意見表明権と小林先生
うちの病院の院内報に毎月書いているコラムです(800字)。小児の診療をしていて感じる、とりとめもないことを書いています。2022年12月号です。
11月は児童虐待防止推進月間でした。雲ひとつない小春日和、私は児童相談所主催の講演会で、にじいろCAP代表理事の重永侑紀さんの講演「子どもの権利とまちづくり」を聴きました。にじいろCAPは独自の教育プログラムを用いて様々な年代を対象にワークショップを開催し、子どもの権利を守り、子どものこころと命を守る地域づくりを目指すNPO法人です。講演では1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」を元に子どもの権利について学びました(図参照)。来年4月交付の子ども基本法もこの条約が元になっており、改めて学ぶことができて有意義でした。特に子どもの発達段階に応じた「意見表明権」について詳しく学びました。子どもが自分のことについて自由に意見を表すことができる権利です。この権利を守るために、大人は話すまでを支援する「意見形成支援」と伝えることを支援する「意見表明支援」を行わなければなりません。要はゆっくり話を聴いて、意見を話せる環境を作りなさいということです。年齢が幼ければ幼いほど、立場が弱ければ弱いほど、子どもの意見は蔑ろにされがちです。私も十分に注意をしなければなりません。
「窓ぎわのトットちゃん」にこんな話が載っています。トットちゃんが小学校を追い出され、新しい学校に転校した時、校長先生に「さあ、なんでも先生に話してごらん、話したいこと全部」と言われます。電車、ツバメの巣、犬のロッキー etc.、四時間かけて全部話した後、校長先生は「これで君はこの学校の生徒だよ」と言います。私はここで涙腺が崩壊しますが、トットちゃんは生まれて初めて本当に好きな人に逢ったような気がします。なぜなら、『生まれてから今日までこんな長い時間自分の話を聞いてくれた人はいなかったんだもの。そして、その長い時間のあいだ、一度だってあくびをしたり、退屈そうにしないで、トットちゃんが話してるのと同じように、身を乗り出して、一生懸命、聞いてくれたんだもの 』。
こんな素敵な人になりたいですね。