coeurcrepe 作品集

クレープストーリーとは違ったテイストの作品集

coeurcrepe 作品集

クレープストーリーとは違ったテイストの作品集

最近の記事

真っ白い心

真っ青な青空。 窓を開けてキンッと冷えた空気に一気に目が覚める。 窓の外に広がる早朝のゲレンデはまるでサテンをなめしたように朝日を浴びて キラキラ輝いている。 足跡ひとつないまっさらな雪を見ていると心が穏やかになる。 ゲレンデに面した可愛いホテル。 夕食に間に合うように早めに現地へ向かおうと待ち合わせた。 余裕で向かったつもりが連休前の高速はやはり渋滞を繰り返し最寄りのインターに着いた頃にはとっくに日が暮れていた。 おまけに途中から酷い吹雪に見舞われれ視界の悪い。 なるべく

    • クリスマスの思い出。

      「はあっ!はあっ!」 白い息が後ろへ流れてゆく。 11月だというのに気温がぐっと下がって 特に今日は10℃を下回るほどの寒さだ。 その分空もキリッと冴え渡ってスカイブルーの絵の具をいっぱいまで伸ばし切っている。 こんな風にいちいち浸っているから遅刻しそうになるのだ。 もう通勤時間も過ぎ人影もまばらな通り。 学校までこの直線を走り切れば西の校門が見える。 「はあっ!はあっ!」 自分の呼吸とは違うリズムの呼吸音に一瞬ハッとする。 気がつくと隣に人がいた。 見ると同じ高校の男子

      • キャラメリゼ アーモンド

        木枯らし一番が窓ガラスを叩いたら 暖炉の前にソファーを動かして テーブルを広げて 薪を集めて炎を灯す。 キャラメルを溶かしてフォンデュ。 アーモンドにたっぷりかけるの。 クレープ生地に巻いて二人だけのささやかなパーティ。 ホイップクリームを鼻の頭につけて慌ててハンカチーフを探しているあなた。 そんなあなたが急に愛おしくなって背中からギュッと抱きしめた。 幸せね・・。 今年の冬もその先もずっとずっと一緒にいようね。 キャラメリゼアーモンド 千本ノック   17/10

        • 素直さを教えてくれた人

          「俺の事覚えていますか••」 夕方の人の波が段々増え行き交う人たちをバックにその人だけが浮き上がるように見えている。 忘れるはずがない。 あの頃はコロナ禍でいつもマスクをしていた。 でも特徴的な目元とその柔らかそうな髪。 今はもうコロナ禍も終わりマスクは外していた。 マスク下の顔を幾度も想像していたので全体像を見てもさほど印象とズレていない。 「もちろん覚えているよ。久しぶり。元気だった?」 頬が紅潮して行くのが自分でもわかる。 上手く笑顔が作れているかとても気に

          私だけの庭

          カフェの中庭には溢れるほどの陽光が降り注いでいる。 この店の中庭には沢山の緑が植えられ,11時オープンの前にスタッフが水を与えたのであろう緑の葉には水晶のような水玉が鈴なりなり葉の光を反射してみずみずしく光り輝いている。 その緑の真ん中に二人がけのテーブルが三つ置かれている。 私はその中の一つに腰を掛け運ばれてきたアールグレーのカップを傾けている。 木々は地面から水分をたっぷり吸い込むように葉の一枚一枚をシャッキリさせて太陽に向かって思いっきり伸びをしているように活き

          蒼い朝

          雨が降っていた。 蒼い朝は嫌いだ。 朝はその人の本当の姿をあぶり出す。 だから僕は何かに迷ったときは朝起きた瞬間に思ったことを答えにしている。 ここ数日僕の朝は蒼い。 突然の恋の終わり あんなに楽しく二人で過ごしていたじゃない。 さっきまで君が座っていた今は誰も居ない空間。 目の前のティーカップからはまだ湯気が立ち上っている。 「何がいけなかった?」 「僕が何かをしたのか?」 答えが欲しくて何度もスマホの君の番号を画面に映し出す。 でももうかけることは出来

          全ては雨のせい

          稲光りが青白く光る蜘蛛の糸を空に張り巡らす。 「もうすぐ止むかしら」 誰も居ない寂れた商店街 閉まっている店先の軒下で雨宿りしながら 携帯の天気アプリを取り出そうとしたとき 「ドカンッ!!」 と地響きにも似た大きな音を立てて稲妻が落ちた。 その音に合わせて男の人が私のいる軒下へ駆け込んできた。 さっきの落雷に驚いて軒の奥へ入っていた私の前にその男性が背中を向けて立っている。 白い半袖シャツを素肌に着ているのか雨で濡れて背中が透けている。 雨足がさっきより少し強くなっ

