カフェ4分33秒 #毎週ショートショートnote
年下の彼は時間に厳しい。
「4分33秒の遅刻」
私を見るなりそのひと言。事前に連絡は入れている。待ち合わせのカフェは、駅から走って約4分だ。
「遅刻したのはごめん。でもさ、そこまで細かく言わなくても」
正直、こんなに細かいのはどうかしていると思う。
「遅刻するのが悪い」
「それは……そうだけど」
映画の上映まで、時間はもう少しある。とりあえず、コーヒーを注文した。
「今後のために言うけど、もう少し大らかに生きたら?」
「じゃあ遅刻しないで」
「でも、さすがに秒まで言わなくても」
「……く」
「え?」
彼は口を開けたり閉じたりし、机の上で組んだ手に力を入れた。
付き合って三か月。不器用な彼を、まだまだ理解できない。
「少しでも長く、一緒にいたいんだよ。だから、もう、遅刻は……」
最後の声は聞き取れなかった。
彼の顔を見るが、耳まで真っ赤にして俯いている。
私は思わず口を押さえた。
今、彼を可愛い、なんて思ったからだ。
彼も私も、本当にどうかしている。
(410字)
たらはかにさんの企画に参加いたしました。
(体調が優れない中、今週もありがとうございます。ご自愛なさってください)
お題「カフェ4分33秒」
曲については、恥ずかしながらお題のおかげで初めて知りました。
コンサート会場で流れたら、私はくしゃみしそうで怖いです。