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”おいしく出来ますように” 焙煎のことなど その1 Artisan Coffee Roaster's voice

せっかくの自家焙煎のお店のホームページなので、やはり焙煎のことなど。

ロッセでは富士珈琲機械製作所の半直火半熱風方式の焙煎機で焙煎を行っています。
ガス方式で4Kgの釜の焙煎機です。4Kgの釜ですが3Kg弱の生豆を入れて2Kg強の出来上がりとなります。
生豆は出来上がるときには膨らむので、釜の空きスペースに余裕がないと煎りムラが出来てしまいうまく焙煎できません。
4Kgの釜で出来上がりが2Kgと少しと聞くと意外に少ないと感じるかもしれませんね。
今回は焙煎のプロセスを通して焙煎について書いてみようと思います。
長くなりますが是非読んでみてください。

焙煎のプロセス

焙煎機の始動

火を入れて釜を暖め始める前に各部清掃点検を行います。
その後ガスの元栓を開けて焙煎機を始動して釜に火を入れます。
潤滑油もここで適量注します。

釜に火を入れた後、生豆を計り釜に入れるための専用に容器に入れて待ちます。
いつも決まった量や条件で焙煎することによって、違う結果の場合での原因を知る手がかりがつかみやすくなります。

ここまでが生豆を投入するまでのプロセスです。

生豆を投入

その後所定の温度まで上げて生豆を釜に投入します。

なお、最初は生豆を投入した段階では温度をあげながらエネルギーを与え、その後は継続的にやさしくエネルギーを与えることが目的なので、ダンパーを調整して空気があまり動かないようにしておくのが普通です。

焙煎の最初の段階は生豆にエネルギーを与えることです。
これからの行程で生豆が膨らんで弾けるために生豆に熱を与えてあげます。

この段階では生豆についていた皮が取れて、グリーンや黄色みがかった白色だった生豆がだんだん黄色から薄い茶色に変わってきます。

そして、生豆にある程度の熱量が伝わった時点で一旦火力落とします。
その後タイミング的に焙煎する時間の中間くらいまでは火力を落として、釜の温度が落ちすぎないようにしながらじっくりと生豆にエネルギーを与えていきます。

エアフローを変える

次の段階は焙煎のちょうど中間くらいのタイミングで、ダンパーという釜の中の空気の流れを調節する部品を動かして排気モードにします。

そしてこのタイミングで再度火力を強めて豆が弾ぜるためのエネルギーを与えていきます。
排気モードにすることで空気の流れが速くなり温度も上がりにくくなることもあるので、少し強めの火力に調整する必要があります。

また、排気にする理由は釜の中の空気が籠ってしまいコーヒーに焦げ臭い香りがついてしまうことと、排気を行うことで生豆に含まれている水分を抜くことです。

生豆の持っている水分の抜け方次第で出来上がるコーヒーの味が大きく左右されます。水分の抜けが少なかったコーヒー豆には渋みが残ってしまいます。
渋みがあることがいけないのではなく、あり過ぎると本来のコーヒーの美味しさが現れにくくなってしまうからです。

1回目の弾け(1はぜ)

そしてエネルギーの高まりとともに、1回目のハゼがやってきます。

硬いタイプの豆はよく弾けますし、柔らかいタイプの豆は弾ける音も少し控えめです。
1回目の弾けが終わる頃に再度火力を弱めてあげます。

時間にすればそれほど長い時間ではないですが、一旦火力を下げて豆の中心に火を通すことがいい香りのコーヒーを焙煎するためにはとても大切なことです。
この時火力を弱めて調整する理由は、コーヒー豆の中心にはいい香りが出る部分があって、そこに火が通らないといい香りが出てこないからです。

それでもあまり釜の温度が下がりすぎないように火力を調整することも、次に来る2回目の弾けには大切なことです。
そして、どのくらいに調整するのかがそのコーヒーを焙煎をしている人の腕の見せ所なのです。

この微妙な火力の調整をするところで温度が高すぎると、ちょうど坂道を走って下るように惰性がついてあとで火力を弱く調整しても修正が利かず、予定よりも早く2回目が弾けてしまいあれよあれよという間に釜から出さなくってはならなくなってしまいます。
こうなると豆の芯まで十分火が通らずに外側だけが焼けてしまうので、豆は硬く十分に膨らまない状態で焙りあがります。
この場合は渋みが多く若い感じのコーヒーになってしまいます。

私の一番最初にした焙煎がそうでした。
豆はキリマンジェロでしたね。
豆に脂が浮くぐらい黒く深く焙煎してしまったような状態ですが、味はまだまだ若く渋みがあるような香りも少ない出来上がりでした。
まあ、それはそれとしてこうすればこうなるという一つの大切な(苦い)経験として私の中で積み重なっっています。

また、温度が低すぎるとあとで火力を強く調整しても思ったようには上がらず、焙煎時間だけが延びてしまいます。
この場合は膨らみが弱いため味にまろやかさが欠ける硬い風味のコーヒーになってしまいます。

2回目の弾け(2はぜ)

2回目の弾けに向けては、柔らかいタイプの豆でも硬いタイプの豆でもしっかりとした火力に調整して豆を弾けさせてあげることが大切です。
もちろん硬い豆は柔らかい豆よりも強めに調整しますが、イメージとしてどちらもそれまでと比べれば強めの火力を与えて豆を弾けさせます。

釜の温度、豆の弾ける音やリズム、漂ってくる香り、豆の色、豆のふくらみ具合これらの条件がそろったところで釜から出します。

実際には釜から出したあとにファンを使って冷却するのですが、余熱で焙煎が進んでしまうのでジャストタイミングで出したのでは少し遅いということになってしまいます。
感覚によるところが大きいのですが、ジャストタイミングの少し手前で釜から出してあげるのです。
豆のタイプなどによって2回目の弾けはじめで出すこともあれば、弾け終わって釜から出すこともあります。

