花鳥風月
ケツメイシさん 『花鳥風月』の歌詞をLLMに読み込ませてプロットを書き出して、プロットから書き起こした小説です。
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線路脇の小道を抜けると、そこには見た事のないトンネルがあった。
「こんなところにトンネルなんてあったかしら」
隣でふいに声がしてびっくりして振り返った。
「えっ、小西さん。なんでここにいるの」
僕は変な声が出てしまった。
「あなたの行動があやしいからつけてたの」
「いったいどこから」
「学校からよ。決まってるでしょ」
「と言うことは、まさか僕の鼻歌も聞いちゃった?」
「聞いてないわ。なんの歌あれ。まさかケツメイシじゃないよね?」
僕は恥ずかしくて真っ赤になってしまった。
「ところで、このトンネルなんなの?入った事ある?」
「僕もはじめて見た」
「僕は本当はここに隠したブリキのおもちゃを取りに来たんだ」
「昨日思い切ってまんだらけで買ったんだ。すごく高かった。けど、僕が子供のころにおじいちゃんにもらったおもちゃに似ていたから親に内緒でお金を貯めて買ったんだ」
「そう。じゃそのおもちゃ探しにトンネルに入ってみないとね」
小西さんは、最初からトンネルに入るつもりだったんだろう。ズイズイとひとりで進んでしまう。
「待ってよ」
「こんなトンネル、中に何があるかもわからないのに勝手に入ったら危ないよ!」
僕の声は本当に出ていたのか疑わしいほど誰にも届かず、小西さんはどんどん進んで行ってしまった。
仕方なく後を追って僕もトンネルに入る。
その瞬間、猛烈な勢いで桜の花びらが僕をめがけて飛んできた。花びらの勢いで息ができないほどだった。転びそうになり何かを掴むとそれは鳥居の柱だった。なんでこんなところに鳥居が?と思ったら、鳥居の影から鳥が飛び立った。驚いて空を見上げると月が出ている。
僕は驚いて、「小西さん!」と叫んだ。
小西さんは少し先で何かをじっと見ていた。
小西さんは「お母さん」と言ったようだった。
足を引きずるようにして前へ歩いて行ってしまう。
僕は怖くてもう一度「小西さん!」と叫んで、くそっと言うと入ってきた方向へ走って戻った。
どうやって、家に帰ったのか覚えていない。
家に着くと両親は凄い勢いで抱きついてきて、ひとしきり泣くと猛烈に怒った。
どうやら僕は一週間も行方不明になっていたらしい。僕がトンネルにいた時間はたぶん、1分にも満たなかったと思うが、こちらでは一週間が経ってしまっていたようだ。
僕は理由を説明できなかった。その事で両親はまた怒ったが仕方ない。
小西さんはあれ以来帰ってこない。
まるで最初から小西さんなんていう人が存在していなかったように誰に聞いても小西さんを知っている人はいなかった。僕はおかしくなりそうだった。
あのトンネルも、あれ以来現れない。
ブリキのおもちゃもなくなってしまった。
まるでブリキのおもちゃが小西さんをどこかに連れて行ってしまったようだ。
小西さんは、会いたかった人に会えたのだろうか。
いつかまた会えたらいいな。