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First Times

Ed Sheeranさん 『First Times』の歌詞をLLMに読み込ませてプロットを書き出して、プロットから書き起こした小説です。

涼介は武道館でのコンサートを拍手喝采のうちに終えた。
満員の会場は拍手で溢れんばかりの大盛況だった。
涼介は笑顔で舞台を下りると真顔になり足早に走り始めた。
「マネージャー、状況は?」
涼介はマネージャーに聞いた。
マネージャーは答えた。
「よくありません。母子ともに危険な状態です」
涼介は険しい表情で車に乗り込み病院へ急いだ。

武道館でコンサートをする事は涼介の夢だった。
その夢は叶ったが涼介には嬉しさより、虚しさが充満していた。美咲のいない世界で歌なんて歌って何になる?
生徒がひとりもいない朝礼のように無意味だ。

美咲は孤独だった。
中野のブロードウェイで深夜、弾き語りをしていると必ず火曜日の夜にひょこっと座って歌を聴きに来た。
不釣り合いに厚く塗った化粧にジーンズとパーカーの姿が何だか可笑しくて笑うと、怒った。

僕たちは19歳で、奨学金で高校へ行っていた19歳にとって昼の仕事だけで生活できるほど東京は甘くはなかった。
美咲はいつもエドシーランの曲をリクエストした。
「彼の歌は」と美咲は言った。
「いつも悲しそうなのが、なんかいい」

美咲が家の更新をどうしようか迷っている時に「だったら僕と一緒に住もう」と誘った。
美咲は何度も「本気?」と聞いた。
「今からやっぱりやめたと言われても行くところないよ。居座るからね!」となぜかキレ気味で言った。
美咲は今でも僕の言う事を何度も「本気?」と聞き返す。
でも僕は嘘をついた事も大事な事を誤魔化した事もない。
彼女は信じないけどいつだって本気なのだ。

僕の家に小さな荷物だけを持って引っ越してきた美咲と僕は、はじめてのキスをした。
そして美咲は「本気?」と聞いた。
その度に僕は真剣な顔で答えたけど、それがいけなかったのかもしれない。
僕の真剣な顔はちっとも真剣に見えない。

はじめてふたりでデートをした時、ふたりともはじめての遊園地のパラシュートだったから、それがどんなに恐ろしい乗り物なのかすら知らずに気軽に乗ってしまった。
僕は腰が抜けそうになり、美咲はそんな僕を見てずっと笑っていた。

はじめての夜、美咲はずっと僕の顔を見つめていた。
今にも「本気?」と聞きたそうな顔をしていたが、珍しく美咲は何も言わなかった。

子供が出来たことがわかった時、僕は子供と美咲に向けた歌を作って歌った。はじめて美咲は僕の歌で泣いた。

美咲は体が弱かったから、子供を産むことはかなりのリスクだと医者に言われた。
それでも美咲は子供を産みたがった。
まるでそれが自分が生まれてきた意味だと言い張るように。

僕はどんなことになろうとも美咲と子供を守ると決めた。
僕の人生の、すべてのはじめては美咲と一緒に乗り越えてきたし、それはこれからも変わらない。変わらせはしない。


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