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ニューヨク・タイムズ

突然何を言い出すのかと思われるかも知れないが、私はお風呂が苦手である。もちろんお風呂に入らない生活をしているとかそういう話ではない。毎日入浴して身体も綺麗に洗っているし、その都度下着も取り替えているのでどうかご安心いただきたい。どうして苦手なのかと聞かれれば、その理由はいくつかある。ひとつは熱いお風呂が好きではないという事だ。そんな事を言うと「てやんでぃ!ヌルい風呂なんざぁ入れるかぃ!」などと江戸っ子なお爺様方は怒りだすかも知れないが、そう言われても嫌なものは嫌なのだから仕方がない。私はあんな肌がピリピリするような熱い湯船に好んで浸かりたがる人は正直どうかしていると思っているし、実は熱いお風呂は余り身体によろしくないのではないかと疑ってさえいる。そもそもお風呂をリラクゼーションの場と捉えている私にとっては刺激的なアツアツ風呂などナンセンスとしか言いようがない。要するに私はジンワリ温まってリラックス出来ればそれで十分満足なワケで、そうなるとお風呂の設定温度はせいぜい39~41℃くらいで丁度良いのである。

もうひとつの理由としては長時間湯船に浸かっている事が余り得意ではないという事が挙げられる。何をするでもなく「じーっ」と湯船に浸かり続ける退屈さに私はどうにも耐えられない。少しでも入浴時間を延ばそうと防水のAndroidタブレットやBluetoothスピーカーを購入して動画や音楽を鑑賞してみたり、電子書籍で読書に興じてみたりなど色々と努力はしているのだが、やはり短時間で音を上げてしまう。世の中には長風呂をこよなく愛す人達も居て、そういう方々は放っておくと何時間も延々と湯船に浸かっていたりするらしいのだが、私からすればそんなものは何かの苦行にしか思えず、とても真似出来るものではない。

そんな具合にヌルめのお風呂に短時間という入浴スタイルを貫いていると「どうも温まり方が足りない…」とか「なんだか疲れが取れていないな…」という事態に陥る恐れもあるので、そうなる事を防ぐ為に私が重視しているのが入浴剤だ。過去様々な入浴剤を使ってきた中で私が最も高く評価していたもの。それが花王の「バブ」の中でもより一層、肩こり・腰痛に効くとされていた「バブEX」(以下、EXと略称します)という製品だった。若干高価ではあったものの私が使ってきた入浴剤の中ではこれが一番温まり、疲れが良く取れたように思う。しかし残念な事に2009年9月をもって製造終了となり現在では入手不可能となってしまった。また、これの後継として「バブ 濃厚炭酸湯 和漢植物の芳香浴」というものが発売されたが、香りは似ていたものの効果的にはEXには遠く及ばなかった。更にはこちらも製造終了となり現在では後継商品の「バブ メデュキュア」という東映アニメーション制作の魔法少女アニメのような名前の商品も出ているのだが、やはりEXには及ばない製品のように感じる。とは言え、他社製品と比較すれば効く部類ではあるので現在私はそれをEXの代用品として使っている。

入浴が好きな人はそれ自体が嬉しく楽しい事なのだろうから特にこれといった工夫や努力は要らないのだろうが、入浴が余り好きではない私にとってはお風呂に入りたくなる工夫や努力を幾つも積み重ねていく事はかなり重要な事なのだ。入浴剤に拘る事もそのひとつだし、浴室の入り口に「ゆ」文字の暖簾を垂らしてみたり、洗面器を銭湯で良く見かける「ケロリン」の桶にしたりしているのも入浴時のテンションを少しでも上げようという努力に他ならない。そんな私の最終目標は大型モニターとサラウンドシステムを備えたジャグジー付きの浴室である。そんな大がかりな環境でお風呂に入れば退屈せずに済みそうだという安直な発想なのだが、これを他人に話すと「お風呂がとてもお好きなんですね」なんて感心されてしまう事が多く、そんな時に「いえ、お風呂は余り好きではないんです」などと本当の事を言おうものなら尚更物事がややこしくなってしまうので、私は「ええ、そうなんですよ」とお茶を濁すようにしている。よくよく考えてみると、お風呂云々より他人にいちいち面倒な説明をしなければならない事の方がよっぽど苦手だったかも知れない。でも今回は記事のネタだから仕方がないし。まぁ、そこら辺の事は湯舟にでも浸かりながらゆっくり考えるとしよう…。

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