
わたしはねこなの
わたしはねこなの。
ひとりぼっちで泣いているところを、おねえさんに見つけてもらった。
そこはうるさくてせまくて、でも外にはひとやくるまがたくさんいて、こわくて出ていけなかった。
おねえさんがおいしいご飯を食べさてくれようとするのだけど、あまり食べられなかった。
おねえさんがわたしに食べさせようとしてくれていたのは、今だったらちゅーるだって分かるんだけどなぁ。
わたしがいたところは、ジドウハンバイキっていう大きなキカイの下だったらしいの。おねえさんがいろいろなカリカリやちゅーるを持ってきてくれて私を捕まえようとするんだけど(保護するっていうらしいの)こわくてしかたなかったの。
そこに、おばちゃんがやってきて、おねえさんと何か話していたの。おばちゃんもわたしに何か話しかけてくれたけど、やっぱりこわかった。おばちゃんはおねえさんと話をしていなくなってしまった。
そのあともおねえさんはわたしを捕まえようとしたけど、こわいんだもん。ジドウハンバイキの下で小さくなってかくれていたの。
しばらくして(おねえさんは「2時間がんばりました」ってママに言ったらしい)、赤いおおきな車に乗った、オレンジ色のおようふくのおにいさんたちが来て、わたしをうるさいジドウハンバイキの下から助けてくれた。オレンジ色のおようふくのお兄さんたちのこともはじめは怖かったけれど、わたしが保護されたらお兄さんたちも「よかったねー」ってすごく喜んでくれたの。
助けてもらって、おねえさんにだっこされて少し安心したの。それから、おねえさんのおうちにいったの。
そこではお風呂に入れてもらったの。とても気持ちよかった。
そのおうちにはわたしよりずっと大きな猫さんがふたりいたの。わたしはここのおうちで暮らすのかと思ったのよ。
つぎのひ、おねえさんの車でお出かけしたら、きのうのおばちゃんがいたの。おばちゃんはおねえさんがわたしを保護したら、わたしを引き取るって言っていたらしいの。だからわたしは、おばちゃんのおうちに行くことになった。
そのおばちゃんが今のわたしのママ。
車の中でママにたくさんお話ししたの。
こわかったこと。
おおきなくるまのお兄さんたちにたすけてもらったこと。
お風呂に入ったこと。
おいしいごはんを食べたこと。
おねえさんのおうちのねこさんのこと。
ママは「そうなの-」って聞いてくれたの。
「優しいおねえさんに見つけてもらえてよかったね」って言ってた。
家に帰る前、病院っていうところに行ったの。わたしが元気かどうか、しらべるところらしいの。いたいところや、かゆいところがないかセンセイがしらべてくれたの。ムシをやっつけるおくすりをつけてもらったのよ。
ママのおうちにも、ふたりの大人の猫がいたの。とーっても大きな白黒のはちわれのおにいちゃんと、きれいな灰色のしましまのおねえちゃん。
すこしのあいだ、おねえちゃんやおにいちゃんとは別のお部屋にいることになったの。わたしがびょうきだといけないからなんだって。
すこしして、びょういんでケツエキケンサっていうのをされたの。いたかったけどがまんしたのよ。
びょうきがなかったので、おにいちゃんとおねえちゃんとおなじお部屋ですごすようになったの。
そのあとも、おちゅうしゃで病院に行ったし、シュジュツでも病院に行ったの。
シュジュツのあとは、おようふくを着ていたの。ねこのししゅうのある、きいろいおようふく。ママがすごくかわいいってほめてくれたから、おきにいりのおようふくなの。
でも、ひとつだけ気に入らないのは、おようふくをぬいだらおなかにハゲがあったこと。どうして?おんなのこのおなかにハゲってどういうこと?
病院のセンセイはとってもやさしくてすきなんだけど、そこだけ気に入らない……。
それから、ずっとこのおうちで暮らしてるの。
おにいちゃんと追いかけっこをして遊ぶのはとっても楽しい。
廊下で三角飛びもするの。忍者みたいでしょ。
ママは「やめて~」って言ってるけど。
おねえちゃんとは追いかけっこはできないけど、少しお話をするの。
おねえちゃんはもう少しで18歳になるんだって。
このおうちに前にいた猫さんの話もしてくれるの。
いろいろなねこさんたちがこのおうちでくらしていたみたい。
おねえちゃんはママたちとたくさんおはなしができるの。
「おはよう」がとてもじょうずだし、ちゅーるや、にゃんスプーンをママにおねだりするのもじょうずなの。抱っこしてもらうのも得意みたい。
私はまだ1歳だけど、大きくなったらおねえちゃんみたいに頭のいい大人の猫になりたいな。
ママがブラシをしながら「あなたの毛はふわふわねぇ。かわいいかわいい、さび猫ちゃんね」って言ってくれる。
ブラシは好きだけど、つめきりは大きらい。パチンってなるのがいやなの。でも、ママとパパががんばってるから少しだけがまんするの。
お水で遊ぶのは好き。お風呂はちょっときらい。
ママはときどき「どうしてたった一人であんな車どおりの多い駐車場にいたのかな~?」って言うんだけど、それは私にも分からない。覚えていないの。気がついたらジドウハンバイキの下にいて、こわくて泣いていたの。誰かに連れてこられたような気もするし、ひとりになるまえはほかの子と一緒だったような気もするし……。
でも、もうそんなことはどうでもいいかなって。
だって、今はこのおうちでママやパパやおにいちゃん、おねえちゃんと一緒にいるから。
いつもいっしょで楽しいし、こわいことも、もう何もないし。
まあ、おちゅうしゃと、かみなりはちょっとこわいけど。
わたしの名前は「まお」
ここがずっとのおうちなの。
「おはよう、みんな」
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