焙煎する豆と何度も向き合っていると自分の焙煎方法でどのタイミングがいいのかを段々と知ることができるようになってきます。

おいしく出来ますように

そして大切なのは自分の目で見て、そして自分の感覚で釜から出すことです。
これは全自動の焙煎機でも同じことだと思っています。

釜から出すタイミングが最高かどうかは確かめようがありませんが、経験を重ねることにより段々とそれに近づくことができると思っていますし、自分を信じることが大切だと思っています。

だから、私はいつでもコーヒー豆を釜から出す時に心の中で唱えるのです。
おいしく出来ますようにって。

長く焙煎してきて、生豆の状態、季節などによる外底要因(気温、湿度、明るさ)などの変化や内的変化(味覚、嗅覚、視覚)の変化など、色々な要因が異なってきて同じものは一つもないと感じています。

皆が知っている言葉で言えば、一期一会です。
同じ豆でもその風味を味わえるのはその時だけということです。

その豆が持っているものをそのまま生かして焙煎するだけでいいのだと、最近ではそう思っています。

豆の冷却

釜から出したらすぐに扇風機などで冷却して焙煎が進まないように豆から熱を除きます。その後人肌以下に熱が取れるまで冷まし続けます。

釜から出す時に注意する点は焙煎機側のガスが止まって火がきちんと止まっていることと、ダンパーの位置が空気の流れが止まる位置にあることです。
空気の流れが止まっていて、火が消えていればそうそう火災になることはありません。
空気の流れがあるといわゆるバックドラフトのようになり、最悪爆発するようなこともありうることです。火の取り扱いには細心の注意が必要です。火災になってしまった場合、他の人の命に関わることもあり得ますから。

そしてこれも大切なことですが、焙煎を終わってすぐには火の気のあるところのお掃除をしてはいけません。
もしも火が燻っていたのに気が付かずにゴミ箱やゴミ袋に入れてしまったら。
一夜明けるくらいの時間が経ってからお掃除したいものです。

焙煎するということは、少しの火の気があがっても延焼しないようなきちんとした場所と設備、お手入れがしてあること、消化器の用意など火災予防の対応をする責任を前提としています。
焙煎をしてみようという方は、このことを是非心に留めておいてほしいと思います。

ハンドピックとパッケージング

コーヒー豆が冷めたらからダメな豆(焙煎できていない豆やこげた豆、取り除かなければならない豆など)、石や穀物などの異物を根気良く手で取り除きます。

ハンドピックの目標は完璧に均一な豆を目指すことではありません。

もし、完璧に近いくらい均一なハンドピックをした場合、その風味はそのコーヒーらしさは残るかもしれませんが、のっぺりとして味わいの薄いものになってしまうでしょう。
豆によってはグレーゾーンの豆の残し具合でその焙煎している人の手腕が問われます。

例えばインドネシアのコーヒーでマンデリンという豆があります。
生豆を見ると丸い豆、長い豆、大きい豆、小さい豆と様々な豆が入っています。
このコーヒー豆は様々な豆があってこそ、その風味を醸し出すのです。
これを均一な豆だけにしてしまうと本当のマンデリンの味ではなくなってしまいます。
人間と同じですね。この人はこういう人なんて言えない複雑さがあるから人間味があるのです。

もう一つ。モカ・マタリというイエメン産のコーヒーがありますが、この豆はとても小粒で形も様々です。また地面に広げて乾燥させた豆をそのまま袋に入れて持ってきたかのように胡麻粒くらいの石がたくさん入っていたりします。
そしてこの豆はグレーゾーンな豆(ハンドピックしようかどうしようか悩む豆)がとってもたくさん入っているのです!この豆も均一に仕上げてしまうと昔からのモカらしさがなくなってしまうのです。
ちなみに、最近ではモカでもきれいな仕上がりの生豆が出てきていますので、そういう豆がお好みの場合はそちらを選べば良いかと思います。

ハンドピックが終わりましたら、正確に計量してパッケージングします。
ロッセでは品名の手作りシールと焙煎日のシールを貼って出来上がりです。

焙煎時間は25分くらい、冷却は10分くらい、ハンドピックは10分くらい
(豆によってはモカなどはハンドピックに1時間半くらいかかるものもあります。こうなると精神修養のようですね。)
パッケージも10個出来るのでおよそ10分かかります。

トータルすると1種類の生豆が焙煎したコーヒーとして出来上がるまでに約1時間くらいかかることになります。

実際にはハンドピックが終わった時点で次の焙煎工程の準備を始めます。
そして多い時では8回くらい焙煎をすることもありますよ。

ハンドピックの時には屈み仕事になりますので、あまりお腹いっぱいの食事もできませんし、焙煎を始めたら終わるまで休憩も取れません(笑)

ロッセではお客様においしいと喜んでもらえるように、一生懸命心をこめて手間隙かけて1つずつ丁寧に焙煎しています。

年間では1500回近く焙煎するのでそのデータも多く、その多くの経験から微調整を行いながら毎日の焙煎を行っています。

これからもロッセは、<豊かに香り高く、いつも焙りたてで、おいしいコーヒー>をお届けできるよう頑張ってまいります。

You Tubeでの焙煎動画

作った時期は違いますがYouTubeにて動画も作ってアップしていますのでよろしかったらご覧ください。(まだ動画制作に慣れていない時期なのでボリュームが大きいのでご注意ください)
珈琲豆焙煎の流れを解説

どうぞ、素敵なコーヒー時間を!

2008年2月26日
2022年12月12日加筆

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