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小説『闇に堕ちにて、空に溶けゆく』6/4(火) 【第11話 バスルームから愛をこめて】

先にシャワーを浴びていると、
晴香が洗面所に入ってきた音がした。
そして、暫くして晴香の声がした。
 
晴香「ねえ、今から入るよ。
恥ずかしいから、向こうをむいてて」
私はわかったと言いドアに背を向け
シャワーのお湯を浴びていた。

ドアが開く音が聞こえ、晴香の気配を
背中に、しっかりと感じた。
と、次の瞬間、晴香が私の背中に体を寄せた。
そして、言葉を発した。
 
晴香「寒いから私も一緒に浴びたい。
こうして身体をくっつけたら、
一緒に浴びれるでしょ?」
 
私は晴香の温もりと柔らかさを背中に感じた。
そして、一通り2人の体にお湯がかかった
タイミングで振り返り、晴香に言った。
 
拓也「身体洗ってあげるよ」
 
私は晴香の反応を確かめることをしないまま、
手にボディソープをつけて、
胸を隠していた、晴香の手を握った。

気のせいかもしれないが、
晴香がその手を握り返したような気がした。

私が二の腕から始まり肘、指先となぞるように
指先を移動させたので、胸の前にあった手が、
胸の前から下に降りた。私は露になった
晴香の美しい体に釘付けだった。

これまで、身体を重ね合うときには、
いつも部屋の電気を消すのでシルエットしか、
わからならかったのだが、
とても30代後半とは思えない、
美しい身体と、透き通る肌だった。
 
私の手が、晴香の体に触れたまま
動きを止め、美しさを直に感じていると、
晴香はおもむろに自分の手にも
ボディソープをつけて、言った。
 
晴香「私も洗ってあげる」 
 
その言葉の後、私の反応を確かめることなく、
晴香は私の身体に触れて、美しい手を動かした
 
一通り、互いの身体を洗い終わると、
互いにシャワーのお湯を浴びせ、
泡を流し始めた。

そして、綺麗に泡が流れ、シャワーを止め、
元の位置に戻したのが、合図かのように
私は晴香を抱きしめた。
そして晴香も抱きしめ返してきた。
 
その後2人は何度も、何度も愛を確かめあった
バスルームなので、声が普段よりも響く。
晴香は、必死に声を押し殺していた。
 
事が終わり乱れていた2人の呼吸が落ち着き、
お互いの身体をシャワーで洗い流した。
そして晴香は言った。
 
晴香「恥ずかしいから、先に出て。
それに、髪を乾かすの時間かかると思うから」
その言葉に、私は頷いて、晴香に言った。
 
拓也「わかった。ドライヤーが棚に
入っているから、自由に使ってね」
 
晴香の「ありがとう。」という言葉に頷き、
私は、バスルームから出た。
 
晴香を待たせないよう手早く服を着ている時に
脱衣場にある晴香が持ってきた袋に気づいた。

その袋の口が少し開いていた。
中を見ようとしたわけではないが
中に入ってる替えの下着が見えた。
今日晴香は最初からそのつもりだったようだ。
 
服を着てから、バスルームのドア越しに晴香に
「自分の部屋で髪は乾かすから、
もう出ても、大丈夫だよ」と声をかけた。

晴香の「ありがとう」という
言葉を聞きながら洗面所の扉を閉めた。
 
私は、自分の部屋で髪を手早く乾かしたあと、
リビングに戻った。
レコードコレクションからボサノバを選んで、
レコード盤に置いた。テーブルにあった、
飲みかけのワインを一旦、片付けた。

そして、キッチン棚から
ミキシンググラスを、出した。
ミキシンググラスに氷を入れかき混ぜてから、
ウォッカとオレンジジュースを手早く入れた。

カクテルグラスを探すのに手間取ったが、
何とか見つけ、ミキシンググラスから注いだ。
リビングに持ってきたタイミングで、
ちょうど晴香が入ってきた。そして言った。
 
晴香「あれ?こっちだったんだ。
明かりもついていたから、
てっきり寝室かと思って」
 
そう言えば寝室の明かりを消し忘れていた事に
気づいた。晴香に言った。
 
拓也「もうちょっとだけ飲まない。
カクテルを作った。その前に、水分補給して。
まずは水を飲んでね」

そう言って、ペットボトルの水を差しだした。
晴香は「ありがとう」、
と言って、受け取り、一口飲んだ。
 
そんな晴香の格好はパジャマ姿だった。
これも準備してきたのだろう。
誰でもそうかもしれないが
パジャマを着ると、少し雅なく見える。
晴香はゆっくりと私の横に腰を下ろした。
 
今晩は、もっと晴香を感じていたいと思った。
そして、それ以上に心で繋がりたいと思った。
私は晴香の肩を抱き寄せたまま、
静かに時間を過ごした。
 
時折、晴香が「いい曲だね、この曲」と、
言うぐらいで、言葉は特になかった。
だが2人とも互いを感じながら過ごす時間が、
至福のように思えた。
 
時計の針が12時を回ったのに気づいて、
私は、晴香に言った。
拓也「そろそろ寝ようか?」
その言葉に、晴香はうなずいた。
 
私は、晴香の手を取り、ベッドに横たわった。
その夜は、晴香を抱き寄せ眠りについた。

(第11話 終わり)次回は6/6(木)投稿予定

★過去の投稿は、こちらのリンクから↓
https://note.com/cofc/n/n50223731fda0

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