数学ダージリン #毎週ショートショートnote
放課後、数学の先生へ質問に行く。
「これで分かった?」
「はい。ありがとうございます」
数学は苦手だ。授業で聞いても、右から左へ抜けてしまう。
「じゃあ、ご褒美に紅茶を淹れてあげよう」
以前、先生が紅茶を好きと聞いた。それでつい、私も紅茶が好きと言ってしまった。
それからというもの、質問の後には「ご褒美」と称して紅茶を飲ませてくれるようになった。
これは、私の楽しみの一つ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
先生が紅茶好きと言っても、さすがに学校ではティーバッグ。
それでも顔に紙コップを近づけると、ダージリンのフルーティーな香りが広がった。
「好きです」
先生は、背を向けたまま黙っている。
「……ダージリンの香り」
「そう。それは良かった」
先生は、背を向けたまま言った。
一口飲んで私は顔を顰める。紅茶なんて、本当は好きじゃない。
「先生」
先生は、返事の代わりに私を見た。
「ダージリン、美味しいですね」
「ああ。僕も好きだよ、ダージリン」
(410字)
たらはかにさんの企画に参加いたしました。
お題「数学ダージリン」
数学要素なかった…
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