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小説『闇に堕ちにて、空に溶けゆく』8/31(土) 【第42話 2か月後】

翔「さあて、裕奈ちゃん、今日10月25日は、
何の日でしょうか?」
台本はないのでアドリブで答える。

裕奈「今日、19日だけど、、妄想し過ぎて、
とうとう、カレンダーまで読めなくなった?」
 
翔「違うって、この動画を配信しているのが、
25日なんだって。裕奈ちゃん本当にYouTuber?
でも、そんな天然な、裕奈ちゃんを
放っておけないから、僕たち、
いつもラブラブなんだけどね」
 
裕奈「相変わらず気持ち悪い事を言わせたら
世界レベルだよね。で、なに、25日が?」

翔「あれ?裕奈ちゃん、まだ気づかないの?
あ、なんかサプライズしようとたくらんで、
わざと気づいてないフリをしているのかな? 

そう、今日25日は裕奈ちゃんの恋人である、
この私の誕生日でーす!」
 
裕奈「いや、ほんとに、知らんかったわ。
あ、誕生日なの、おめでとう。
じゃあ、お疲れ様でしたー」

翔「おい、コラ!大切な彼氏の誕生日に、
お疲れ様でしたーは、ないでしょ!」
 
裕奈「いや、恋人じゃないし、、、
それで誕生日はわかったけど。だから、何?  
こんなところに呼び出して」

翔「さすが裕奈ちゃん、よくぞ言ってくれた!
ほら、僕イタリア生まれで、イタリア料理が
大好きじゃないですか?」

裕奈「お疲れ様でしたー」
 
翔「ちょっと、裕奈ちゃん、帰っちゃだめ!
お願いだから聞いて。有名イタリアンと
言えばサイゼリアでしょ?」

裕奈「いや、確かに有名ではあるけど」
 
翔「高校生の僕たちにとってサイゼリアって、
リーズナブルで、“神”でしょ?」

裕奈「まあ、たしかに。それは認める」
 
翔「そんな“神”イタリアン、サイゼリアで、
彼女なら、大好きな彼の大好物を絶対に、
当てられる説、企画!」

裕奈「何、それ?」
 
翔「実はこの封筒にあらかじめ僕が書いた、
サイゼリアで『好きなメニューベスト5』が
入ってます。

で、裕奈ちゃんには、ベスト5を予想して
注文をしてもらいます。そして、
このベスト5が当てるまで注文をし続けます。

食べ物を残すと炎上するから、勿論、
注文した料理は正解、不正解に関わらず、
すべてを2人で協力して、
完食しなければなりません。」
 
裕奈「それ、帰れま10のパクリ?」

翔「何言ってんの??こんな企画は、
今までどこでも見たことないでしょう?  
おまけに、お支払いは裕奈ちゃんです」
 
裕奈「ちょっと待ってよ!なんで? 
なんで私が、こんなところまで
付き合わされた挙句に奢らなきゃいけないの」

翔「だって彼氏の誕生日だからさぁ。
ただね、裕奈ちゃんが10品以内に
正解できた場合は、特別に、
私が半分出します。」
 
裕奈「半分かよ!ケチだな、あんた」

翔「ケチって言うなよ、誕生日ぐらい、
もっと優しくしろよ」

裕奈「まあいいや、確かにお腹すいてるし。
でも、この企画、面白いかなぁ?」

翔「どんな企画でも面白くするのが
YouTuberなの!自覚ある?」

裕奈「丸投げなの? キツっ!」
 
翔「とにかく2人で協力していくことが大切。
で、もしも、ベスト5を当てられないまま、
2人ともお腹いっぱいになり、
ギブアップしたらチャレンジ失敗です」

裕奈「そうでしょうね、本家も同じだから、
それはだいたいわかるけど、それが何?」
 
翔「さすが裕奈ちゃん、なんか感じとった?
いい勘しているね? 今日10月25日、
まあ撮影日は10月19日ですけど、
今日から毎週、チャレンジ企画の動画を、
約2か月間あげます。

チャレンジが失敗したらそこで終了。
しかし成功し続けて、2か月後を迎えると、
12月14日にユナショウチャンネル初の、
ライブ配信を行います。

そしてできれば、そこまでに
登録者数10万人を目指す」
 
裕奈「それだと、途中で失敗したら
そこでコンビ解散になるのかな、ワクワク」

翔「いや、失敗したとしても解散しません。 
 ただ、がっかりするだけです」

裕奈「なにそれ?まさかのノーリスク企画!
それよりも2か月で10万人は無理でしょ?
あと、なんで2か月後?」

翔「だって2か月後の12月14日は、
僕の恋人、裕奈ちゃんの誕生日でしょ?」
 
裕奈「マジで、きしょい? 
え、っていうか、何で知っているの、
私の誕生日?」

翔「それでは、チャレンジ行ってみよう!」

裕奈「おい、ごまかすな!」
ここで、翔が声をかけた「はい、オッケー」
 
機材を片付けている翔に、私は聞いた。
裕奈「私、誕生日って、言ったっけ?」
 
翔「え?本当に覚えてなかった?
以前、クリスマス企画の出し合いのときに、
『クリスマス10日前が、私誕生日なんだ。
それと絡めた企画でいいかもしれない』
って、櫻井、言ってたよ」
 
そのシーンは、断片的には覚えている。
言ったのは間違いないと思いながら、言った。
 
裕奈「翔の記憶力、凄いよね。
結構、記念日を覚えるタイプなんだね」
翔は返した。

翔「普段はわからないけど
櫻井の事に関しては割と覚えているかな」
 
私は、翔の顔を覗き込みながら言った。
「へー『私のことなら!』なんだ」
翔は慌てて返した。

翔「いやチャンネルプロデューサーだから」 
私は、もう一度、翔の顔を覗き込んだ。

裕奈「へー、まあいいわ、じゃあ移動しよ」
 
私は翔の返事を聞くことなく、
荷物の一つを持って、先に歩き出した。

翔が慌てて、私の後をついてくる。
 
(第42話 終わり) 次回9/3(火)投稿予定


 
★過去の投稿は、こちらのリンクから↓
https://note.com/cofc/n/n50223731fda0

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