Even Heaven
Aimerさん 『Even Heaven』の歌詞をLLMに読み込ませてプロットを書き出して、プロットから書き起こした小説です。
◆
青い地球が暗い空に輝いている。
夜中の1時。
1台のトラックがガタゴトと音を立てながら舗装のない道を走る。
トモはトラックの荷台で目を覚ます。
彼の右手はなく、左足もとれかかっていた。
目の前にはボロボロの女の子がうなだれていた。
彼女の姿は、かつての華やかさを微塵も感じさせない。
トモには、このトラックがどこに向かっているのか、自分や彼女がこのあとどうなるのかわかっていた。
わかってはいたが、だからといってどうすることもできなかった。
川を流れる水が、海にたどり着くのが嫌だからと言って山に帰るわけにはいかないのだ。
トラックの帆の隙間から、パタパタと風が流れて、青い鳥が訪れた。
その鳥は美しく、その羽は若く夜明かりに輝いていた。
トモは、青い鳥に話しかけた。
鳥はトモの側に静かに留まり、彼の話に耳を傾けた。
「こんにちは。僕はトモといいます。僕の話がわかるようなら鳴いてみてください」
「・・・」
「大丈夫さ。ひとりで話すのは得意なんだ」
「もしも、迷惑でなければ僕の話をさせておくれ」
「僕は今はこんな感じだけれども、もちろん、生まれたときからボロボロだったわけじゃない」
「僕にだって生まれたばかりの頃はあったし、僕は僕の家族にとても、とても大切にされていたんだ」
「トモという名前だって彼らがつけてくれた。嘘じゃないよ、僕の右足の裏にはトモって書いてあるはずだ。消えていなければね」
「僕を買ってくれたのは、瞳ちゃんだった」
「彼女は僕をとても大切にしてくれたし、ずいぶんといろんな場所へ一緒に行ったんだ」
「一度なんてママに黙って温泉旅行に僕を連れて行って一緒に温泉に入ろうとして随分怒られたくらいだ」
「彼女が中学一年の年に化粧品が増え始めると僕とはあまり遊んでくれなくなった」
「でももちろん、それで良かったんだ。僕の役割は彼女が僕に飽きるまで一緒にいることで、それはいつかは終わる。彼女の興味がなくなるまで僕は壊れずにいられた。それが誇りですらある」
「僕は、暗い箱の中で、一日、二日、一年、二年と数えた。そして次に光を見るときは、僕を求めてくれたときではなくて、もう僕がいらないくなったときなんだと気がついた。だから、僕は暗闇が嫌いではなかったよ。まだ僕がここにいられることが確認できたから。僕が怖かったのは光を見ることだったんだ」
「・・・」
「大丈夫さ。悲しくはない。人生ってそういうものだろ?本当は知っていたんだ。僕たちは生まれたときから死ぬことは決まっている。だけど、やっぱりダメだね。知っていることと本当に経験することは違う。わかっているし、納得もしている。でも抗いたい気持ちがないと言ったら嘘になる。変なものだね」
「そんなわけで、僕は光を見たわけだ。そして今ここにいる」
「ところでさ、さっきからずっと僕たちを追いかけてくるあの青い地球のことを知っているかい?」
「とてもキレイだね」
「後悔はないよ。きっとね。そう言い聞かせているだけかもしれないけれど、たとえ後悔があったとしても今の僕にはどうすることもできない。歩き疲れた場所で立ち止まることしかできない。それでも、もしも願いが叶うなら、僕はあの青い地球に行ってみたい。最後に願いを持つことくらいはゆるしてほしい」
「・・・」
「大丈夫さ。願いは叶わないことは知っている。そんなに悲しい顔をしないでおくれ」
「君がただ黙って話を聞いてくれたことに感謝している」
「たとえ、君にとっては、羽ばたくことに疲れてトラックの荷台に足をかけて休んでいるだけだとしても」
「大丈夫さ。君は遠くへ行ける。僕とは違う」
「それでも君にもきっといつの日にか終わりはくる。永遠なんてないからね」
「・・・」
「大丈夫さ。その時にはきっと僕が君の話を聞くよ」
「僕が君に言えることはひとつだけだ。知っていることと経験することは違う。だからといって、僕たちは先に経験することはできない。だから心配せずに飛んでおゆき。闇の中へ」
青い鳥は、暗闇に溶けるようにすっと消えた。
そして、トモは青い地球を見上げて、そっと瞳を閉じた。
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