いったい、僕は何と戦っているのだろう。 ちょっとだけ弱音をはく。 「社会を変える」のラスボスについて
今回は、誠に情けないですが、ちょっとだけ弱音をはかせてください。端的にいうと、現在取り組んでいるソーシャルアクションが苦境に陥っているのです。
私たち認定NPO法人フローレンスは現在 #保育教育現場の性犯罪をゼロに を掲げて活動しています。具体的には、保育・教育現場で働く人に「無犯罪証明書」の提出を義務化すること(=日本版DBS)を政府に訴えています。
ベビーシッター、保育士、そして教師らによる、児童への卑劣な性犯罪が後を断ちません。諸外国では、子どもと関わる仕事をする人は、例えボランティアであっても、無犯罪証明書の提出が法的義務となっています。日本でも、いよいよ待ったなしだと思うのです。詳しくはこちらのnoteをぜひご一読ください。
まずは社会に対してこの問題を認知してもらうため、記者会見をやりました。弊会代表の駒崎だけでなく、被害児童の保護者、そして現役ベビーシッターの方もご登壇され、当事者の立場から日本版DBSの実現を訴えました。
ネットの枠を超えて、全国紙、テレビ等でも本件を取り上げて頂きました。その後、森まさこ法務大臣、橋本聖子内閣府特命担当大臣(男女共同参画)に、意見書および2万件を超える署名をお渡しもしました。両大臣とも真摯に話を聞いてくださいましたし、心強い応援も頂きました。
本件にご賛同くださった多くの人の想いは、確かに政治に(それも中枢に)届いたし、私もすごい手応えを感じていました。これはいける、と思いました。
ところが、制度の実現に向けて具体的な話に入ると、雲行きがどんどん怪しくなってきたんです。
もともといくつかの「できない理由」はわかっていたし、それは議員・官僚各位に相談したり、あるいは専門家にお話を伺ったりすることで乗り越えてきました。「いや、それできるやん!」と。
ところが、乗り越えても乗り越えても、また別の「できない理由」が目の前に立ちはだかります。こんな具合に。
憲法22条の「職業選択の自由」に反する
↓
加害者の個人情報保護の観点から難しい
↓
実際に制度を運用することが難しい
↓
平成6年にこれ以上名称独占資格を作らないという閣議決定がされているから難しい(ベビーシッターを登録制にするのが難しいということに)
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刑法の縛りがあって難しい(第34条の2) ← 今ここ
でもまあ、これはまだいいです(よくないが)。またみんなで乗り越えればいいだけだから。それよりも個人的にキツイと感じるのは、いったい誰と戦っているのかよくわからないことです。
例えば、本件に対して鬼の形相で猛反対する政治家や官僚がいれば、対話を繰り返したり、色々知恵を絞ることでどうにかなるかもしれません。闘志も湧きます。とりあえず、やるべきことは明確になるでしょう。でも、そういう人が見当たりません。どんなに奥に分け入っても、出現しないのです(認知できてないだけかもだが)。「きみぃ!こんなふざけた制度は絶対に許さんぞ!」が、ない。
あたかも、ボスキャラがいないロールプレイングゲームをやらされているような感じです。いったい、どうしたらクリアできるかわからない。こんな酷いゲームあるかと。
ああ、この気持ち、どう表現したものか… と思っていたら、なんと為末さんが2万%言語化してくれてて驚きました。
社会問題の解決に取り組む友人を見ていると、映画のヒーローのように強大な敵に立ち向かっているというよりは、複雑に絡まった糸を解きほぐすように、関係者の思いと、歴史と、利害を調整していく延々と続く根気がいる作業に見えた。これだったらまだどこかに巨悪がいた方がわかりやすいと思うぐらいに。
これ。本当にこれですよ。デスピサロでもミルドラースでもエクスデスでもセフィロスでもいいから出てきて欲しい(戦えるレベルで)
でも、ここにもうひとつ付け加えたいというか、ちょっと別の表現になりますが、私は社会の慣性の法則を強く感じています。過去の流れから、ある方向に社会が動いてしまっているイメージです。坂を転がる鉄球の進路は、転がした本人たちでさえ容易に変えられません。
私たちが必死に「こっちです!!」と叫び、鉄球を転がした人たちも「いいね〜」と遠くで言っている。でも鉄球はどんどん転がり続けます。それが例え、誰も望まぬ方向であっても。
私たちにできるのは、鉄球にダッシュで追いつきながら、小さな石ころを進路に置いて、そしてまたダッシュして、こけて、またダッシュして、進路に石ころを置いて、と、少しづつ、少しづつ、方向を修正することです。
キツイけど、やるしかない。社会を変えるって、こういうことなのかもしれないなと。最近、思うようになりました。
(まあ、転がる鉄球の中でハンドルを握っている人たち(=官邸)にはもうちょっとちゃんと運転してよ!と物申したいところですけども)
ただ、私たちの闘志はまったく萎えてなんかいません。
今回のソーシャルアクションには、本当に多くの方からメッセージをいただいてます。中には、子どもが性被害にあった親御さんからのものもあります。そこには、本当に切実な「子どもたちを守ってほしい」という想いが綴られています。
社会の仕組みが整っていないせいで、子どもたちが傷ついています。しかもそんなことは誰も望んでいません。なのに、なにもできない。そんなバカげたことがまかり通っています。誰も望んでないことなら変えようよと世界の中心で叫びたい。
今回は弱音をはいてしまいましたけども、私たちは引き続き頑張ります。絶対に諦めません。
誰と戦っているのかはやっぱりよくわからないけれど、子どもたちの為に戦っていることだけは確かなのだから。
【後日追記】 その後の展開
「社会の慣性の法則」によって転がり続ける鉄球の進路が、変わる瞬間がやってきました!
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