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小説『闇に堕ちにて、空に溶けゆく』6/13(木) 【第15話 思考の果てに】

私が、晴香と初めて出会った日のことを
思い出し、心地よい回想に浸っていると、
遠くから晴香の声が聞こえた。

晴香「ねえ、どうしたの拓也?
ボーッとして?具合悪いの?」
その声で現実世界に戻った。

拓也「ごめんごめん。さっきの晴香の言葉で、
晴香とはじめて話をした日を思い出してた。
病院初日に食堂で話かけてくれた時のこと」

晴香「拓也、覚えていたんだ、あの日のこと?
でも拓也は変わってないよね、凄いと思うよ。
拓也って、いつも何かに媚びへつらう事なく、
自分の意見を言う。

まあ、それで色々と苦労してるのは知ってる。
でも、そんな拓也を見てると
『この人なら本当にやるかもしれない』
って、今でも思っている。
 
だから、何となく、拓也を、他の先生よりも、
注意深く見ていたかもしれない。
まあ、あの時言ってた“若い看護師さんに”の
くだりも気になっていたのもあるけどね」
 
そう言って晴香は笑ったが、晴香が言った
 “若い看護師”のことは何のことかわからない。
素直にそう言うと、晴香は少し驚いて、
再び、笑いながら言った。
 
晴香「本当に覚えてないの?都合いいやつだ。
あの時目を泳がせながら、
『僕の挨拶、なんかスベってましたよね?
ヤバいな、医者になれば若い看護師さんと、
いい感じになることを想像していたんたけど、
陰キャ確定かな?勿体ないことしたなあ』
って言ってたよ。
 
だから私は、うちの若い子たちがつまみ食いを
されないよう、見張っていたのもあるけどね。

私みたいなオバちゃんはどっちにしても
眼中になかったみたいだし」
晴香は追い打ちをかけるように
意地悪な表情で私の顔を覗き込んだ。

恐らく、5年前のその言葉は『照れ隠し』で、
本当に言ったとは思うのだが全く覚えてない。

そんな気まずさを誤魔化すため、
少しおどて、晴香に向かって言った。
 
拓也「え?晴香、そんなこと本気にしてたの?
じゃあ、今、2人で居るのはなぜだと思う?」
その問いに特に深い意味もない。
その場しのぎの言葉だ。晴香は返した。
 
晴香「ええ、なんで?」
そのまま自分に返ってきた。
ふざけて返してもよかったのだが、少しだけ、
自分の本心を混ぜてみるのもいいと思った。
 
拓也「晴香と居る時間が
何よりかけがえのないものだと気づいている」
晴香はまだ面白がって返した。
 
晴香「かっこいいこと言うね!
でも本当は熟女趣味が芽生えて
オバちゃんと色んなことをしてみたい、
と思っただけじゃないの?」
 
晴香が“カマ”をかけているのがわかった。
私はあえてそれに乗り、
自分の気持ちを隠さず言葉にした。
 
拓也「そう思ってるんだ?晴香と何がしたい?
って聞かれたら、ずっと、キスしていたい!   
キスして、晴香のことを近くに感じたら、
それだけでいい。それ以上は、何も望まない」
晴香は、本気にせず、言った。
 
晴香「ねえ、じゃあ、今すぐキスして!
でも、それ以上はダメだからね」 
あえて晴香の「冗談」に気づかないフリをし、
晴香の体に手をまわして言った。
 
拓也「晴香、愛している」そう言って、
晴香の唇に、自分の唇を重ねた。
晴香は「本気」には気づかず、笑っている。

それに構わず晴香を見つめてキスを続ける。
時折、自分の舌を晴香の舌に絡ませた。
 
言葉を発することなく唇を重ねて、
晴香の顔を見つめる事を繰り返した。

時計は見ていないので正確には
わからないが、5分は経っていたと思う。
最初のうちは茶化していた晴香だったが、
徐々に溶けるような表情になっていた。
 
もう何度目かわからない口づけで、
自分の舌を晴香の舌に絡ませると、
吐息が室内に響いた。

それに構わず舌を奥にからませると、
息だけでない高い声が漏れ、
そして晴香の呼吸が荒くなってきた。
 
それが少し心配にはなったが
さらに晴香を強く抱きしめた。
そして自分の舌を晴香の舌に絡みつかせた。

晴香が呼吸が高ぶり、声が漏れて
いることにも気づかず続けてた。
すると晴香の身体が小刻みに震えると
同時に、高い声が漏れた。 

晴香から離れると、
まだ小刻みな震えを続け、
呼吸が深く乱れている。

さすがに心配になり、声をかけた。
 拓也「ごめん、大丈夫?、
苦しくない?もう、やめるから」

晴香は呼吸を整えながら、その言葉に返した。
晴香「やめるなんてダメに決まってるでしょ?
それ、わざと?」
 
私は、本当に晴香の異変を心配していたので、
すぐには、言葉の意味を理解できなかった。
そんな混乱もかまわず、今度は晴香の方から、
私に覆いかぶさり、そして舌を絡ませてきた。
 
自分の呼吸を保つのが、精一杯の
状況の中で、晴香を受け止めると、
晴香が再び、高い声を漏らしはじめていた。

そして絡みついた舌は私の唇から離れて、
体に沿って下がっていった。

刺激を受けた私は断続的に
頭の中が溶けるような感覚を味わい、
気づけば今度は、私が息を漏らしていた。
 
(第15話 終わり)次回は6/15(土)投稿予定

★過去の投稿は、こちらのリンクから↓
https://note.com/cofc/n/n50223731fda0

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