レンズ
幾田りらさん 『レンズ』の歌詞をLLMに読み込ませてプロットを書き出して、プロットから書き起こした小説です。
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写真を撮ることは、僕の唯一の趣味だった。
レンズを買ってしまった。
僕のカメラはAPS-Cなので、換算27mm-450mm相当。
便利なズームレンズだが、貧乏な学生には厳しい値段だった。
しばらくはカップラーメンで頑張らなければならない。
新しいレンズを試したくて、小石川公園に行った。
公園には、色とりどりの花や木があった。鳥や虫もいた。
僕は、カメラを構えて、写真を撮った。
新しいレンズは、素晴らしい写真を撮ることができた。僕はウキウキしていた。その時、あなたに出会った。
あなたは、ベンチに座って、本を読んでいた。
レンズを望遠までいっぱいに伸ばして見ると「ツァラトゥストラ」という題名だった。
なぜだかわからなかったけど、あなたから目を離せなかった。
僕は、鳥の写真を撮るふりをしながら、あなたの写真を撮った。
でも、ピントがずれてしまった。
後ろ姿のあなたの写真だった。
僕は、その写真を大切に持っていた。
しばらくして、僕は大学の学食であなたを見かけた。
同じ大学に通っていたのだ。
僕は、勇気を出して、話しかけた。
あなたは、僕を覚えていた。
僕が持っていたレンズが欲しかったけれども、高いので躊躇していたところ、僕が持っているのを見かけて、羨ましかったのだと言った。
あなたも、カメラが好きだったのだ。
僕たちは、ふたりとも友達がいなかった。
誰かといるよりも、ひとりでいるほうが気が楽だし、楽しかった。
でも、あなたとふたりで写真を撮りに出かけて、話をすることは、ひとりでいるよりもずっと楽しかった。
僕たちは、同じものを見て、感じて、考えていた。
僕たちは、うまくやっていけると思っていた。
でも、社会人になってから、すべてが変わった。
僕たちは、眠れないほど忙しい日々を送った。
僕たちは、会う時間もなくなった。
僕たちは、話すこともなくなった。
僕たちは、離れていった。
今はもう隣にいないあなたのぬくもりを、僕はずっと探している。
でも、見つからない。
僕は、カメラを持って、公園に行った。
でも、そこには、あなたはいなかった。
僕は、ピントがずれた後ろ姿のあなたの写真を見た。
僕は、涙を流した。