フィリピンの商慣習全般とコーヒー事情
こんにちは。
怠惰な私がなんと1カ月余りで2つ目の記事を書き上げました。
1つ目は思いの丈をとにかくぶつけたので、それに比べると非常に淡白というか、手抜き感は隠せませんが、
今回は題名の通りフィリピンの商慣習全般とコーヒー事情について事実を淡々と且つサクッと書いていくものということで、こんな感じでご容赦頂ければ幸いです。
フィリピン特有の事情なのでどれほどの人に役に立つかわかりませんが、
興味ある方は是非ご一読下さい。
数年後、私がまた来た時の為の備忘も兼ねて。
(マニラ / Bonifacio Global City)
①商慣習全般
・Due date軽視
売買契約書には当然クレジットターム(※1)があり、通常、Invoice(請求書)にはクレジットタームに基づいたDue date(※2)が付されているが、フィリピンではこのDue dateが圧倒的に軽視される。
別に支払い側が資金繰りに窮しているとか関係なく、当たり前のように遅れるし、フォローしないと何ヶ月もそのままということもザラにある。
一方フィリピンは借入コスト(金利)が高いので、遅延期間の資金負担分の金利がバカにならない。
掛売りが主体の商売で、且つ小規模のスタートだとキャッシュフロー管理は日本以上に気を配る必要有り。
油断しているとあっという間に資金ショートしてデフォルト。
(※1) : 掛売り商売の、支払い実行日までの猶予期間。
(※2) : 支払日
→例えば販売が6月15日でクレジットタームが出荷日+60日だったらDue dateは8月15日。
・レスポンスが遅い
とにかく全方面レスポンスが遅い。サプライヤー、クライアント、弁護士事務所、会計事務所、役所、全部遅い。
バッファーにバッファーを持たせたスケジュールを組むべし。
早いのは銀行ぐらい。銀行のレスポンスはどこも早かった。
・税務関連
Output VATとInput VAT(※3)の未相殺分の還付は、制度はあるけれど実態はほぼ実現不可能。
これをあてにして創業期にギリギリのキャッシュフローでやりくりしていると詰む。黙って稼いで相殺すべし。
固定資産税が非常に重たい。支払い時の簿価でなく、契約書の価格(=取得価額)に基づいて計算されるので、当たり前だけどなるべくBSを軽くすることを意識すべし。
儲かっていようが損してようが関係ないので、特に走り出しの頃のこの支出はキャッシュフローに大きく響く。これも知らなかったら詰む。
(※3) : VAT=付加価値税。違うけど、日本でいう消費税みたいなものとイメージして下さい。
→創業期は往々にして赤字故、Input VAT(物を買う時、仕入れる時に払うVAT)が積み上がる。
(フィリピンと言えば南国らしい綺麗な海。セブやボラカイも有名ですが、実はマニラから車で行ける距離にも超超超綺麗なビーチがあります。外国人観光客がいない分、落ち着いてて最高にのんびりできます。)
・人事関連
日本以上に社員の転職は一般的。
一部の日系企業を除き、同じ会社で役職が上がるということは基本的にはない為、例えば同じ職種でSupervisorからManagerになろうと思ったら普通は転職しかない。
また、厄介なのは”降格人事”が法律で禁止されていること。
例えばManagerのパフォーマンスがイマイチだからManagerとSupervisorをチェンジしてみる、みたいなことは不可能。
特に上位役職は見極めが重要。
但し、優秀な方はかなり多い印象。
日本のように“就社”ではなく、基本的には専門性を活かした”就職”がほとんどなので、プロフェッショナルな方が比較的多い。
やはり専門性、ひとつに突き抜けることって武器だなと感じる一方、
領域の掛け算(会計×ITや営業×会計等)も絶対に大事だなと、彼らと仕事していると実感するタイミングもある。
但し、これはどっちも中途半端で何の専門性も無いスタイルを肯定する意見ではない。
あと、これは商慣習からは少しズレるが、フィリピンの方は本当に性格が明るく、人当たりが良い人が多い。