          全ては雨のせい

          消えぬ情熱

          夏草の土手の道 胸いっぱいに空気を吸い込んだ 夏の風の中に 懐かしい香りに 思い出した気持ち きっとあの日が始まり 青空の中に夢中で駆け出す そこには明日が見える 風を追い越してどこまでも行こう 輝く未来へと歩き出す 川沿いの野球場 手にボール大事に握りしめて ノックにしがみつく草野球の少年 あの頃の情熱 きっとどこかにあるはず 夏雲広がる空を見上げたら 心に広がる希望 明日へつながる未来への扉 迷わずノックして onestep   開けようよ あの夢にまた歩き出せと

          友情試練

          秘密のキスなら完璧に・・。 油断した途端綻びはじめ 全てが明るみに出るのは時間の問題。 夢の夜につい時間を忘れチラッと盗み見た彼の時計が21時を告げようとしていた。食事をしているだけとはいえお互いパートナーがいる身でこれ以上は危険領域。ちょっと早いシンデレラリバティ。 切り上げ時が肝心だ。 ここから走れば21時8分の電車に間に合うはず。 飲みかけのワインがグラスの1/3残って真っ白いクロスの上に薄紫のシルエットを揺らしている。 お会計と言いかけたのを彼が静かに首を振って

          遺さなくていいもの

          「二人で写真を撮りたい」 一緒にディナーを食べながらワガママを言った。 最近ちょっとしたことで不安になる。 目の前に確かに幸せがあるのにどこか頼りなく 指の間をスルリとすり抜けて行ってしまうのでは無いかと気持ちがザワつく。 たった今幸せと感じていても明日何が起こるか分からない。 来週もまた逢えるとわかっていても 「電話するよ」というようなちょっとした約束でも確約が欲しい。 確かに叶うと保障して欲しい。 だから何度も約束を聞き返す。 輝いた季節を引き留めたくて今を写真に

          遺さなくていいもの

          雨の海

          緑の中の露天風呂 さっきまで木漏れ日が降り注いでいた森に一瞬でホワイトグレーの霧が立ち込める。 雨雲は大きなシャワーヘッド 高原の雨は蛇口を全開にしたように降りしきっているけれどどこか優しい。 艶めく木々にたっぷりと降り注ぐ銀の雨を見上げているとα波が溢れだす。 雨音はサラウンド 雨が激しさを増すほどに心の海は穏やかに凪いでゆく。 包まれながら周りの音が消え遥かな記憶が雨の海に溶け出していく。 みるみる、みるみる広がって、広がって形もなくなるほどに薄まって流れ去ってゆ

          恋の向こう側

          蝋燭の炎が映る瞳に見とれていると だんだんと距離を縮める熱い吐息 なかなか触れない唇に焦れったくなって 私から口づけた。 夢、夢を見ている。 長い間見ていた夢が・・。 恋が成就する夢。 でも夢が叶ったら次はどうするの? そう思ったら一気に覚めた。 唇が熱を帯びる前に 迷わず私は引き返した。 今ならまだ友だちに戻れるだろうか? こんなに魅力的な男を私は簡単に失いたくはない。 恋が実ってそれが愛に変わったとしても長いライフステージの中で二人の関係は知らぬ間に変化していく

          友達>恋人

          恋は煩わしいと思っても ルーレットは勝手に回りだす パスする余裕も大人の嗜み。 要らぬ傷を増やすくらいなら 友達になったほうがよっぽど健康的 一秒でいいから恋人になりたい。 それよりも 今は 一秒でも永く大切な友達でいてほしい。 一人でも多くの大切な人でいてほしい。 千本ノック  7/1000

          幸せな淋しさ

          いつからだろう。 君の横顔を盗みみる癖がついたのは。 君に嫌われやしないかと言葉を選ぶようになったのは。 一緒に過ごす時間をどれだけ積み重ねても 想いの深さは埋まらない。 どれだけ身体を重ね合わせても 君とひとつになることは決して出来ない。  きっとこれが幸せな淋しさなんだね。

          懐かしさの向こう側

          夕暮れの人並みが行き交うアーケード。 目と目が合ったときあなたは一瞬たじろいたように瞳を逸らせたけど私はおもわず声を掛けていた。 4年ぶりかしら? 元気だった? 他愛のない会話から今のあなたが見えてくる。 溢れる懐かしさを今という時が堰きとめる。 変わらない人など居ない 連絡先は聞かなかったわ。 もう会うことはないかしら? それとも次に会うときはもっと深く話せる人になっているかしら? 淡い期待を胸に人並みに紛れてゆく背中を見送っていた。 千本ノック  5/1000

          懐かしさの向こう側

          二人の恋人

          逢えない寂しさなんて感じる暇もなく 野生と知性 優しさと逞しさ 安らぎと危うさ それぞれの輝き 唯一無二の魅力 均衡を保つ愛の熱量 秩序良く宇宙を周回する惑星のように。 かけがえのない恋人が二人もいるなんて とても幸せなこと。 千本ノック   4/1000