたい」と思える場所ではなかった。そういう場所にしてあげられなかった。辞めることを決めた後の事後報告を受けることしか、できなかった。寂しいし、不甲斐ない。
残りの時間をどう過ごしてもらうか
有休消化を控えた彼女らと一緒に働けるのも、あと1か月弱。
退職の意向を伝えられたのが幻だったのかと思うくらい、これまでと同じように仕事をしてくれている。別れると決めた同棲カップルが、すぐに別々には暮らせないのと同じように、猶予期間を過ごしている。
2回の転職経験を持つ夫は、退職の意向を伝えてから最終出勤日まで、はたから見ても完全に消化試合のような仕事ぶりだったから、これまでと変わらぬパフォーマンスを発揮してくれる彼女らが、いかにできた人間であるかを思い知らされている。
残された期間はわずかだけれど、きっと私が言うまでもなく、最後まで職務を全うしてくれるだろう。だからこそ、私も甘やかすとかではなくて、少しでも「この会社で働けてよかった」と思える経験をさせてあげたい。
それが、この会社を選んでくれた彼女たちに私がしてあげられる、最後の仕事だと思う。