但し日本と比較すると、フィリピンはなかなか自分の非を認めない方が多いので、仕事の場では日本の感覚だとすみません間違えましたという一言で簡単に済むところが、こじれるケースもある。
特に職位が同じのフィリピン人同士(例えばA部署のManagerとB部署のManager)の小競り合いは長期化&泥沼化しやすい傾向にある。
②フィリピンのコーヒー事情
全体的にコーヒーはよく飲むが、国内の消費はコモディティがほとんど。
(国産、ベトナム産、インドネシア産ロブスタ等)
フィリピンの平均年収は日本円で約48万円程。
単純に12で割ると、月収は4万円程。
フィリピンのスタバのコーヒーが1杯300円強なので、
毎日飲むには、アラビカの輸入豆はちょっと高いかなという値段。
フィリピンに生豆を輸入する際は20%の関税が課される。(日本は生豆の輸入は関税0%)
これも、国産ロブスタが国民によく消費されている理由のひとつ。
一方スペシャリティの話をすると、特にマニラは日中韓やシンガポール、欧米からの駐在員も多く、彼らのような外国人やフィリピンの富裕層に需要はある。
但し、スペシャリティを専門に扱うようなプレーヤーはまだ多いとは言えない。
スペシャリティを専門に扱う私のおすすめの店は以下の2つ。
【Yardstick Coffee】
(店内。ローストルームやテイスティングルーム、セミナールームも併設。)
「会社を辞めてマニラでコーヒーショップをやると母親に言った時、車で泣かれた。」
「Yardstickを立ち上げる前からもちろんコーヒーは好きで、お気に入りのカフェ、クールなカフェ、大好きなカフェ、尊敬するカフェは自分の中に沢山あった。でもYardstickはそれらとは全く異なるものにしようと思った。なぜなら皆んな、それらの真似をするから。」
という、コンサル出身のシンガポール人オーナーが2013年マニラ/マカティに立ち上げたブランド。
カフェ事業の他に現在は、マルゾッコ の正規代理店業、エスプレッソカプセルの販売事業(サブスク型。香港とシンガポールには配送無料)等をマニラとシンガポールで手掛けている。
フィリピンのスペシャリティコーヒー市場を牽引するロースターの1つ。
【Habitual Coffee】
(HPがなかったのでFBページ)
先程のYardstickから車で5分、歩いて15分ぐらいのところにある。
正直フィリピン産のコーヒーは総じて質は良くない。そもそもロブスタがほとんどだし、アラビカもイマイチ。
が、本当に美味しいフィリピン産コーヒーをマニラで飲むならここ一択。
スコアでいうと80前半〜半ばの、文句無しに美味しい希少なフィリピン産コーヒーを楽しめる。(Yardstickは輸入豆メイン。少なくとも私がここにきてからYardstickが国産の豆を扱っているのを見た事がない)
ちなみに2年程前に、皆さんおなじみのArabica%もマニラに進出しました。
生産地の話も少しすると、ルソン島北部のバギオ周辺や、南部のバタンガス(今年1月に噴火したタール火山周辺)が有名。
政府はコーヒー栽培含む、国産農業の発展の為の支援の一環として、金融機関に対して農業関係者及び企業への年間融資額のノルマを定めているが、なかなか上手くいっていないのが現状。
さて、メモの走り書きのようにここまでザッと書きましたが、以上です。
この歳(26歳2カ月)で、異国で商売に触れられるというのは本当に良い経験だなと日々実感しています。
同時に、フィリピン含む外国から見たら日本の商慣習も相当特殊であり(むしろ世界標準で見たら、フィリピンの方が日本よりも断然ノーマル寄りかもしれない)、そんな特殊な日本で生まれ育って働いて、20代半ばで活気溢れる東南アジアの大都市メトロマニラにて、ある種の予防接種を打てた自分は、アジア圏の商売人としては結構ラッキーだなとも思います。
どこまで需要あるか分かりませんが、皆さんが興味があればマニラでの仕事や生活についても今後IG live等で共有していこうと思います。
今日も読んで頂き有難うございました。
(ご感想ご質問等、インスタのDMにて頂けると嬉しいです。)
丸山伶介(IG: riy0suke)