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葬列に 並ぶことを許されず 白い花束だけが 私に持たれ風に揺れる なぜこんなに! …
夢の中 青い法衣を纏った 男が仄暗い石堂の中から 私に語り掛ける “ お前は知らないのか …
* 西の門が風に開かれた 昔の人に会える気がしたのに その風は深く私を揺らし 東…
六角堂の格子の隙間から 柔い春の日差しと花弁が入り来て まだ新しい観音菩薩像に 供…
草原の風が 二人を包み込んでいた日々 あなたは少しだけ 私に似ていた その手に触れることは …
春の光りが 私に囁く もう 終わりにいるのだと 青々とした葉を 風に靡かせ 下枝に残る花を 桜…
いつもと同じように ノックし 懐かしさの残る ドアノブを引き 誰もいない 部屋の扉を開く いつかの部屋が そこにはあり いるはずのない あなたがいる あなたは あの日のままに微笑み あの日のままの 春の風が あの日のままに あなたの その柔らかな 髪を揺らす テーブルの上には かつての 二人の姿が 木彫の 写真立ての中に 飾られている あなたの肩に触れる 二人の影が消える 部屋は初夏へと 光の色を変えていく ※小詩集〜春〜より
春風の 野辺にぽつりと建つ 納屋の戸は カサカサと揺れ 土の道は 陽炎の その先へと続いていく…
窓から街を 眺めていただろうか 二流シネマのように 覚えているのは 廊下側の席の後ろ 半透…
目覚めれば 甘い香り あなたが お茶を注いでいる どれくらい 眠っていた? 時計のない部屋で…
立ち昇った煙が 雲になったのだろうか 古びた桟橋 出航を遂げた船の残響 私は茫然と 港に立…
収穫期の 葡萄畑を 柔らかな月光が 照らす夜 あなたは 大きな樹にもたれて 恍惚を 瞳に浮かべ…
「パン屋」 精神病院の 陰に潜むパン屋 手作りの パンが並んでいる チーズの入った パイを…
清らかに流れる川 そっと水面を掬えば 冷水に悴む掌に 舞い落ちる雪の花 思えば 流され続けた日々 せせらぎは 失われた愛を呼び 灰色の空に隠された 透明な記憶は甦る あの日の 手の温もり それは闇を 照らす残光 どこかで さざ波のような 優しい 吐息が漏れる 水面に 誘われた星屑を 風は静かに 舞い散らす 列車の 汽笛に混じり 誰かが 私を呼ぶ声がする