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バーチャルファッションと未来のアパレルの可能性

※今回は1年前のちょうどこの時期に書きたいと思ったことをあらためて書いてみました。コラム的な何かに初挑戦です。個人の想像であり、都市伝説ではありません。

バーチャルファッションについて

2019年頃から徐々に、また2020年パンデミックで勢いを増し、バーチャルファッション/デジタルファッションという言葉をたくさん見かけるようになった。人と会えない、外出できない環境の中、ゲームやコレクション、SNSなどで確実に存在感を強めている。またものづくりのサプライチェーンがこれまで通りに動かない、世界的なSDGsの波なども相まって、物理的に存在しないバーチャルファッションは ”究極のサスティナブル” といった文脈で目に耳にすることも増えている。CLOなど3DCAD/CGツールがどんどん進化していることもあるだろう。

そんなバーチャルファッションの定義を改めて考えてみる。バーチャル(仮想)空間やデジタルの世界にのみ存在する衣服——物理的に存在しない服や宝飾品を用い、自分に似たアバターやそれ以外の身体的な何かに着せて楽しむファッション——というようなニュアンスだろうか。少し自信がない。私はリアルなファッションを作っていたし、ゲームもしないので正直想像できないだけかもしれないが、一方でバーチャルファッションを楽しむことによってリアルのファッションへ循環するというムーブも起きていて、おもしろくなりそうだと感じている。

そんな中、2018年初夏にとある方々と未来のアパレルについて話したことを思い出していた。

2018年初夏、Aさんとの話

2018年の初夏、私はとあるAIファッションテックベンチャーに在籍していた。そこで一緒に働いていたファッション好きのとても頭の良いAさんに、ある日突然こんな質問を投げかけられたのである。

「人類が全身タイツのような衣服を身に着ける日が来るのはどれくらい先だと思いますか?何らかの快適な繊維でできた動きやすくて温度調節とかできて外敵から身を守れるような、なんでもいいんですけどストレスにならないウェア・・・」

・・・???

全身タイツ・・・???

その質問に対し、私は間の抜けたリアクションをした気がする。それまで全くそんなことを考えたことがなかったからだ。

「うーん・・・(100年後とかならそんな質問しないか・・・)早くて30年後とかですかね・・・?」

少し考えてなんとなく出した私の答えに、Aさんがこう回答した。

「早いと10年、いや7-8年後の可能性は全然ありますよ」

盛大に驚く私。Aさんはこう続けた。

「もし第三次世界大戦など有事が起きて人類の数が相当数減少したら、その可能性は充分にあります」

その後、Aさんに論理的に説明をされたような気がするが、あまり覚えていない。その話は自分にない視点だったのでとても興味深かった。が、その会社に入る前までアパレル製品を生産する側だったこともあり、"洋服を着てファッションを楽しまない世界の訪れ" が思ったより近い・・・かもしれないということが正直とてもショックだったことをよく覚えている。
(Aさんは視野がとても広い方なので、おそらくそういう可能性もある中で今何ができるか?というような話をしたかったのだと思う、文脈忘れましたすみません・・・)

アパレル業界人Bさんとの話

そんな話をAさんとした直後、私はアパレル業界人のBさんと一緒に卒論の取材のため岩手へ向かっていた。Bさんは海外高級ブランド向けに日本でものづくりを行う企業に勤めていて、ゴリゴリのものづくり側の人である。そのBさんに、東北新幹線の車内でAさんとの話をした。なんとなくこのショックな気持ちを共有したい気持ちがあったのかもしれない。

「そこまで早いかは置いておいて、いずれそうなるでしょうね~」

Bさんのリアクションは驚くこともなく淡々としていて、私の方がそれに驚いた。Bさんはこう続けた。

「洋服は快適性を求め続けた結果、必ずその方向へ行くと思いますよ。でも既存のものづくりも一部富裕層向けに必ず残るはず。自分はそういう未来をいつも想像して、後者で生き残れるように今の打ち手を考えています」

それから道中はBさんとその話でひとしきり盛り上がった。漫画で見る未来人はみんな全身タイツのような衣服を身にまとっていること、どんな繊維が用いられるか、やはりその領域の第一人者はユニクロになるのか、ボディコンシャスだと恥ずかしいという話から、もうその頃は全身タイツが全部コントロールしてくれ、ZOZOSUITのように計測してくれたり食事が変容していて太るという概念がないかもしれないとか、そういう話までしたような気がする。Aさんの問いのおかげで、とても想像力に富んだ興味深い時間を過ごすことができた。

Twitterで見た未来人の話

そうこうして半年以上経った頃だろうか、その間2人と話したことはたまに思い出していた。ただ、至極論理的な未来の可能性は理解しながらも、"ファッションによる高揚感" がなくなるのだろうか?という疑問が生じ、なんとなくモヤモヤしていた。

そんな中、Twitterでとあるツイートを見かけたのである。(検索して見つかったので勝手ながら引用させていただきます)


「なるほど!!!」

このツイートを見た瞬間、当時3DCGやVR/ARの世界が盛り上がりつつある時期だったこともあり、点と点がつながる結構な衝撃を感じたことを今でも覚えている。思わず100万回のいいねを押したくなるほどだった。

全身タイツのような衣服を身に着けているが、実は進化したテクノロジーによっておしゃれを——リアリティのあるバーチャルファッションを身にまとって楽しんでいるかもしれない未来人・・・!

中世ヨーロッパのドレスや好きな時代・ブランドのコレクションを身にまとっているかもしれないし、自分でデザインした服かもしれない。もちろん全身タイツではない普通の衣類を着る人もいるだろう。なんて素敵なんだと、私はその可能性に希望を抱いたのだった。

パンデミックで加速する未来

そこから約2年経った今、振り返るとパンデミックによりその可能性がなんとなく高まっているような気がしている。

冒頭のバーチャルファッションの進化に加え、メディカル系の繊維製品が続々と開発されたり、防護服などの決まった形に用いられる自動縫製技術も需要が伸びた。また、リモートワークが増え、EC化が加速するとともに、布帛よりニットカットのニーズが増えるなどの変化もあった。
(私自身も在宅でニットやカットソーに慣れてしまい、久々に布帛の白シャツを着るとその動きづらさに驚いた。その分増量も・・・遠い目)

なにより世界的に "サスティナブル" な方向へ、ファッションやアパレル業界がものすごい速さで変容している。全身タイツ+リアルなバーチャルファッションを楽しむ世界が本当に訪れるかは分からないが、この急速な変化はその未来の伏線回収・・・のように感じられなくもなくて興味深い。

なんだか話が飛躍して都市伝説のような話になってしまった。誤解していただきたくないが、今回伝えたかったことは予言とかアパレル業界の悲観論とかそんなことではない。今のアパレルものづくりは人が人の形をしている限り必要だし、仮にその世界が訪れるとしても、生地や製品のクリエーションを行い、たくさんのアーカイヴを未来へ残すことが現在の使命とも思える。今を積み上げた先に未来があるからだ。

結びになるが、世の中は常に変わっていて、さまざまな事象を観察すると見えてくる未来があると思うし、またいろいろな可能性を想像することや、新しい視点を持つことを忘れずにいたい。そして結果的にどんな未来であれ、今を後悔しないよう生きることが重要、そして楽しむ、これに尽きるのではないだろうか。未来の私へ向け、今、記しておく。

おわり。

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