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sweet memories

1983年。僕は小学6年生だった。

テレビではアニメの可愛いペンギンが甘いジャズナンバーを歌っている。
ジャズナンバーなのに可愛いペンギンのアニメ。
その不釣り合いな組み合わせが目を引く。

そのペンギンは英語で歌っている。
何を歌っているのかはわからないが
わかりやすいメロディと甘い歌声に一度聞いただけで記憶してしまう。
英語はわからなかったけど。

そしてそれが「サントリーの缶ビール」のCMだと言うことも記憶した。
CMの効果ってこう言うことを言うのかと今になって実感する。

そのCMソング。誰が歌っているのかはわからない。

もう一度聴きたくてもCMゆえにいつ流れるかわからないしそれを待つほど小学生は遊びの方が大事で暇じゃない。
時折流れる「サントリー缶ビール」のCM。
相変わらず誰が歌っているかはわからない。

「あれ、聖子ちゃんだってよ!!」
「ええっ!本当に?!」

学校から帰った姉が言う。
聖子ちゃん?あの「天国のキッス」を伸びやかに歌っている聖子ちゃん?
この曲の前に松田聖子は「天国のキッス」というまさに松田聖子を凝縮したようなポップで底抜けに明るくそして不思議で難しい曲をリリースしていた。

ちょっとした衝撃だった。イメージが追いつかなかった。多分送り手もそこを懸念したのかそれとも話題作りのためか、歌手名を伏せたのだろう。

それに曲の2番は英語詞だ。曲の途中から英語に変わる曲なんて聴いたこともなかった。でもその部分が歌いたくて姉と「ヤンソン」などを見て練習した。意味などわからなくても歌っていた。

今ではスタンダードナンバーの「sweet memories」も当時はあまり好きではなかった。確かに耳を引く、小学生が聞いても綺麗なメロディだった。でも元気盛りの小学生はバラードよりもポップなアップナンバーの方を好んで聴いた。

それにこの「sweet memories」は当初B面。
今でいうカップリングの扱いだったのでテレビでの歌唱もA面だった「ガラスの林檎」の方が多かった。なのであまりテレビでこの曲を歌っているのも見た記憶がない。

さて発売から41年。ヒーっ!月日の流れの速さに字面で見るとびっくりするがその間、この「sweet memories」はいくつものバージョンが生まれてきた。

ペンギンのアニメはのちに映画化され劇伴のために「シネマバージョンとリミックスバージョン」が出来た。
発売から約10年経った1992年「sweet memories new version」が生まれそして翌年1993年「sweet memories english new version」、2020年には英語詞部分を日本語詞に替えた「sweet memories〜甘い記憶〜」が誕生した。
このバージョンは作詞の松本隆が日本語詞を書き加えたとされているがライナーノーツでは当時の直筆の原稿が認められる。

僕は「sweet memories new version」が好きだ。

大人になった聖子ちゃんの甘い円熟したボーカルと鳥山雄司の泣かせるギターがつい曲を口づまさせる。
そう!この「sweet memories」は僕の十八番である。ははっ。
この曲は色々な男性アーティストもカバーしているおかげで男性が歌っても許される曲である。
カラオケなどは行かないが歌う機会がある時は間違いなく選曲する(笑)

ところで現在の最新バージョンである「sweet memories〜甘い記憶〜」を聴くとその自然さに驚く。
当時はデビュー40周年。歌い方も技巧に走ったりしてもいいようなものだが(聖子ちゃんの場合は上手すぎて技巧さえも自然に駆使するので普通に聴いていると気がつかない)
変に力まずサラッと歌う姿が
逆に過ぎた月日を回想するこの曲の切なさをかえって強調する。

僕も歌いながら涙腺崩壊必至である。

歌う気満々

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