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ずっと旅に行きたかった

ずっと旅に行きたかった。これは僕が生きていく上でずっと考えていることだ。知らない場所で、誰でもない僕でいたかった。思い立って列車に乗る、たったこれだけで周りの環境がガラッと変わるのが面白かった。煩雑な人間関係から解放されることを願ってする人もいるだろうが、僕はむしろずっと誰か特別な人と旅をしたいと思っていた。しかし人数が増えれば面倒も増えるもの、結局一人で旅をすることが多かった。新しい景色に対して、主観に没頭したかったというのも大きい。誰かのいないことの寂しさも僕だけのものにしたかった。旅の間だけ、僕はとてもわがままでいたかった。

京都に来たのもその一つのあり方であったのかもしれなかった。同じ家から大学に通うことを想像したくなかった。このままじゃいけない、と思う気持ちが一年間募っていっていた。

そしてその京都でも、旅に出たい気持ちになっていく自分がいることについに気がついた。日常が重ねられてしまった。日々を加速したかった気持ちも、他の日常の前には必ず含まれてしまうものであった。

ほんとうは、ずっと旅に行きたかった。旅に生活の全てを委ねたかった。今となっては、あの頃ほど行きたいとは思わなくなってしまった。これに思い至った時、ハッと何か付き物が落ちるような気に襲われた。それがまた名残しいような、しかしとりあえず寂しかった。桜が咲く季節を待とうと思う。うめ

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