鳥獣戯画ノリ #毎週ショートショートnote
「飽きた」
「何が?」
「人間を脅かすこと」
夜道を走る車の窓に張り付いたり、ホテルのトイレの鏡に映ったり。そうすると人間たちは震え上がり、逃げ出す。
俺たちは驚く人間を見て、毎夜毎夜と笑い合ったものだ。
……しかし。
定番は、だいたいやり尽くしてしまった。何か他に、面白いことはないのだろうか。
「山の上の寺に行こうぜ」
「は? 寺?」
「あそこの鳥獣戯画ってノリが良さそうじゃね?」
「あー……。退屈はしないかもしれないな」
「仲間に入れてもらおう」
「マジ?」
「どうせ暇なんだ。行ってみようぜ」
そう言われちゃあ仕方がない。なんせ俺たちには、永遠の時間があるのだ。ここは、コイツの話に乗ってみるか。
「はい! 次はそこのお兄さん!」
「お前と勝負しないとダメなのか」
「ここにいるならここのノリでやってもらわないと。相撲は挨拶代わり」
「俺、蛙苦手なんだよ」
「先手必勝!」
鳥獣戯画・甲巻。
蛙に投げ飛ばされる男の画が発見されたとか、されなかったとか。
(410字)
たらはかにさんの企画に参加しております。
今週のお題「鳥獣戯画ノリ」
またもや無理やりです。すみません。
難しい……でも楽しい……。