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小説『闇に堕ちにて、空に溶けゆく』9/26(木) 【第53話 搬送】

翌日、学校でいつものように、翔をはじめ、
クラスメイト達と楽しい時間を過ごしている。

その時、担任の先生が私を呼んだ。
そして、廊下に出た私に言った。
 
「お母さんが職場で倒れて病院に運ばれた。
すぐ帰りなさい」

私は、頭が真っ白になった。席に戻り、
翔に事情を話し、帰る準備をした。
翔が病院名を聞いてきたので、
先生から聞いた病院名を伝えた。
 
私は先生から渡されたメモを見ながら、
スマホで検索をした。
先生が予め、行き方も調べて、
記してくれたメモだ。

病院の最寄り駅からはバスだが、
バスの本数を調べると、余り多くなく、
駅からはタクシーで行くことにした。

 
病院に着いてから、母がいる
病室まで行くと、母がベッドで寝てた。

横に、母の職場の人と思われる
女性が付き添ってくれていた。
挨拶とお礼を言うと、
女性は柔らかい表情で返した。
 
「櫻井さんの娘さんね。びっくりしたでしょ、
ごめんなさないね。どうも貧血だったみたい。
検査もして、詳細な結果は後日みたいだけど、
ひとまず、心配はないみたいよ。
 
ただ、念のため検査結果が出るまでは、
入院することにはなるみたい。
先生から後で、直接、お話があると思う。」

私は安心し、同僚の方に改めてお礼を言った。
そして、後は、大丈夫ですとも伝えた。
 
その同僚の方は頷き「暫くお休みになる事は
私から職場には伝えておくので大丈夫ですよ」
と言い、病室を立ち去っていった。
 
母は寝ていたが、その後先生に呼ばれた。
先生からは、同僚の方に聞いたのと
同じ内容を聞いた。

レントゲン結果は問題なかったので、
血液検査の結果で、問題なければ
大丈夫ということだった。

ただ一時的だったが、病院に運ばれた時、
かなり血圧が下がっていたので、
念のため入院を勧められた。
 
病室に戻ると、母が目覚めていた。
母は何度も私に「ごめんね、大丈夫だから」
と繰り返す。

お酒さえ飲まなければ、本当に、
いい人なのに、と思った。
 

とりあえず4日分の着替えを取りに行くと、
母と看護師さんに伝え、病室を出た。

病室で切っていたスマホの電源を
つけるとLINEの通知が来ていた。
翔の姉の凛だった。実は、
凛とはLINE交換をしていた。
 
「翔に聞いた。今から私も病院に行くから、
連絡できるようになったらLINEをちょうだい」
と書いてあった。

私が慌てて
「すみません、電源切ってたので」
と返すと、すぐに
「大丈夫。一階の受付前に居るけど、
裕奈ちゃん、どこ」と返ってきた。
 
私は、「入院する事になったので、
着替えを取りに帰るため、今、
一階に降りてるます」と返した。

すぐに既読がつき返事がきた
「オケ、自動ドアのところにいる」 
私は、小走りでその場所に向かった。
 
私は、凛に小走りで駆け寄り、
慌てて言った。
「お姉さん、すみません。」
凛は返した。

凛「大丈夫。それより、お母さん、
入院って、大丈夫なの?」私は返した。
 
裕奈「大丈夫です。レントゲンや、
簡単な検査では、問題なかったみたいです。
搬送された時、貧血が酷かったので、
他の検査結果出るまで念のためらしいです」 凛は、少し表情が、やわらいで言った。
 
凛「そうか、大事でなさそうで良かった。
裕奈ちゃん、私、今日は車で来ているから、
車で裕奈ちゃん家と、病院を往復しよう。」 
その言葉に、私は慌てて言った。
 
裕奈「いや、そんな悪いです。
バスと電車で、行けますから」
そう言ったときには、既に、
凛は駐車場に歩き出していた。

そして「いいから、こっちよ」という言葉に、
私は引っ張られるように、後を追いかけた。
 
病院から自宅まで、公共交通機関を使うと、
乗り継ぎ含め、1時間半はかかるが、
車だと40分程みたいだ。
車の中で凛と会話が弾んだ。
 
初めは母に持病があるの?などの
話題だったが、自然と翔との話になった。

凛から聞いたが、翔は、動画の中の、
私のコメントや演技が良いポイントを、
家族に熱く語るらしい。

私は思わず「頼むから、そんなことしないで」
と言ってしまった。笑いながら凛が言った。
 
凛「そんなに好きなら、
早く、告れよって、言うんだけどね。
そう言えば、お父さんから、
翔の生い立ち聞いたでしょ?

それもあるから、なかなか踏み出せないのよ、
あの子。

だからね、気長に待ってあげて。
とは言え、翔にも言ったけど、
恋と女は賞味期限がある、
いつまでもウジウジしてるなら、
遠慮せずに見切りをつけてもいいよ。
 
でも翔と別れても、私とは友達でいてよね。
ちなみにお父さんも、お母さんも言ってる。
翔と別れたとしても、裕奈ちゃんには
実の娘になってほしいって」
私は笑いながら言った。
 
「いや別れるも何も、まだ付き合ってません」
凛も笑いながら言った「あ、そうだね」
 
幸いにして大事ではなさそうだが、
とは言え、母が病院へ搬送され
本来ならぐったりしそうな一日のはずが、
凛のおかげで、気は紛れていた。
 
(第53話 終わり) 次回9/28(土)投稿予定

★過去の投稿は、こちらのリンクから↓
https://note.com/cofc/n/n50223731fda0

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