ドラゴンと龍
「なんで男って龍が好きなわけ?」
コストコへ向かう車内で嫁が私に訊いてきた。
なんの脈絡もなく言われたので面食らったが
なるほど
槇原敬之がカバーした“銀の龍の背に乗って”が
BGMで車内に流れたからか。
「龍、“りゅう”ねえ・・・」
「そう。龍。夫くんも好きでしょ?なんで?」
「嫁ちゃん、君はひとつ間違っている」
「何?」
「龍(りゅう)じゃなくて、ドラゴン」
「はぁ?」
「男はドラゴンが好きなんだよ!」
「・・・はあ」
「そこ!あきれない!大事なことだから」
「別にどっちでもいいでしょ」
「じゃあ聞こう。修学旅行で男子が買うものは?」
「・・・木刀?」
「それもあるけど、ドラゴンとか剣のさぁ」
「あー、キーホルダーみたいなやつ?」
「そうそう。男ならみんな欲しがるドラゴン!ね」
「えー、龍でも一緒じゃないの?」
「ダメダメ。龍だと、なんか穏やかなイメージだ」
「いいけどさ。夫くんて変なとこでムキになるね」
「ぼくも理由は分からないけど、血が騒ぐんだよ」
「・・・中二病の血か」
「そう。それがドラゴンと剣には詰まってる!」
「まあ、分かる気がするけど」
「あとはドクロとか、十字架とかね。大好き」
「ああ、あるねー(笑)」
「君と出会う前にはそんなのばっか持ってたよ」
「え、ドラゴンのシャツとか着てたの?」
「いや・・・さすがにドラゴンはないかな」
「だよね。良かった」
「ドクロと十字架はけっこうあったけど」
「まじかー。もう着ないの?」
「とっくに卒業したよ」
「ふーん、じゃあ良いものをあげるよ」
「なに?」
「私こないだちいかわシャツ買ったじゃん」
「うん(大量にね)。」
「寝巻用にバカでかいサイズのシャツあるのよ」
「・・・うん?」
「それを夫くんにあげよう。着ていいよ!」
「誰が着るか!」
「何言ってんの?3キャラ揃ったプリントだよ」
「3キャラだろうと全キャラだろうといらないよ」
「まあまあ、照れない照れない」
「(話が通じない)ええっと、嫁ちゃんはさ」
「うん?」
「嫁ちゃんは嫌いなの?龍」
「うーんとね、乗れるタイプの龍なら好き」
「なんだって?乗る?」
「“まんが日本昔ばなし”の龍いるじゃない」
「よくそんな古いの知ってるなぁ」
「ああいう龍なら好きだよ。乗りたいじゃん」
「お、おう」
「爪とか牙が凄いヤツはダメだよ。危険」
「そっすね」
「なんか引いてない?」
「いやあコストコ楽しみダナァ」
・・・その日の晩。
それはそれはバカでかい
ちいかわシャツを着せられる私がいました。
嫁も並んでちいかわシャツを着てご満悦でした。