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Unravel

凛として時雨さん 『Unravel』の歌詞をLLMに読み込ませてプロットを書き出して、プロットから書き起こした小説です。

悠太はいつものように学校に向かう道の途中でふと違和感を覚えた。
さっきから目がチカチカしている。
手が自分の手じゃないみたいな感覚がする。
足が自分の足じゃないみたいな感覚がする。

「おかしい。」
悠太は、ひとりつぶやいた。

学校に着くと、美咲が暗い顔をして上履きに履き替えているところだった。
美咲は悠太の幼なじみで初恋の相手だ。
普段はケタケタ笑っている明るいやつだ。

「暗い顔してどうした?」
悠太がふざけて背中を叩きながら声をかけると美咲は振り返る。
「ねぇ、相談があるんだけど帰り一緒に帰れる?」
美咲は深刻な顔で話した。

帰り道、美咲は勇気を振り絞りながら話し始めた。
「昨日変な夢を見たの。」

「どんな?」
僕は何故かその先に続く言葉がわかる気がした。

「私は頭だけが線で繋がれていて水の中にぷかぷか浮いているの。」
「隣の水槽の中には頭だけのあなたがいるの。」
「正確には、あなたの脳だけなんだけども。何故かあなただってわかる。そして、あなたは泣いているの。脳みそだけで。」

僕はゾッとした。
何故なら僕も全く同じ夢を見ていたからだ。
僕の水槽からは美咲の脳みそが見えていて、何かを叫んでいるようだった。

「驚いた?気味が悪いよね。」
と美咲は言った。
「驚いたよ。実は僕も全く同じ夢を見ていたんだ。」
「僕から見えていた君は何かを叫んでいるようだった。」

僕たちは顔を見合わせた。

「ふたり同時に同じ夢を見るなんてどういうことなんだろう?」
僕は美咲に問いかけた。

その時、美咲の右手がジリジリと音を立てて点いたり消えたりする電気のように、点滅をはじめた。
美咲は驚いているようだったが、その目が見ているのは、美咲の右手ではなく、僕の手だった。
自分の手を見ると僕の手も美咲と同じように消えかけていた。

気がつくと、僕は脳みそだけになって温かい水の中でぷかぷかしていた。
美咲は隣の水槽にいる。

そうだった。
僕と美咲は体があった頃の記憶を頼りに高校生活を送る夢を見ていたのだ。
とても幸せな時間だった。
せめて、美咲の手を握れば良かった。
たとえ、それが幻だったとしても。
脳みそだけの僕は泣いて叫んだ。

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